通常、野球やサッカー、バスケなどスポーツをしている子供には怪我や故障をするリスクがあります。さらに、成長期の子供となると特有の障害が発生する可能性があります。
それが「スポーツ障害」です。成長期にスポーツ障害が発生すると骨は変形し、身長が伸びなくなってしまうかもしれません。
早期発見して負担を減らすことが大切ですので、今回はスポーツ障害の原因や予防法などについて解説していきます。
スポーツ障害とは?
スポーツ障害とは文字通り、スポーツをすることによって障害と外傷が発生することをいいます。別名「使いすぎ症候群」とも呼ばれます。
「スポーツ障害」と「スポーツ外傷」の2種類に分かれて呼ぶこともあれば、まとめて「スポーツ障害」と呼ぶことがあります。ここではまとめてスポーツ障害として扱っていきます。
スポーツ障害は体のどこかに過度な負担がかかって起こる障害、もしくは骨折や捻挫などの外傷があります。
スポーツ障害は速やかな対処が大切です。「野球をしていてボールの投げすぎで関節に痛みが出てきた」ということが起きても放置をしていると関節や骨が変形することがあります。
スポーツ障害は成人以外にも、成長期の子供にもよく見かけられます。そのため、成長期のお子さんを持つご家庭はより注意しましょう。
スポーツ障害の種類(症状)とは?
スポーツ障害の数は少なそうに思えますが、実は数多く存在しています。内科的なスポーツ障害や整形外科的なスポーツ障害、眼科的なスポーツ障害、婦人科的なスポーツ障害などがあります。
今回はその中から、特に大切な内科的なスポーツ障害と整形外科的なスポーツ障害をいくつか紹介していきます。
内科的なスポーツ障害には急性の障害と慢性の障害の2種類があります。急性は突然発症するので予防が大切です。慢性は自覚症状がないため、周りの人が気づいてあげないといけません。
整形外科的なスポーツ障害は「100人に5~10人」と高い頻度で見られるため、それぞれを解説していこうと思います。
(参照:小児科部会「知っていてほしい子どものスポーツ医学的知識」)
主な内科的なスポーツ障害(急性障害)
主な急性障害は以下になります。
- 心停止
- 熱中症
- 脇腹痛
- 運動誘発性気管支喘息
もちろん急性障害は上記以外にもたくさんあります。夏によく注意を促される熱中症もスポーツ障害の一つとして考えられています。
運動誘発性気管支喘息は運動をすることによって発作を起こし、喘息になります。脇腹痛は走っているときに臓器がゆれて痛くなります。
運動中最悪の場合は心停止、突然死を迎えるほど危険です。熱中症も悪化すると命を落とす可能性があります。
危険な急性障害ですが、すべてが予防できないわけではありません。熱中症だとこまめな水分補給と休憩をくり返せば大丈夫ですし、喘息も無理な運動を避けるとリスクは低減できます。
主な内科的なスポーツ障害(慢性障害)
主な慢性障害は以下になります。
- 貧血
- 慢性疲労
- オーバートレーニング
- 生理不順
慢性障害は自覚することが難しいため周りの人が気づいてあげないといけません。気づかないまま放っておくと体を壊してしまいます。
特にオーバートレーニングをくり返すと関節が炎症し変形してしまいます。そうなると身長の伸びも悪くなりますし、何よりもスポーツを諦めないといけなくなります。
運動盛りのときにスポーツができなくなるというのは大変なストレスです。ましてや大好きなスポーツだと余計に落ち込むでしょう。
主な整形外科的なスポーツ障害
主な整形外科的なスポーツ障害は以下になります。
- 肩の障害:野球肩、水泳肩
- 肘の障害:野球肘
- 腰の障害:椎体終板障害、分離症
- 膝の障害:オスグット、ランナー膝、ジャンパー膝
- 足の障害:踵骨骨端症、外脛骨障害
整形外科的なスポーツ障害はスポーツの種類によって少し違ってきます。特にこの中でも注意して欲しいのがオスグットです。
オスグットとは小学生~高校生までの男子に多くみられる、膝の軟骨炎です。ジャンプや屈伸などによって膝に大きな衝撃を与え続けると炎症を起こしてなります。
外見はあまり痛くなさそうに見えるオスグットは、かなり痛みを伴います。そのため、周りから痛いフリをしているだけだろうと勘違いされることがよくあります。親御さんだけでもしっかりと理解してあげましょう。
スポーツ障害の原因とは?
成長期の子供にスポーツ障害が起こる理由は骨が出来上がっていないからです。成長期は骨が成長してから筋肉が作られ、身長が伸びていきます。
成長期の骨の両端には”骨端線”と呼ばれる軟骨の集合体があり、その部分が伸びます。骨端線はとても弱いつくりになっているため、強く引っ張られたり、圧迫されることで傷つき、炎症を起こします。
傷つき炎症を起こすことで、変形をしたり障害が生まれたりするのです。そのため、できるかぎり成長期が終わるまでは無茶な運動は避けたほうがいいでしょう。
スポーツ外傷は外からの強い力で骨折や捻挫が起きます。例えばキャッチボールをしていて取り損ねたなどが原因になります。
(参照:スポーツ外傷・障害について)
スポーツ障害の予防はできる?
スポーツ障害を予防するためには4つのポイントが大切になってきます。その4つのポイントを意識して守ることでスポーツ障害になるリスクは大幅に低減できます。
- 準備運動
- 整理運動
- 適度な運動
- 体にあった練習
1.準備運動
スポーツによる怪我などを防ぐためには始めに準備運動をすることが大切です。準備運動をする前の関節や筋肉は固まっており、急な運動をすると危険です。
準備運動をすることで体温と代謝を上げ、関節や筋肉を柔らかくします。コツは15分ほど時間をかけてストレッチやジョギングなどでゆっくりと行なうことです。
2.整理運動
準備運動とは反対で、運動によって温まった体を冷やします。終わってからジョギングやウォーキングなどして体をゆっくりと止めましょう。
そうすることで疲労を回復する効果があるので、次の日に疲労を持ち込まなくなります。急激に体をストップさせると体調を崩してしまいますので注意してください。
適度な練習
スポーツ障害の原因として多いのがオーバートレーニングです。素振りなど一定の動作を繰り返し行なうことで関節や筋肉に継続的に負担がかかります。
繰り返す練習を過度に行うことで肘や膝などに障害が発生します。そのため、野球なら1日素振りは100回まで、週に最低でも2日以上の休みを作るなど限度をつくりましょう。
年齢が上がっていくごとに練習量を少しずつ増やしていくといいでしょう。まだお子さんが小さく、体が出来上がっていないのであれば無理はしないようにしましょう。
体にあった練習量
子供の成長スピードには個人差が大きくあります。しかし、部活の顧問やスポーツチームの指導者は体の大きさに関係なく、練習を指導することがあります。
体にあった筋トレを行なわなければオーバートレーニングとなることがあるので危険です。また筋肉が増えたときでないと、筋トレは意味がありません。
体が出来ていないときは瞬発力や体の動かし方、フォームのチェックなどを教えてもらうようにしましょう。
まとめ
以上、スポーツ障害について解説をしました。スポーツ障害は体のどこかに負担がかかって炎症を起こします。
成長期のときに炎症を起こすと痛みが出るだけでなく、骨の変形や身長が伸びなくなるなどの成長障害のリスクもあります。
子供は試合に出たいために痛みを我慢しているということがよくあります。そのため、気づきにくいかもしれません。
しかし、気づかないと悪化していきます。足を痛そうにしている、手が上がらないなど少しでも異変があれば聞いてみましょう。子供は嫌がるかもしれませんが、病院に連れて行ってみてもらいましょう。