「長時間立っていることができない」「しゃがむことができない」。最近、これらのことができない子供が増えてきていることをご存知でしょうか。
このような基本動作をできないことを”ロコモティブシンドローム”というのです。この病気は元々高齢者に多いのですが、子供も増加してきているのです。
今回はそのロコモティブシンドロームの原因や改善方法、予防法などを解説していきます。
ロコモティブシンドロームとは?
ロコモティブシンドロームとは筋肉や骨、関節などの運動器に障害が発生し、移動機能が低下した状態のことをいいます。
「歩く」「立つ」「しゃがむ」といった基本の動作ができなくなり、日常生活に支障をきたしてしまいます。
運動器の障害の度合いによっては将来要介護になってしまうかもしれません。元々は加齢に伴って起きるため、高齢者に多く見られる運動器の障害でした。
加齢に伴って起きることがほとんどだったため、子供とは縁のない話かのようにも思えますが、しかし近年では、この障害をもった子供が増えてきているのです。
その数はおよそ40%にまで及ぶといわれており、その子供達は何らかの運動機能不全をもっているということになります。
子供がロコモティブシンドロームになるとどうなる?
筋肉や関節などの運動器に起きる障害「ロコモティブシンドローム」に子供がなると学校生活に大きく影響を及ぼしてします。
子供がロコモティブシンドロームになると以下のことがうまくできなくなります。
- 朝礼など長時間立てない
- 足がつりやすくなる
- 和式トイレを使えない
- 雑巾がけができない
- 転んだりしたときに体を手で支えること顔を打ってしまう。
- 逆立ちができない
- キャッチボールなどがうまくできない
移動機能が低下することによって上記のような基本動作ができなくなってしまいます。基本動作ができないと簡単に言っていますが、これは将来にも大きく影響を及ぼすかもしれないことです。
転んだりしたときに手で支えることができないと打つだけならマシですが、大怪我に繋がることも考えられます。
また、子供時代にキャッチボールがうまく出来ないなど悩みから運動に対して消極的になっていくこともありえます。
消極的になっていった結果、物事に対しての意欲や対人へのコミュニケーション能力などの発達にも影響を与えるかもしれません。
子供のときにロコモティブシンドロームになると大人になってからもう一度なる確率が高く、介護や支援が必要になる時期が他の人よりも早くなります。
このように一見基本動作ができなくとも問題はなさそうに見えますが、将来的なことを考えると大きな問題です。できるだけ早く改善してあげましょう。
(参照:山形徳洲会病院「子供ロコモ 予防・改善プロジェクト」)
ロコモティブシンドロームの原因とは?
ロコモティブシンドロームの原因の多くは加齢に伴う身体能力の低下ですが、子供のときになる原因は3つ考えられます。(参照:ロコモチャレンジ!推進協議会「どうしてロコモになるの?」)
- 痩せすぎまたは肥満
- 運動不足
- 運動のやりすぎ、怪我
1.痩せすぎまたは肥満
お子さんの体が痩せすぎていると、体を支えている骨や筋肉が弱っていきます。その結果、体を支えることはできなくなり、運動器に障害を起こし、基本動作ができなくなります。
肥満になると骨や筋肉は弱くなりませんが、体重で腰や膝の関節に大きな負担がかかってしまいます。負担がかかると関節にある軟骨成分は徐々にすり減っていき、痛みなどもでる可能性があります。
軟骨成分は修復することはできますが、一度すり減ると修復に時間がかかる部分です。そのため、できるかぎり減らさないようにしましょう。
2.運動不足
家で本を読んだり、ゲームをしたりして外でまったく運動をしない子供もいると思います。そのまま運動をする習慣がない生活が続くと、ゆっくりと運動器の能力が衰えていきます。
最近、公園の減少や安全のためといって遊具の撤去などから遊びたくても遊べないということもあると思います。そのため、家で本を読んだり、ゲームをすることはあまり否定しません。
また、本を読むことが好きなお子さんもいるでしょう。本を読んで知識をつけることはむしろ素晴らしいといえます。
しかし、いくら運動をするのが難しい状況だったとしても放っておくと、運動不足になって運動器を低下させてしまいます。
3.運動のやりすぎ、怪我
運動のやりすぎもしくは怪我をして、肥満と同様に関節に負担か怪我をすると基本動作ができなくなるかもしれません。
体を酷使したり、正しいフォームでスポーツをしないと関節への負担は大きくなります。運動前のストレッチも大切です。
学校外のスポーツチームに入ってるお子さんは正しいフォームを学べると思うので、そこは心配いりませんが、体の酷使か怪我が原因で運動器に障害がでるかもしれせん。
ロコモティブシンドロームかチェックする方法
原因や症状を分かってもらえたところで、次にロコモティブシンドロームかどうかチェックする方法です。
チェック方法はたくさん種類があるので、簡単にすぐできるものをいくつか紹介していきます。(参照: 全国ストップ・ザ・ロコモ協議会 SLOC「子どもロコモについて」)
両手をまっすぐバンザイ
背筋を伸ばしたまま、両手をまっすぐバンザイできるかチェックする方法です。
ポイントは両手をバンザイしたときに両腕が耳につくようにします。そのときに背中が丸くなったり、バンザイがまっすぐ真上に向いていないとダメです。
片足立ち
その場で動かず、片足立ちが5秒以上できるかチェックする方法です。
ポイントは片足立ちをしているときにまっすぐ立てているかです。背中が丸くなったり、膝が曲がっていたりするとダメです。
さらに上級になると片足立ちをしている状態から浮いている足をまっすぐにして浮かし、前後にスイングしてみましょう。
しゃがみこむ
立っている状態からしゃがみこんでみましょう。そのときに後ろに倒れてしまう、かかとが上がってしまう、ふとももとふくらはぎをくっつけられなければダメです。
しゃがみこむさいに、後ろにぶつかって怪我をしないように気をつけないといけません
体前屈
体前屈をしたときに膝が曲がっていないか、床に手がつくかをチェックする方法です。膝が曲がってれば手が床についても意味はありません。
四つ這いバランス
四つ這いになってバランスを確かめる方法です。四つ這いになったら、左右対称の手足を上げて10秒間維持します。
例えば、四つ這いになって左手を上げてまっすぐにしたら右足を上げてまっすぐにします。これをどちらもできるかチェックしてみてください。
ロコモティブシンドロームの予防法
ロコモティブシンドロームの原因は運動か、食事による痩せすぎか肥満です。そのため、運動か食事、あるいは両方とも改善することで予防することができます。
運動で改善!
運動不足が原因であれば、まずは運動習慣をもつように心がけましょう。文部科学省は小学校入学前の3歳~6歳は「毎日、合計60分以上楽しく体を動かすことが望ましい」としています。
ここで注意してほしいのが”合計”なのでぶっ通しで60分動く必要はありません。15分4回でもいいですし、30分2回でも大丈夫です。
小学生、中学生、高校生の18歳未満の頃に運動をして生活習慣病などや生活機能の低下のリスクを低減するという十分な科学的根拠がないため、現時点では基準が作られていません。
ただ、「現在の運動量を少しでも増やす」か「運動習慣をつけるため、週二回以上30分の運動をする」ことを推奨しています。
そのため、まずは現在の運動量を少しでも増やすか、週二回以上運動をする習慣をつけることからはじめてみましょう。
運動が苦手な子供はどうする?
趣味は人それぞれなので、子供の中には本を読むことやゲームをすることが大好きで、運動が苦手な子供もいるでしょう。
その場合は、家でストレッチや筋トレをしましょう。最初は回数、時間が少なくてもいいので、まずは習慣づけていきましょう。それから慣れてきた頃に回数もしくは時間を増やすといいでしょう。
それ以外にも親子でジョギングかウォーキングもおすすめです。親子で運動の改善もできますし、親子でやれば長続きします。ただ、体力やペースはお子さんに合わせるようにしてあげてください。
食事で改善!
ロコモティブシンドロームは痩せすぎも肥満も危険なため「食事バランス」が大切になってきます。
では、何の食事バランスが大切なのかというと「五大栄養素」が大切になってくるのです。五大栄養素とは「たんぱく質」「炭水化物」「脂質」「ビタミン」「ミネラル」のことで健康を維持するためには欠かすことのできない栄養素です。
これら5つのバランスを整えることで適正な体重へと戻すことができます。ただし、肥満の場合だとある程度の運動も必要になってきます。
ただ、毎日これら5つのことを考えて作るのは大変です。その場合は、1週間で考えて作るといいですよ。
「昨日は肉類が多かったから今日は野菜を多めに」「昨日は魚だから今日は肉類」など1日でバランスを調整するのではなく、他の日を使ってバランスを調整すると楽になります。
骨や筋肉などの運動器を強化するためには、特に「たんぱく質」と「カルシウム」が大切です。五大栄養素の中でもこの2つは不足しないようにしましょう。
まとめ
以上、ロコモティブシンドロームについて解説しました。ロコモティブシンドロームは元々高齢者に多く見られる運動器の障害でしたが、現在では子供にまで多く見られるようになりました。
運動器の障害を起こすと、生活の基本動作ができなくなり、将来的に悪影響を及ぼしてしまいます。
また、改善しないままほうっておくと、大怪我や精神面で消極的になるなどの可能性もあります。
原因は「肥満か痩せすぎ」「運動不足」「スポーツのやりすぎか怪我」ととても分かりやすいので、狙って改善しやすいと思います。
まずは、ロコモティブシンドロームかチェックをしてみてください。一つでも当てはまっているなら運動器のどこかに障害が起きているかもしれません。すぐに運動、もしくは食事の改善をはじめましょう。