「子供の肥満」というのは意外と親は見落としてしまいがちで、気づいたときには手遅れになり、痩せることが困難になってしまったという人もいるでしょう。
とはいえ、子供にスクスク育ってほしいという想いから親はたくさんご飯を作り、たくさん食べさせます。親としてもたくさん食べている子供を見るのは嬉しいですよね。
しかし、カロリーなどを気にせずどんどん食べさせていると縦に伸びず、横に伸びていく可能性があります。その結果、肥満になってしまうかもしれません。
なかには「身長を伸ばすにはたくさんのエネルギーが必要だから、まず太る必要がある」と言う方もいますが、これは間違いです。
肥満の子供の見た目は可愛らしいものですが、健康面では百害あって一理なしです。肥満による症状や原因、改善方法について解説します。
肥満の症状
子供の肥満と大人の肥満を比べると軽く見られますが、子供の肥満も大人の肥満と同じように放っておくと、後になって苦労します。
そうならないようにするためにも、肥満を原因とした病気、障害を知って危機感を持っておくことが大切です。
子供が肥満になってしまうと以下の病気、障害を引き起こすかもしれません。
- 身長が伸びなくなる
- 糖尿病
- 高脂血症
- 高血圧
- 睡眠時無呼吸障害
- 骨折や関節障害
身長が伸びなくなる
最初に少し触れていますが肥満になると身長が伸びなくなってしまいます。身長を伸ばすためには成長ホルモンの分泌が大切なんですが、肥満になると分泌量は低下してしまうのです。
また、肥満になると体は早く大人になろうとし、思春期を早く迎えようとします。その結果、思春期は早めに終わり、身長が伸びる時期は短くなってしまいます。
この早めに思春期を迎えるせいで冒頭に書いた「身長を伸ばすにはたくさんのエネルギーが必要だから、まず太る必要がある」という誤解を招いたのです。
太ることによって他の子よりも早く身長が伸びますが、それは最初だけで結果的に追い抜かれることもあります。
身長が伸びなくなる以外の注意
肥満によって身長が伸びなくなる以外にも注意があります。それは、上記の病気によって”動脈硬化”が進行することです。子供の肥満と動脈硬化と聞いても、正直あまりピンとこないかもしれません。
しかし、動脈硬化は子供の頃からゆっくりと進行していく病気です。そのまま放っておくと、大人になって脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気に発展していくこともありえます。
日本小児内分泌学会では子供の肥満について以下のことが述べられています。
肥満は各種の合併症を伴いますが、特に生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病、脂質異常症、高血圧などの原因となり、これらは動脈硬化を促進し将来的に心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクを高めます。そしてこれら生活習慣病は成人のみならず子どもにおいても見られ、子どもの頃から動脈硬化は進行します。また脂肪肝や睡眠時無呼吸をおこすこともあります。肥満がある場合はこのような合併症を伴っていないかの検査が必要となります。また以上のような合併症を伴っていなくとも膝・腰などに悪い影響を与えますし、肥満の状態を長く続けていることはよいことではありません。
身長を伸ばしてあげること、未来の健康のことを考えると、子供が肥満になったらダイエットを始めましょう。
肥満の原因はなに?
子供の肥満の原因は、主に食べる飲むで摂取したエネルギーが、普段の生活での消費エネルギーを上回っていることで起きる単純性肥満によるものです。
神奈川県医師会「子どもの肥満と生活習慣病」によると、その単純性肥満が増加している理由は以下の6つが考えられます。
- 生活環境の変化
- 生活習慣の乱れ
- 運動不足
- 勉強中心の生活
- 遺伝
- 家族の体質
生活環境の変化
過去に比べて現代では食生活が大きく変化してきました。たとえば、食の洋風化やジャンクフードの手軽さなどがあります。
また、コンビニや自動販売機の増加などによって、いつでもどこでも食べる・飲むをすることができる生活になってきました。
その結果、お菓子やジュースなどの食べ過ぎによって、簡単に摂取エネルギーが過剰になっている子供が増えています。
生活習慣の乱れ
親と同じように夜遅くまで起きている子供がドンドン増えてきています。夜型の生活の子供は夜食を食べる習慣がつき、その結果「朝食を食べない」という子供もでてきているのです。
朝食を食べなくなると、その分を補おうと昼食、晩御飯での食べる量が増えます。食べる量が増えてしまうと、摂取カロリーが過剰になってしまい太ってしまうのです。
運動不足
近年では目まぐるしくネットやゲームが発達し、子供が触れる機会が多くなってきました。その結果、室内で遊ぶことが増え、運動不足になっている子供が増えています。
ネットやゲームをしていなくても、最近では公園でボール遊びの禁止や、安全面から遊具の撤去されるなどのことも増えてきています。そういった理由から、子供の運動不足というのは増えてきているのです。
勉強中心の生活
勉強をすることは大切ですが、子供に少しでも良い高校、大学に行かせてあげようと、勉強に熱が入ってしまう親がいます。
もちろん、子供の将来を想ってのことなので強く否定はできません。しかし、心に余裕のない状態で塾などに通うと、子供はストレスが溜まってしまいます。
私の友人は小学校のとき有名進学校に入るために毎日夜中の1時まで、塾で勉強させられていました。
この前偶然にも再会したのですがその子は男の子で、身長が160cmちょっと程度でした。このとき、やっぱり睡眠って大事だなとあらためて思いました。
遺伝
子供の肥満には食べ物の食べすぎによる単純性肥満が多いのですが、なかには遺伝によって肥満になる子供もいます。
遺伝には複数の種類があり、病気の原因の遺伝子による「プラダーウィリー症候群」や「アルストレーム症候群」などがあります。これらは遺伝が原因だと分かっているのですが、なぜ発生するのかはわかっていません。
遺伝と肥満の発生の関連が分かっている「レプチンの遺伝子異常」などもあります。
体質
家族の体質は、子供に関係なさそうですが実は大きく影響しているのです。「家族の食生活」や「移動のほとんどが車」などの生活環境によって肥満になりやすくなります。
家族みんなの体質が肥満であれば、子供も肥満になる確率はとても高くなります。もし、子供のダイエットを始めるのであれば、親も一緒に始めるといいでしょう。
子供の肥満度をチェック
いきなりですが質問です。「今、みなさんのお子さんはどれぐらい太っているか把握できていますか?」
「うちの子、太り気味かしら・・・」と思っていても、意外と太っていなかったり、反対に「うちの子は太ってないでしょー」と思っていたら、太っているなんてこともあります。
そのため、きちんとお子さんの肥満度は把握しておく必要があります。肥満度の計算方法は農林水産省「体のバランスチェック」によると以下になります。
標準体重は性別、年齢別、身長別に設定されているので、お子さんにあった標準体重をチェックしてください。
上記の計算が難しいと思う方は以下の計算方法を試してみましょう。上記よりも簡単に計算できます。
BMI値=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
上記の計算で18.5未満なら痩せ型です。18.5~25.0未満なら普通です。25.0以上だと肥満体型になります。
肥満の予防・改善方法
肥満の予防・改善法を紹介していこうと思います。
肥満の予防方法
予防法についてですが、一番は「早期発見」が大切です。早めに太ってきているのか、わかるのとわからないのでは大きく違います。
早期発見できれば、少し調整してあげるだけで、子供も無理なく標準の体重にすることができるはずです。
問題の「早期発見する方法」ですが、これは日本小児内分泌学会が出している『身長体重標準曲線』を利用しましょう。リンクはこちら⇒『身長体重標準曲線・男子』『身長体重標準曲線・女子』
肥満の改善方法
主な改善方法は以下になります。
- 正しい生活習慣
- 食事の改善
- 運動の改善
それぞれ解説していきます。
正しい生活習慣
生活習慣の乱れからくる肥満の場合は、正しい生活習慣を送るようにしましょう。正しい生活習慣は以下の4つです。
- 早寝・早起き
- 毎日3食きちんと食べる
- テレビ・ゲーム・スマホを使う時間は決める
- 外で遊ぶようにする
上記4つを同時に行うのは大変だと思います。まずは、早寝・早起きを意識して行う。そうすれば、必然と朝食も食べて、3食全部食べるでしょう。
それから、それらが慣れてきたらテレビやゲームの使う時間を決めましょう。時間を決めたら、お子さんも外で遊ぶようになると思います。
どれからでもいいので、一つ一つ丁寧に生活習慣を直してあげましょう。いきなり、今まで11時に寝ていたのが9時に寝るは難しいです。
最初は10時30分、慣れてきたら10時と生活習慣の改善は「少しずつ」が大切です。
食事の改善
食事の改善は以下のようにしましょう。
- よく噛んで食べる
- 一人で食べさせず、みんなでゆっくり食べる
- 栄養バランスのよい食事にする
- 間食の時間に気をつける。
よく噛んで食べるですが「1口を何十回噛んで食べると痩せる」と聞いたことありませんか。これは本当のことで、たくさん噛むと満腹感を出すことができます。
噛む回数ですが具体的な回数を意識するのもいいのですが、普段よりも多くを意識する程度でも十分です。徐々に回数を増やしていきましょう。
家族みんなが早食いだと、子供も置いていかれないように早く食べるようになります。これも噛む回数とつながるのですが、みんなでゆっくりと食べるようにしましょう。
栄養バランスのよい食事にするのは難しいかもしれませんが、食事で一番大切なことです。バランスのよい食事とは、色々な食品を組み合わせて食べることです。
肉やお魚のおかずだけではなく、野菜を使ったおかずもつけましょう。個人的には子供の給食のレシピを参考にしています。食べ物の組み合わせなどを真似しています。
一食で色々な食品をとるのが難しいのであれば、一日単位または数日単位で考えてみましょう。「昨日、野菜が少なかったな」と思ったら、今日は野菜を多めにするなどバランスを考えてみるといいですよ。
間食の時間ですが、朝昼晩のご飯に影響が出ない時間にしましょう。夜食だけは時間ではなく、食べないようにしましょう。
運動の改善
ネットやゲームばかりして、運動不足になっている子供は増えてきています。運動不足になると学校の体育の授業でも動かなくなり、ますます悪化していきます。
ネットやゲームの時間を決めて、運動の楽しさを覚えさせましょう。自転車や車は使わず、できるだけ歩きましょう。
過度なダイエットには要注意!
肥満改善をするうえで、最も気をつけてほしいのが『過度なダイエット』です。痩せるためにも急激に食事量を減らすと「拒食症」になってしまうかもしれません。
拒食症は食べることに恐怖を抱くようになり、食べることができなくなる病気で、最悪の場合は命にも関わってきます。
拒食症にならなくても、栄養不足に陥ってしまうかもしれません。栄養不足は、その不足している栄養によって症状が違うので、とても気づきにくいです。
たとえばビタミンBが不足すると、イライラしやすい、集中力が続かない、寝ても疲れがとれないなどの症状があります。このような症状が出ても、気づけませんよね。
過度なダイエットは栄養不足による症状がでたり、最悪の場合は拒食症になる可能性があるので、絶対にやめておきましょう。急がず、ゆっくりと体重を落としましょう。
まとめ
以上、子供の肥満について解説しました。子供の肥満は「身長が伸びない」だけでなく、糖尿病や動脈硬化の進行など恐ろしい病気になる可能性があります。
太っている子供は見ている分には可愛らしいのですが、将来の健康のことを考えると、絶対に改善しておく必要があります。
ダイエットをするときは、両親どちらかも一緒にダイエットするか、積極的なサポートをしてあげると長続きしますよ。親が何もしていないと、子供は信用しません。スキンシップも兼ねて一緒にするといいでしょう。
痩せて、健康的で身長が伸びやすい体にしてあげましょう。