食品添加物の一つに、難消化性デキストリンという成分があります。これは食物繊維の一種で、食物繊維不足の日本人に補ってもらうために作られたものです。
トウモロコシのでんぷんから作られたもので、様々な食品で使われていますが、これは子供が摂取しても安全なものなのでしょうか。名前だけを見ていると、何かあまり体に良くない添加物のように思いますが、気になりますよね。
難消化性デキストリンとは何か、どんなものに使われているのかをまとめていますので、この成分について理解しておきましょう。
難消化性デキストリンって何?
難消化性デキストリンは、不足しがちな食物繊維を補うために作られたものです。化学物質などは使っておらず、トウモロコシから作られたもので安心なものです。
「難消化性」とある通り、消化しにくいデキストリンなのですが、どんなものなのでしょう。安全性には問題ないのでしょうか。
主に食品添加物として使用されるのですが、食品に混ぜても味や見た目を変えることはありません。ですから加工性に優れているのです。
また、難消化性デキストリンの水溶液は長期間保存しても沈殿したり濁ったりしません。耐酸性にも優れているので、レトルト食品用に処理されても分解されることはないのです。さらに、ミネラルの吸収を邪魔しないのも特徴です。
難消化性デキストリンがどのような食品に使用されているのかを詳しく見ていきましょう。
難消化性デキストリンは特定保健食品(トクホ)の食品にも使用
難消化性デキストリンは食物繊維の一種で、1988年に日本で発見され、命名されました。食物繊維は以前、栄養面ではあまり価値がないものと考えられていました。
しかし、いろんな効能が分かるにつれ、役割が重視されるようになってきたのです。それが、難消化性デキストリンの開発へとつながります。
消化・吸収されない食物繊維は、昔は栄養学的に価値のないものと考えられていたが、近年、さまざまな生理機能を持つことが明らかになってきた。現在では「第六の栄養素」としてその重要性が認識され、日本人の食事摂取基準においても成人について目標量が設定されており、不足しがちな栄養素としての認識が高まっている。
食物繊維は第6の栄養素とも言われるほど重要なものです。1日の摂取目標量があり、成人なら男性が19g以上、女性は17g以上となっています。
食物繊維が豊富な食品を意識して摂っても、目標量に達するのは難しいため、食物繊維を配合したサプリメントや食品が販売されています。サプリメントや食品に、難消化性デキストリンも配合されているのです。
難消化性デキストリンは、特定保健食品(トクホ)の利用にも認められている成分です。トクホの有効成分として実績があるため、規格基準型のトクホの成分として認められています。
特定保健食品(トクホ)とは?
ここで、特定保健食品(トクホ)について解説しておきましょう。トクホとは、摂取しても安全で、体に何らかの良い効果が期待できるといった科学的根拠を示し、国の審査を受け、消費者庁の許可を得た食品です。
トクホとして認可された食品にはトクホマークがもらえ、特定の保健機能を表示することができます。例えば、「おなかの調が良くなる」「骨の健康に役立つ」「コレステロール値を正常に保つことを助ける」というような文言が使えるのです。
また、関与成分が医学的、栄養学的に疾病リスク低減効果が確立されているならば、疾病リスク低減表示として認められています。その成分は、葉酸とカルシウムです。
カルシウム
この食品はカルシウムを豊富に含みます。日頃の運動と適切な量のカルシウムを含む健康的な食生活は、若い女性が健全な骨の健康を維持し、歳をとってからの骨粗鬆症になるリスクを低減するかもしれません。
葉酸
この食品は葉酸を豊富に含みます。適切な量の葉酸を含む健康的な食事は、女性にとって、二分脊椎などの神経管閉鎖障害を持つ子どもが生まれるリスクを低減するかもしれません。
トクホには条件付き特定保健用食品という表示もあります。トクホの審査で有効性が科学的根拠の段階には満たないけれど、一定の有効性があるものは条件付き特定保健用食品として許可されます。
トクホマークに条件付きと記載されてありますし、「根拠ははっきりと示されていないのですが、こんなことに効果がある可能性がある」といった表示が許可されています。
難消化性デキストリンは甘味料の代用が可能
難消化性デキストリンは食物繊維として利用されることが多いのですが、わずかな甘みがあることから甘味料の代用としても利用されます。
難消化性デキストリンは低カロリーであることから、健康志向が高まっている現代ではますます利用されることでしょう。
この甘味料の代わりに難消化性デキストリンを使えば、甘味の強さを感じるピークが早くなったり、甘味がまろやかになりとてもおいしくなることがわかっています。
また、脂肪と似た口あたりでもあるため、アイスクリームやカレールーなどの脂肪に代わるものとしても利用されています。
さらに、コラーゲンペプチドといった少しクセのある風味のものに難消化性デキストリンを使うことで、マスキング効果を発揮します。
難消化性デキストリンは子供の成長にどう?
難消化性デキストリンは、トクホなどにも使用される食物繊維の一種であり、体に害があるようなものではありません。多くの食品に利用されており、口当たりを良くしたり、味をおいしく変えたりするもので、安心して口にできるでしょう。
難消化性デキストリンには、食後血糖の上昇抑制作用、整腸作用、食後血中中性脂肪の上昇抑制作用、内臓脂肪の低減作用、ミネラルの吸収促進作用が期待できますが、これを子供が摂取することで、体の成長に良い効果があるのでしょうか。
難消化性デキストリンの効果についての解説と、子供の成長にどう関わってくるのかを考えてみましょう。
糖の吸収スピードの遅延作用
難消化性デキストリンには、食後血糖の上昇を抑制する効果があります。食事から摂取した炭水化物は体内でブドウ糖に分解され、小腸で吸収されます。小腸で糖は速やかに吸収されるので、食後に血糖値が急上昇してしまうのです。
血糖値が食後に急上昇する状態が続くと、生活習慣病(糖尿病など)の発症の原因になります。小腸に難消化性デキストリンがあれば糖の吸収速度が緩やかになり、血糖値の上昇がゆっくりになることがわかっています。
実際に、健康な成人を対象に難消化性デキストリン5gを含むご飯と、難消化性デキストリンを含まないご飯を食べた場合とを比べてみると、難消化性デキストリンを含むお茶を一緒に摂った方が食後の血糖値の上昇が抑制されていました。
整腸作用
難消化性デキストリンは食物繊維の一種ですから、摂取することによっておなかの調子を整える整腸作用があります。食物繊維には便秘解消に効果があると言われていますが、水溶性の難消化性デキストリンも便秘を改善して腸内環境を良い状態にします。
難消化性デキストリン5gを含む飲料を10日間摂取したところ、便の量と排便回数が増え、便の状態が良くなり、排便後のスッキリ感が得られたという結果が出ています。
便秘だけでなく下痢にも良い効果があるとされています。難消化性デキストリンが腸内で善玉菌(ビフィズス菌など)を増やし、腸内菌叢を改善します。そのため下痢についても便の状態を正常に戻してくれるのです。
脂肪の吸収スピードの遅延作用
難消化性デキストリンの3つ目の効果・効能ですが、食後の脂肪の吸収スピードを穏やかにします。脂肪分を摂取すると食後の血中の中性脂肪が上昇しますが、難消化性デキストリンを一緒に摂ると、食後の中性脂肪の上昇が抑えられることがわかっています。
健康な成人にハンバーガーとフライドポテトといった脂肪を含む食事を、難消化性デキストリン5gを含んだ飲み物と一緒に摂ってもらったところ、食後の中性脂肪の上昇が緩やかになっていたのです。
中性脂肪というと悪者のように感じますが、すべてが悪いものではありません。脂肪は私たちの体を動かすために必要なエネルギー源です。しかし、脂肪を摂り過ぎてしまうとエネルギーとして使いきれずに余ってしまい、それが体に蓄えられてしまうのです。
難消化性デキストリンは、脂肪の多い食事を摂る機会が多い人におすすめと言えるでしょう。
内臓脂肪の低減作用
内臓脂肪とは内臓の周囲についた脂肪のことで、お腹周りに肉がついてきます。内臓脂肪が過剰についてしまうと、内臓脂肪の脂肪細胞から血圧や血糖を上昇させたり、動脈硬化を促進させる物質がたくさん分泌されてしまいます。
BMIが23以上の成人に対して、難消化性デキストリンを10g含む飲み物を1日3回、3か月間食事の時に一緒に摂取してもらったところ、内臓脂肪が低下するという結果が出ました。
脂肪には内臓脂肪と皮下脂肪がありますが、内臓脂肪は内臓の周囲につくもの、皮下脂肪は皮膚のすぐ下についている脂肪のことです。
内臓脂肪は溜まりやすいですが、生活習慣を改善すればすぐに減らせます。皮下脂肪は必要ないものではないのですが、使う機会もないので減らすのが大変だと言われています。
内臓脂肪を溜めてしまうと、生活習慣病の原因になりやすいので、できれば溜めない方が良いものです。そのために難消化性デキストリンを摂取して、低減させるようにしましょう。
ミネラルの吸収促進作用
ミネラルは私たちの健康を維持するのに必要な栄養成分です。食物繊維はミネラルの吸収を阻害するものと言われていますが、難消化性デキストリンは腸内細菌に利用されやすいため、大腸でミネラルの吸収を促進することがわかっています。
女子学生に難消化性デキストリンを4週間、食事と一緒に摂取させたところ、摂取前よりも赤血球ヘモグロビン、ヘマトクリット値が上昇しました。
男子学生には難消化性デキストリンを2週間摂取させてカルシウムの吸収はどうなのかを実験してみたところ、摂取前と比べるとカルシウムの吸収が促進されていることがわかりました。
しかし最近はミネラル不足の人が多く、意識して摂らなければなりません。せっかく摂ったミネラルも上手く吸収されなければ意味がないので、難消化性デキストリンを摂ってしっかり吸収を促進させるようにしましょう。
難消化性デキストリンの摂取量の目安
難消化性デキストリンは体にいろんな良い効果があるもので、積極的に摂りたいものです。どの成分でもそうですが、体に良い効果を期待するのであれば、ある程度の量が必要になります。
毎日摂っていると言っても、量が少なかったら良い効果は見られませんし、多すぎても何らかの問題が起こるかもしれません。
ここでは、難消化性デキストリンの摂取量はどれくらいを目安にすれば良いのかを解説していきます。目安の摂取量を知り、それを目標にして摂取するようにしましょう。
日本の摂取目安量
難消化性デキストリンは、多くの健康効果があるものとされていますが、際限なく摂取すれば良いものなのでしょうか。体に良いものだと言われていますが、良い効果を発揮させるためには、どれくらいの量を摂取すれば良いのかを確認してください。
日本での難消化性デキストリンの摂取目安量は、トクホの表示パターンによって違いがあります。トクホの表示では、3つのパターンに分かれています。
まず、「お腹の調子を整える」のであれば、1日に3gから8g、「糖の吸収を穏やかにする」なら1日に4gから6g、「食後の中性脂肪の上昇を穏やかにする」なら1食あたり5gが摂取目安量となります。
難消化性デキストリンは薬ではありませんから、飲んですぐに効果は現れません。だいたい10日くらい継続すると効果が現れ始めます。10日程度続けてみて、体調に変化がないかチェックしましょう。
もちろん、効果の現れ方には個人差がありますので必ず10日前後で変化があるとは限りません。
アメリカの場合
難消化性デキストリンの効果、効能は日本だけでなくアメリカでも認められています。日本では摂取量の目安が目的によって設定されていますが、アメリカではどうなのでしょうか。
アメリカの食品医薬品局(FDA)では、難消化性デキストリンは1990年に一般に安全と認められる食品(GRAS)に認定されました。
そこでは、「1日の摂取量の上限を決めなくても良いくらい安全な食品である」とされ、アメリカでは摂取量の上限を設けていません。
アメリカの食品医薬品局では「広範囲に最低25年」を目安としており、難消化性デキストリンはちょうどその条件に当てはまるため、安全なものであると認められているのです。
世界中で問題なく使用されているものですから、使用にあたっては特に心配することはないでしょう。
難消化性デキストリンの副作用や危険性は?
難消化性デキストリンは安全なものであると言われていますが、継続して摂取するにあたり、副作用や何か危険性はあるのでしょうか。
難消化性デキストリンを15g、4週間程度継続して摂取しても、臨床上で問題となる症状は現れていません。また、約4か月にわたり1日3回毎食前に10gを摂取しても、血圧などに異常は見られなかったという結果が出ています。
妊婦や授乳婦、子供の難消化性デキストリンをサプリメントなど濃縮物として摂取する場合の安全性に関しては、今のところ信頼できる十分な情報が見当たらないとあります。
臨床試験などは、健康な成人を対象にしており、妊婦や子供の臨床試験は行っていないので十分な情報がないと考えられます。
難消化性デキストリンの副作用や危険性はほぼないと考えて良いでしょう。安全性についても、一般成人に対しては特に問題ないと言えます。
副作用と健康被害について
難消化性デキストリンは、とても安全なものであると考えられていますが、サプリメントなどで摂る場合、副作用や健康被害がやはり心配です。
成人で、難消化性デキストリンの摂取目安量前後を4週間程度継続して摂取しても、特に健康被害を訴えることはありませんでした。また、目安量よりも少し多い量を16週間にわたって摂取した場合も、特に異常は認められていません。
難消化性デキストリンは、日本でもアメリカでも安全なものだと定められています。特にアメリカでは摂取目安量の上限を決めなくても良いくらい問題がないと言われているものですから、副作用や健康被害については気にすることはないでしょう。
ただ、サプリメントで摂る場合、難消化性デキストリン以外に配合されているものが何らかの副作用を起こす可能性があります。サプリメントなどを買う時は、含まれている成分のチェックをしっかり行いましょう。
子供が摂取した場合の安全性情報なし
難消化性デキストリンは血糖値や中性脂肪の上昇を抑えたり、お腹の調子を整えたりする効果があり、安全な成分として広く世界でも使われています。
健康な成人に難消化性デキストリンを継続して摂取してもらうと、血糖値や中性脂肪の上昇が抑えられていたり、便秘が解消されたりと良い効果がたくさん出ています。
難消化性デキストリンを通常の食品として摂取する場合は安全と言っても良いでしょう。しかし難消化性デキストリンを含む食品はたくさん存在しており、それらを摂ることで気づかずに過剰摂取している可能性はあります。
過剰に摂取すると下痢を起こすことがありますので、注意しなければなりません。特に子供には必ず摂らせたいものとは言い難いので、慎重にならなければいけないでしょう。
難消化性デキストリンを配合した代表的な食品
難消化性デキストリンは、清涼飲料水や健康食品(加工食品)にたくさん含まれています。難消化性デキストリンを配合した飲料水や食品をいくつかご紹介しますので、積極的に摂りたい人、子供には避けさせたい方は確認してみましょう。
難消化性デキストリンを配合した飲料水、食品を簡単に紹介しますと、まず飲み物だと「午後の紅茶ストレートプラス」「十六茶ダブル」「スーパーファイアブレッドアンドコーヒー」「コカ・コーラプラス」などがあります。
飲み物はいずれも食事から摂取した脂肪の吸収を穏やかにする、糖の吸収を穏やかにする効果が期待されるものです。もちろん、お腹の調子を整える効果も期待できるので、どなたでも摂取することができます。
お茶は食事に合う味になっており、食事と一緒に摂っても違和感はありません。
コーヒー飲料のスーパーファイアブレッドアンドコーヒーは、パンに合うブラックコーヒーとして売り出されており、日本人の食生活が米からパンに移行していることが考えられているのです。
食品の場合
食品では、「SOY JOY」「蒟蒻畑ララクラッシュ マスカット」が挙げられます。SOY JOYは小麦粉は使わず大豆を粉にしたものを使い、ドライフルーツなどを練り込んで焼き上げた栄養食品です。小麦アレルギーがある人でも安心して食べられます。
ただし、大豆やフルーツ、ナッツにアレルギーがある人は控えておきましょう。小麦アレルギーで食べるものを制限されている人にはとても喜ばれています。
難消化性デキストリンにより、お腹の調子を整えたり脂肪や糖の吸収を穏やかにする効果が期待されていますので、ダイエット中の人でも安心です。
蒟蒻畑ララクラッシュ マスカットは細かく砕いた蒟蒻畑(コンニャクゼリー)を果汁のゼリーで包んだデザートです。
蒟蒻ゼリーは、子供や高齢者の方が喉に詰まらせたりする危険がありましたが、これはあらかじめ砕いてあるのでどなたでも食べやすくなっています。
難消化性デキストリンが含まれており、特定保健用食品の表示許可を得ています。「お腹の調子を整える」効果が期待されますので、便秘や軟便の人におすすめです。
まとめ
難消化性デキストリンは、トウモロコシのでんぷんから作られたもので、食物繊維の一種です。食物繊維が不足気味の日本人に補って欲しいと作られました。
難消化性デキストリンは様々な飲料や食品に配合されていて、トクホにも使用が許可されているものです。5つの効果・効能があり、糖や脂肪の吸収スピードを穏やかにしたり、お腹の調子を整えたりするので、ダイエット効果も期待できます。
カロリーゼロのダイエット食品などの甘味料にも使用され、これを使うことでカロリーゼロ食品の味を劇的においしく変えました。
安全ではあるが摂りすぎには注意
日本国内では摂取目安量が決められていますが、アメリカでは上限を決めなくても良いと言われるほど安全なものです。副作用や健康被害の報告はありませんが、摂り過ぎるとお腹がゆるくなることがあるので注意しましょう。
子供が摂取しても大丈夫なのかということですが、子供が摂取した場合の安全性に関しては、信頼できる十分な情報がないことから、絶対に大丈夫とは言えない状態です。
しかし、普段食べる食品などに配合されている程度の量であれば、摂取しても問題はありません。過剰に摂取すると下痢をする可能性があるので、その点だけ注意してください。