DHA(ドコサヘキサエン酸)は、必須脂肪酸という栄養素です。このDHAは体内でほとんど作ることができず、食物から取り入れなくてはいけません。
脂肪酸と聞くと何となくイメージ的に良くない印象を受ける方もいるかもしれませんが、脂質を構成する大切なものです。
必須とついているくらい人間には必要不可欠な栄養素であり、人間の脳や目の網膜をはじめ、心臓や胎盤、また母乳や精子などにも多く含まれていることが分かっています。
子供の認知機能の発達にDHAがいいと言われるようになってから、DHAがかなり注目されるようになってきました。
ただ、子供が食べられる魚の量は限られているため、効率よくDHAを取り入れていくということが大切です。
DHAの働きとは?子供に与える影響について
脂肪酸の一つであるDHAは、いったいどんな働きをしているのでしょうか。
さばやさんまといった青魚に多く含まれていることで知られていますが、血液をサラサラにしてくれる健康成分として知っている方も多いでしょう。
DHAは子供にとっても大切な栄養の一つとなっていて、脳の機能を向上させてくれます。
神経細胞を活性化させることができる成分でもあるので、記憶力をアップさせる、学習能力を向上させてくれるといった働きもあるのです。
もちろんDHAのみならず、色々な栄養を取り入れていくということが子供の成長を促すことにつながりますので、子供にいい影響を与えられるようバランスの摂れた食事をすることが大切です。
「脳の発達に良い」という情報は多いが有効性は未確認
DHAといえば、脳の発達の助けになる、また動脈硬化や認知症の予防にも役立つなど多くの有益な情報があります。中にはアレルギーにも効果があると謳っているケースもあるほどです。
このようにDHAは多くの働きがあり、人間の体に役立ってくれる可能性もあるのですが、実は小児のADHD(注意欠陥多動障害)についてはDHAの摂取は効果がないということが分かっています。
小児のADHDは、血液中のDHAのレベルの低さとは関係していると言われています、しかしながら、DHAを一日に345mg摂取しても症状が改善することはなかったという研究のデータが残っていますので、実際にDHAが脳の発達に確実な効果を発揮してくれると認められているわけではありません。
だからといってDHAが子供の成長に全く関係がないかというと、そうではありません。DHAを含め、色々な栄養素をバランスよく取り入れていくということが、子供の発達を促すことにつながります。
脳の発達を促してくれるのは、DHAだけではありません。DHAだけにこだわらず、バランスの良い食事を心がけ、子供が成長していくうえで必要な栄養を摂ることができるよう工夫をしていくことが大切です。
「アトピー・アレルギー等に良い」という情報は多いが有効性は未確認
DHAは、アトピーやアレルギーなどの症状を緩和したり改善するのにも役立つと言われています。
調べてみると、多くのサイトでDHAはアトピーやアレルギーにいいのでたくさん摂取しようという情報が多く、確かに研究などでもDHAを含んでいる魚を食べることでアトピー性皮膚炎の緩和がみられたというものもあります。
このように見ると、DHAはアトピーやアレルギーに効果が期待できるようにも思えます。
しかしながら、遺伝的にアトピーになりやすい小児を対象として行われたオーストラリアの研究では、DHAを取り入れた小児とそうではない小児では6ヶ月間の間では違いがみられなかったというものがあります。
また、お腹の中にいるうちにDHAを母親が摂取すると、ある程度の月齢では風邪や席、発熱や嘔吐、湿疹などの症状が出ても、DHAを積極的に取り入れていなかった母親に比べて症状の持続期間は短かったものの、発症のリスクには大差がなかったとしています。
つまり、DHAが本当にアトピーなどの症状の緩和や改善を促してくれると認められてはいないのです。もちろん、DHAを全く摂取しなくていいかというわけではありません。
DHAは体内で作ることができない栄養なので、食物から取り入れるしかないからです。
DHAを多く含んだ食品
多価不飽和脂肪酸の一つのDHAは、かなり認知度も高くなってきている栄養の一つではないでしょうか。
様々な効果があることで知られていますが、血液をサラサラにしてくれたり記憶力を高めてくれるなどの健康面に関しての効果が期待されています。
体内では合成できない必須脂肪酸なので、毎日食べる食物からDHAを補っていくことが大切です。多くの方がご存知のDHA、いったいどんな食物に含まれているのでしょうか。
「まぐろ」
マグロと一口にいっても、メバチマグロやキハダマグロ、またビンチョウマグロにクロマグロ、そしてミナミマグロにコシナガマグロの6種類あります。
一般的に食卓にのぼりやすいのがメバチマグロ、キハダマグロ、ビンチョウマグロではないでしょうか。
調べてみたところ、DHAの含有量を示す際にはクロマグロが記載されています。クロマグロは魚の中でも最もDHAの量が多く含まれている魚です。
クロマグロをお寿司一貫でたとえると、正味20gほどになりますが、20gの中に640mgのDHAが含まれています。
100gあたりに換算すると3200mg、100gは刺身7切ほどです。100gの量を食べるのは比較的簡単ですし、マグロはDHAがとても豊富なので、魚を食べるのであればクロマグロがお勧めと言えるでしょう。
「かつお」
DHAはお肉よりもお魚、特に青魚に含まれています。青魚が苦手という方もいらっしゃいますが、青魚のあの脂にDHAは豊富に含まれています。
たとえば、春のカツオはあっさりとしている赤身ですが、秋のかつおは戻りガツオと呼ばれ、とても脂がのっています。
カツオは春にも秋にも旬を迎える魚ですが、DHAという栄養の観点から見ると、秋のカツオがお勧めです。
中でもカマの目のあたりのトロトロとした部分にDHAは豊富に含まれています。目玉の後ろを食べる機会は中々少ないかもしれませんが、食べる機会があったらぜひ目玉の後ろのトロトロの部分も食べましょう。
秋にとれるカツオ100gあたり970mgのDHAが含まれています。
「はまち」
脂がのっていて大人も子供も好きな方が多いはまちも青魚の一種ですが、さばやいわし、味などと比べるとクセがなく食べやすいという特徴があります。
ハマチは大きくなるとブリとなるように、名称が変わる出世魚です。通年、ハマチはスーパーで売られていたりと食べる機会が多い魚の一つであり、青魚が苦手という方でもハマチなら食べやすい傾向にありますのでおススメです。
ハマチ100gに対して含まれているDHAは1700mg、100gは刺身にすると7切ほどです。
独特な脂がのっているので7切も食べられないという方もいるかもしれませんが、ハマチの脂はこのようにDHAが豊富に含まれている証拠なので、食べる機会を増やしていくことをお勧めします。
「ぶり」
食卓に上る機会も多いブリは、大人も子供も食べやすい魚の一つではないでしょうか。ブリ100gあたり1700mgのDHAが含まれていますが、実は焼いたブリ100gは1900mgのDHAが含まれています。
ブリ1切れも大きさによって異なるところはありますが、1切れ120gほどありますので、120gとして考えると2280mgものDHAを摂ることができるようになります
ブリのお刺身が好きな方は7切ほどで100gになりますし、お刺身が飽きてしまった時や魚を生で食べることが苦手だということは、ブリを焼いたり煮たりしながら食べてもいいでしょう。
売られているブリは多くが養殖されているものなので、品質は安定している傾向にあります。
「いわし」
青魚の代表的な存在であり、たくさんのDHAが含まれているのがいわしです。イワシの生100gには870mg、焼いたイワシ100gには980mg、生のイワシを干したもの100gには1100mgものDHAが含まれています。
また、同じイワシでも加工の仕方によって100gという量は変わらないのに、DHAの量は大きく変わってきます。
生のイワシ870mgに対して、干しいわしは1100mgと230mgの差が生じてくるのです。イワシが苦手でなければ生よりも焼いたものを、焼いたものよりも干したものを食べるのがお勧めです。
マイワシを選ぶ際は、太っていて丸みがあるものを選びましょう。触れるのであれば、ぬるっとした感触の物がベストです。
細くてかたいマイワシは脂が少ないので、DHAの量も上記に記載したほどに含有されていない可能性が否定できません。
旬である6月から冬の始まりにむけてのいわしは脂ものっています。手軽に食べられる煮干しにもDHAが豊富に含まれていますし、うま味が強いので、そのままでもお料理にも使える優れものです。
DHAの摂取量はどれくらい?
DHAの摂取量はどれくらいなのか、また必要量はどれくらいなのか厚生労働省の「食事摂取基準」と「平成28年「国民健康・栄養調査」の結果」を参考に情報を載せていきたいと思います。
※厚生労働省の摂取情報はDHAはEPAやα-リノレン酸といった他のn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)と区別がつきにくいためか、「n-3系脂肪酸」として基準が設定されています。
そのため、ここではDHAだけではなく、DHAを含めた「n-3系脂肪酸」で摂取情報を載せていきます。
子供のDHAの平均摂取量は?
年齢 | n-3系脂肪酸(g) |
---|---|
1~6歳 | 1.23 |
7~14歳 | 1.92 |
15~19歳 | 2.24 |
子供のDHAの食事摂取基準は?
年齢 | n-3系脂肪酸(g) |
---|---|
6~7歳 | 1.4 |
8~9歳 | 1.7 |
10~11歳 | 1.7 |
12~14歳 | 2.1 |
15~17歳 | 2.3 |
18~29歳 | 2.0 |
DHA過剰摂取による副作用の危険性
必須脂肪酸であるDHAは、食物から取り入れる以外には摂取することができません。体内で合成することができないため、積極的に食物から取り入れていく必要があります。
DHAをはじめ、健康にいいと言われている栄養だったり、積極的に取り入れたい栄養成分だったとしても、過剰摂取にならないよう注意してください。
健康に一役買ってくれるDHAでも、過剰摂取をすることによってどういった副作用が現れてしまうのでしょうか。
子供がDHAを過剰摂取したときの危険性
DHAに限らず、色々な栄養を取り入れることで子供は成長していきます。
成長を助ける上で積極的に取り入れたい栄養の一つがDHAなのですが、過剰に摂取してしまうと、凝血能が低下してしまって出血することが多くなるという危険性があります。
そして、薬などをすでに服用している場合、その薬の成分とDHAの相性が悪いために、凝血能が低下してしまうといった副作用も考えられます。
DHAは脳を活性化させてくれる栄養なので、子供も積極的にとりいれたいところでしょう。普通の食事をしていれば、DHAが過剰摂取になるということはまずありません。
一日に3g以上のDHAを摂取しなければ、影響はないと考えられます。
マグロに最も多く含まれているDHA、100グラム当たり(刺身すると7切ほどです)、含まれているDHAの量は3700mgです。
つまり、3gの量のDHAをマグロの刺身から摂取するのであれば毎日7切れ程度のマグロを食べればいいということになります。
大人だって800gものマグロを食べるというのは難しいため、子供も一般的な食事をしていればDHAの量が過剰になるということはありませんから、あまり心配はいらないでしょう。
不足しているかも…という思いからサプリメントを利用されている方もいらっしゃいますが、食事から補えているDHAも当然あります。
DHAの副作用は?
DHAに関する大きな副作用というものは報告されていません。あ
適切に摂取すれば安全であることは国立健康・栄養研究所でも発表されていますが、一日に大量に摂取することで危険が及ぶ可能性があることも同時に示唆しています。(参照:国立健康・栄養研究所「DHA (ドコサヘキサエン酸)」)
人体に影響を及ぼすであろう量というのは一日に3g以上のDHAを摂取するもので、仮に3g以上のDHAを摂取すると、鼻血など出血しやすくなることがあります。
これはDHAの摂取量が多くなってしまったことで凝血能が低下してしまったためだと考えられるでしょう。
また、DHAは血圧を下げてしまうこともあります。医師から血圧降下剤を処方され毎日飲まれている方は、DHAと薬の相乗効果によって副作用が現れやすくなってしまいます。
特に血圧が下がりすぎてしまうことがあるので、十分な注意が必要です。
お肉よりも魚派という方が3食で魚を食べていたとしても、過剰な量の摂取になるということは考えにくい傾向にあります。
ですので、あまり心配することはありませんが、DHAをサプリメントなどで補う場合、薬を飲まれている方は注意が必要なこともありますので、そのような時はかかりつけ医に相談をしましょう。
DHAは子供の脳の成長のために必要?
成長期にあたる子供には、DHAをはじめとして様々な栄養が必要です。
青魚から摂取できるDHAはドコサヘキサエン酸という必須脂肪酸で、体内で合成することができないため、食物から補っていかなくてはいけません。
脳の発達段階においても必要なDHAですから、成長期にはしっかりと摂取できるようにしていきたいところでしょう。
成長段階にある子供は、一日に1000mg摂取するのが目安です。マグロの刺身100gあたり(7切程度)には3700mgのDHAが含まれていますので、それだけで一日に必要なDHAを補うことができます。
記憶力や学習能力の向上にも一役買ってくれると言われているDHAですが、その効果はまだ研究段階であるとされます。
確実に記憶力がアップしたり学習能力があがると言えるわけではありません。しかし、DHAはその他にも免疫力をアップしたり皮膚のトラブルにも効果があるとされています。
青魚に多く含まれているDHAなので、お刺身など生で食べる機会は子供にもあるでしょう。焼いたもの、煮たものよりもお刺身の方が好きな子供も多いですので、どんな形であれ青魚を食べるということはとても素晴らしいことです。
しかしながら、時期によっては食中毒などを起こしてしまう可能性もありますので、生で食べる際は衛生面には十分な注意をしてください。
魚が苦手&アレルギーの子供はサプリから摂取推奨!
以前は肉よりも魚が食卓に上ることが多かった日本ですが、近年は食の欧米化が進み、魚の出番が減り、肉が食卓に上ることも増えてきています。
よって、肉は好きだけど魚が苦手、特に癖のある青魚が嫌いという子供も少なくありません。
またアレルギーを持っている子供も年々増加傾向にあり、青魚にアレルギーがあると食べたくても食べられない子もいます。
DHAは残念ながら体内では合成されることがない栄養素なので、体外から、つまり食物から補うほか摂取する方法はありません。
しかしながら、食べられない子供にとってはDHAを効率よく摂取する唯一の方法が難しくなってしまうため、このような時はサプリメントを活用すると良いでしょう。
サプリメントは青魚独特な臭みもなく子供にも飲みやすくなっています。その他の栄養素も配合されていることもありますので、食べ物の好き嫌いがある子供にピッタリなのです。
ただ、薬を飲んでいる時、特に医師から処方されている薬によってはサプリメントに含まれているDHAをはじめ、その他の成分で副作用を引き起こしてしまう可能性も否定できません。
そのような時はまず医師に相談をし、サプリメントを飲んでも大丈夫だとお墨付きをもらってから活用することをお勧めします。
まとめ
人間が生きていくうえで、また成長を促すうえで栄養というのはどれも大切な存在です。
一つが飛びぬけていてもだめですし、一つが足りなくてもダメなのです。そういった意味も含め色々な栄養をしっかりと補っていくために、バランスよく食事をすると言うのが基本中の基本となります。
また、DHAをはじめとして必須アミノ酸と言われている栄養などは体内で作ることが出来ません。ですので、食物から補っていかないと不足してしまう栄養でもあるのです。
DHAは健康に必要不可欠ではあるものの、過剰摂取によって副作用を引き起こしてしまうケースも確認されています。
単体では素晴らしい成分でも薬などと相まって、副作用を起こしてしまうことも考えられます。
良かれという思いからDHAの過剰摂取は知らない間に起こってしまうものですから、バランスの良い食事ができているのであればサプリメントなどを併用する必要はありません。
DHAをはじめとする栄養は子供の成長に欠かすことはできません。
ただ、これまでも述べてきたようにDHAが確固たる効果があると認められていないところもあるため、DHAに偏ることなく子供の成長を長宇野であれば、漫勉なく食べることが重要なのです。