コラーゲンと聞くと、女性の方にとってはシワの予防や改善のための栄養素と思いこんでいる人が多いのではないでしょうか。
化粧品や、美容のためのサプリメントに配合されている例が多く、大人の女性のための成分のように思われがちです。しかし近年、子供の成長にもコラーゲンは必須の成分ではないかと考えられています。
子供の身長を伸ばすためには、カルシウムよりもコラーゲンを摂った方がいいとの意見もあります。果たしてこれは本当なのでしょうか?検証してみました。
コラーゲンとは?どんな成分?
我々の体を構成している主成分は、ご存知の通りタンパク質です。そのタンパク質には実はたくさんの種類がありますが、体を構成するタンパク質の内3割はコラーゲンなのです。
コラーゲンは、体を構成する上で最重要とも言えます。
生物の体の最小単位は細胞です。生物は、初めは細胞単体での単細胞生物として発生しましたが、やがてたくさんの細胞がくっつきあって多細胞生物として進化しました。この際、細胞間をくっつける細胞接着成分が必要となります。
植物と動物で細胞接着成分は違う?
植物の体の細胞接着成分はセルロースです。セルロースは非常に硬く強靭な成分ですので、植物の体は硬く強靭なものとなりました。しかし一方で、あまりに硬すぎて植物は自由に動くことが難しい体になってしまいました。
一方で、動物の体に使われた細胞接着成分がコラーゲンです。コラーゲンは強靭さと弾力性を併せ持つため、動物は強く自由に活動することができるようになったのです。つまり、我々の体はコラーゲン無くしては成り立たないというわけです。
我々の体は全てコラーゲンを介してつながっています。細胞どうしをくっつけているものコラーゲンですし、関節をつなげて動かしている腱や筋も主成分はコラーゲンです。体を包み込む皮膚も、コラーゲンがその弾力を生み出しているのです。
コラーゲンとカルシウムの関係性
コラーゲンがお肌の美容に良いと言われる所以は、動物の皮膚の構造にあります。目に見える皮膚の表面は表皮ですが、その下に皮膚の弾力を保つ真皮という部分があります。ここではコラーゲンがパンタグラフ状の格子構造を作っています。
この真皮のコラーゲンの格子の中に、繊維芽細胞やヒアルロン酸など肌のハリやツヤを司る成分が格納されているのです。従って、コラーゲンが不足してしまうと、有効成分が保持できなくなり、肌はハリやツヤを失ってしまうのです。
カルシウムは非常に硬い物質でもありますが、一方で非常に脆い物質でもあります。この脆さを補って強靭な骨を支えているのがコラーゲンなのです。
骨も、皮膚同様にコラーゲンによる格子構造を持っています。その格子状の中にカルシウムやリンなどの硬いミネラル成分を格納することで、硬い上に、簡単には折れたりしないしなやかさを併せ持つ骨を作っているのです。
コラーゲンはアミノ酸から摂取するのが効果的
タンパク質の原料となっているのはアミノ酸です。アミノ酸の配列によって、タンパク質の種類が色々と変わってきます。コラーゲンもタンパク質ですから、アミノ酸を原料としていますが、その配列が少し独特なのです。
コラーゲンのアミノ酸は、グリシン―アミノ酸A―アミノ酸B―グリシンという配列になっています。グリシンもアミノ酸の一種ですが、このグリシンが必ず3つ目ごとに配列されるのがコラーゲンの特徴です。
コラーゲンを効果的に体内に取り入れるためには、原料であるアミノ酸の状態から摂取するのが効果的だという考え方もあります。ならば、単純に考えればコラーゲンに必須のグリシンを摂取すれば良いと思われがちです。
それがプロリンです。プロリンもアミノ酸の一種ですが、コラーゲンの成分としてはグリシンに次いで多く、コラーゲンの細胞接着的役割やその強靭さの根幹を成しているアミノ酸であることがわかってきました。
プロリンを摂取すると、コラーゲンの合成が活発になったり、壊れたコラーゲンが修復されることも発見されました。今後は、コラーゲン効果を狙ったプロリン配合のアミノ酸サプリなどが増えてくるかもしれません。
コラーゲンは骨を形成する上で欠かせない
このように、コラーゲンとは皮膚や美容のためだけでなく、我々の体を形成する上で無くてはならないものだということがわかってきました。それは成長期の子供たちの体作りにも同様のことが言えます。
特に、身長を決定づける骨を形成する上では、カルシウムサプリをいくら飲んでも、コラーゲンの材料となるアミノ酸や体内でのコラーゲン合成が不足すると丈夫で大きな骨は作られず、子供の身長は伸びないということになります。
2万人に1人という割合で発症する骨形成不全症という病気があります。これは骨が変形したり折れやすくなったりする病気ですが、最近の研究でこの病気の原因は、体内でのコラーゲン合成が正しく行われていないことだとわかりました。
この様に、骨の形成に最も重要なのはコラーゲンであり、骨を成長させて身長を伸ばしたい子どもたちにとって、もっとも重視すべき成分はコラーゲンであるということが、近年の研究で確実になってきたと言えるのです。
骨(骨端線)を伸ばせば身長が伸びる
子供の身長が伸びる際には、骨の長さが伸びていくという現象が起こります。体を支えるのは骨であることから、骨(特に足の骨)が十分な長さを持っていないと、高身長は望めないということになるのです。
骨が伸びると言うと、全体的に引っ張られるように大きくなっていくという印象を受けますが、そうではありません。骨はそれぞれの先端部分に新しい骨が積み重なるように加えられていって、徐々に全体を伸ばしていくのです。
子供の骨をレントゲンで見ると、骨の先端部である頭骨と、骨本体の間に黒い線のようなものが確認できます。線のようにみえることから、これを骨端線と呼びますが、実際には成長軟骨という今まさに成長しようとしている骨の組織なのです。
高い所から飛び降りたり、捻挫をしたり、少年野球などで過度な力をかけたりすると、骨端線が損傷してしまうことがあります。すると、悪い場合には骨の成長が止まったり、変形して成長してしまったりという事が起こります。
この様に、骨を伸ばす文字通りの最前線が骨端線であり、その正体である成長軟骨を上手に成長させることが骨を伸ばすコツなのです。ちなみに、成長軟骨の主成分はコラーゲンです。骨の成長にもコラーゲンが必須なのです。
コラーゲンは子供の成長にどうなの?
コラーゲンは、当初は大人の女性の美容成分として注目されてきました。加齢によって発生するシワやたるみなどは、皮膚の中のコラーゲンが不足して、真皮の弾力が失われたことで発生しているとわかってきたからです。
これは、加齢によって体内でのコラーゲンの合成能力が低下してくることによって起こる現象です。従って、体の外からなんとかコラーゲンを補おうということで、化粧品やサプリメントによって摂取することが考えられました。
お分かりのように、上記で言うコラーゲンの必要性は加齢が進んだ大人に対してのものです。では、果たしてまだ若く、コラーゲン合成能力が衰えていない子供たちにもコラーゲンは効果があるのでしょうか?
コラーゲンを食べても効果はない?
十数年前、美容のためにコラーゲン摂取を推奨していた業界に衝撃が走る研究結果が発表されました。それは、コラーゲンをいくら摂取しても体内には吸収されず、コラーゲンを食べる意味は全く無く、効果も無いという研究です。
コラーゲンはグリシンを中心としたアミノ酸が結合してできたタンパク質です。グリシンなどのアミノ酸の鎖が、さらに3重のらせん構造をつくり、それが長く連なることで出来上がる非常に大きな高分子構造を持っています。
1つのコラーゲンが持つ分子量は30万個にも及ぶため、コラーゲン自体は水に溶けず、通常のタンパク質分解酵素でも分解されないという頑丈な構造を持っています。従って、そのままでは体内に吸収されにくいというのです。
「低分子コラーゲン」なら効果あり?
コラーゲンはアミノ酸が多数連なった高分子体であり、そのままではコラーゲン食品をいくら食べても体内に吸収されないというお話をしました。ならば、その高分子体を分解して「低分子」にしたら吸収されるのではないでしょうか。
そう考えられて開発されたのが「低分子コラーゲン」です。「コラーゲンペプチド」などと呼ばれることもあります。高分子であるコラーゲンを特殊な酵素などで分解して、人間の体に吸収されやすくしたものです。
現在市販されているコラーゲンサプリメントなどに含まれているコラーゲンはほとんどがこの「低分子コラーゲン」だと言っていいでしょう。その分子量は数万から数千で、比較的吸収されやすいものとなっているのです。
「コラーゲン鍋」なら効果的?
「低分子コラーゲン」の出現以前に、人類はコラーゲンを効果的に利用してきました。それが「ゼラチン」です。ゼラチンは、水に溶け、低温下では固まるとしてゼリーなどの材料に使われますが、正体はコラーゲンなのです。
動物の皮や腱などを水に入れて高温で加熱してコラーゲンを抽出します。すると、コラーゲンは分子量数10万くらいにまで分解され、水に溶けるゼラチンとなります。これならば、体内にも吸収されやすいものとなります。
このコラーゲン鍋はゼラチンを摂取するという意味では効果があると言えるでしょう。しかし、その大半は鍋の煮汁の中に残ってしまい、非常にもったいない食べ方であると言えます。摂取できたとしても微々たるものでしょう。
食品から摂取するなら「煮こごり」がおすすめ
日本には昔から魚などを煮込んだ汁を冷やし固めてゼリー状にする「煮こごり」という料理が存在しました。これも、熱で溶け出したゼラチンを活用した料理です。コラーゲンを撮るならば、こちらの方が無駄なく摂れると言えます。
しかし、どの摂取の仕方も子供の成長に対して有効とは言い切れません。さらに、コラーゲンが吸収される際にはアミノ酸に分解されるという説もあり、吸収されたコラーゲンが骨など成長部位に上手く届くかどうかも確認できません。
子供の成長にコラーゲンが必須であることはわかりました。しかし、従来のコラーゲン摂取の方法では有効性が発揮できない可能性もあります。次項からは、子供の成長に対してのコラーゲンの摂取方法の詳細を考察していきます。
コラーゲンの副作用や危険性は?
良いことばかりが注目されているコラーゲンですが、子供に与えるものであることを考えると、副作用や危険性があるものは避けて通りたいというのが親心です。
果たして、コラーゲンは安全なものなのでしょうか?検証していきます。
コラーゲンの摂取量の目安
私達の体は、古いものが毎日分解され、新しい材料を取り入れて細胞などが再構成されていきます。これを新陳代謝と呼び、これが活発に行われていることが健康で若々しい体を保つのに必要だと言われているのです。
タンパク質も同様で、一日に200から300gのタンパク質が分解されているとされています。そのため、毎日の食事でタンパク質を摂ることが必須とされていて、相応のタンパク質を摂取することが健康の秘訣だと言う人もいます。
しかし、タンパク質の中でもコラーゲンは分解し難い構造をもつ高分子体です。従って、なかなか分解されず代謝が遅いことが知られています。
そのため、一日に必要なコラーゲンの摂取量はそれほど多くなく、1日5gというのが通説となっています。しかし、コラーゲンそのものは吸収しづらいため、ゼラチンやペプチドなどでの摂取が想定さてれいるものと思われます。
ただし、コラーゲン合成のために必要なアミノ酸は他のタンパク質などから摂取できるため、コラーゲンそのものが必須では無いとも言われています。その代わり、コラーゲン合成に必須の補酵素を摂ることの方が重要視されているのです。
その補酵素とは、ビタミンCです。材料となるアミノ酸とビタミンCがあればコラーゲン合成が活発になることが分かっています。ちなみに、ビタミンCの必要摂取量は100mgであり、これはピーマン2個分に相当します。
コラーゲンの有効性は不十分
これまで見てきたように、コラーゲンは我々人間の体に不可欠な成分であり、子供の成長に関しても必須の要素であることは確実です。そのことは、多くの研究から明らかであり、様々な実験から実証されています。
しかし、それらはあくまでも試験管などの中で行われた基礎研究であり、動物実験などから得られたデータが主な論拠となっています。
無加工のコラーゲンは人体に吸収され難く、吸収されたとしてもアミノ酸に分解され、果たして再合成されているのかどうかは体内というブラックボックスのため追跡は不可能です。その有効性に対する信頼できるデータは今のところありません。
その一方で、コラーゲンペプチドなどは新しい考え方であり、コラーゲンの重要成分であるプロリンの研究も始まったばかりです。今後、アミノ酸プロリンの摂取などによる体内コラーゲン量の変化に関しての研究も行われるでしょう。
日本では国立健康栄養研究所、アメリカでは米食品医薬品局(FDA)、さらには世界保健機構(WHO)などが、コラーゲンの有効性に関する研究を続けています。臨床や疫学の信頼できるデータが現れるまでもうすぐでしょう。
ニキビや吹き出物が出やすくなる
コラーゲンに関する臨床的な試験結果はまだ少ないですが、コラーゲンサプリなどでコラーゲンをたくさん摂取すると、ニキビや吹き出物が出やすくなったという声が頻発し、経験上この副作用を認める研究者は多く存在します。
これは、コラーゲンが皮膚などに増えると、表皮から分泌される皮脂も増加するためだと考えられています。特に、豚由来の天然コラーゲンの場合はさらに皮脂の分泌が多くなり、ニキビや吹き出物の温床になると言われています。
それに加えて、コラーゲンを摂取してアミノ酸の代謝が活発になると、その補酵素としてビタミンB群が使われます。ビタミンB群は、皮膚の健康を保つのに必須のビタミンですので、不足すると吹き出物などの原因となります。
アレルギー反応が出る
アレルギー反応とは、自分以外の生物のタンパク質が体内に侵入してきた際に、異物だと認識した免疫系が過剰に反応して過度な攻撃を加え、それが自らの身体にも及んで炎症を起こしてしまうことです。
つまり、自分以外の生物に対してはどんなものでもアレルギー反応を起こす可能性があり、あらゆる食べ物に対してアレルギー症状を起こす可能性があるのです。特に、動物由来のコラーゲンなどはアレルギー反応が強く出やすいでしょう。
牛肉など牛に対してアレルギーがある人は、牛由来の天然コラーゲンは摂取してはいけません。豚も、鶏も、魚もアレルギー反応を起こす人がいるので、天然成分由来のコラーゲンの場合は、その原料を良く確認することが必要です。
コラーゲンばかり食べていると逆に栄養が偏る?
後述しますが、コラーゲンを食品から摂ろうとすると動物性の食材が多くなります。従って、動物性のタンパク質や動物性の脂質も同時に摂取することになります。これらの過剰摂取は肥満や動脈硬化の原因となることがあります。
さらに、高分子のコラーゲンを摂取するとアミノ酸に分解しなければ体内に摂取できません。そのため、コラーゲンを多く摂るとアミノ酸を分解するための補酵素としてビタミンB群が多く消費され、不足することがあります。
この様に、コラーゲンばかり摂取しても栄養が偏ることが分かっています。食事はバランスよく摂ることを心がけ、タンパク質だけでなく、特にビタミンCやビタミンB群を意識的に摂取するような食事をおすすめします。
コラーゲンが多く含まれる食品5選
天然の食品でコラーゲンが多く含まれる食品の上位5選をお教えしましょう。5位は鱧(ハモ)、4位は鶏軟骨、3位は牛すじ、2位はうなぎ蒲焼き、そして1位はフカヒレです。特にフカヒレは50gで一日の必要量が摂取可能です。
ですが、どれも毎日何十gも食べることは現実的ではありませんし、ハモやうなぎの蒲焼、ましてやフカヒレなんて毎日食べていては家計が破綻します。鶏軟骨や牛すじは料理が面倒な上にそんなに何gも食べられませんよね。
つまり、天然食材でコラーゲンを直接摂取するのは非効率的です。ですから、おすすめはゼラチンか、サプリメントです。ゼラチンならば300ccくらいのゼリーで必要量が採れます。しかし、吸収などの効率で考えるとサプリに軍配があがるでしょう。
子供にコラーゲン配合のサプリどう?
子供の成長にもコラーゲンが必要だということが分かってきました。しかも、食材で摂取することが難しいということも分かって来ました。それならば、やはりサプリメントで効率的に摂取することがおすすめとなります。
体内でのコラーゲン合成が活発な成長期の子供だからこそ、コラーゲンを作り出すための材料は補ってあげなければなりません。
従って、体内でのコラーゲン合成を促すような成分を含んだサプリメントが子供の成長に有効だと言えます。
コラーゲンではなくアミノ酸配合の子供用サプリから栄養補給
天然食材由来のコラーゲンだと、アレルギーやニキビなどの副作用が心配されます。特に成長途上の子供に与える場合、特定の食材を継続的に与え過ぎてしまうとそれが引き金となってその食品へのアレルギーが発症する可能性があります。
従って、おすすめなのはコラーゲンの材料となるアミノ酸を精製して配合した子供用サプリです。体内でのコラーゲン合成がまだまだ盛んな成長段階の子供の場合、その合成を促すような材料が含まれていることが重要です。
おすすめは、アミノ酸のプロリンとビタミンCを含んだサプリメントです。プロリンはコラーゲンに多く含まれるアミノ酸で、摂取によりコラーゲンの合成が促進されることが分かっています。ビタミンCはその際に必要な補酵素だからです。
まとめ
コラーゲンは人体に必須のタンパク質で、体内のタンパク質の中の30%を占めています。その強靭でしなやかな性質から、細胞を接着させたり、皮膚の弾力を保ったり、骨の強度を司るなど、様々な役割を担っている必須の成分です。
特に、成長期の子供にとっては骨が成長して身長を伸ばすためにはコラーゲンが無くてはなりません。骨の成長点である骨端線は軟骨でできており、主成分はコラーゲンです。さらに、骨全体もコラーゲンとカルシウムによってできているのです。
さらに、天然食材由来のコラーゲン食品などでは、ニキビや吹き出物ができやすくなったり、アレルギーを発症する危険性があるなどの副作用が考えられます。そのため、コラーゲンの原料であるアミノ酸の形で摂取するのがおすすめです。
子供の成長のためにサプリメントを与えるなら、コラーゲンの材料であり摂取すると合成が促されるプロリンというアミノ酸と、コラーゲン合成に必須の補酵素であるビタミンCを含んだものがおすすめだと言えます。