睡眠とは人が健康で生きていくうえで、一生欠かすことのできないものです。子供の時期はとくに成長するためにも重要です。そんな、大事な子供の睡眠中にやってはいけないことがあります。
それは「おねしょを防止するために夜中に起こす」です。布団におねしょされると洗濯が大変ですし、子供もおねしょしたことに傷つくと思い、夜中に起こす人もいます。
実はおねしょをしても夜中に起こしてはいけないことを知っていましたか。夜中に起こすと睡眠不足になるだけでなく、成長にも悪影響の可能性があります。今回はおねしょの原因や改善方法、なぜ成長に悪影響なのか解説していきます。
おねしょをなぜするの?
おねしょとは睡眠中に気づかないうちにおしっこをしてしまうことをいいます。なぜ、おしっこをしてしまうのかというと、人間は睡眠中もおしっこを作り、膀胱(ぼうこう)におしっこが溜まっていきます。
本来なら、「おしっこを作る量」と「膀胱で溜められる量」のバランスが取れているとおねしょをすることはありません。
作る量と溜められる量のバランスを取れるようになってくるのは、だいたい小学校に入学する「5歳~6歳」です。この頃になってもおねしょをするのは大体10%ほどいます。
ただ、5歳あたりになっても毎日おねしょをするのであれば、身体の発達が遅れているか病気の可能性もあるので、そちらも疑ったほうがいいでしょう。
「おねしょ」と「夜尿症」の違いとは
おねしょのことについて調べていると「夜尿症(やにょうしょう)」という言葉が出てくると思います。
夜尿症とは5歳~6歳を過ぎてもおねしょが治らない状況のことを指すのです。つまり、5歳までは「おねしょ」と呼び、それ以降になると「夜尿症」という呼び方になります。
夜尿症は身体の発達とホルモンの分泌に大きく関係をしているので、年齢を重ねるごとに身体が発達していき、ホルモンの分泌量が増えるので自然と治っていくこともあるので安心してください。
夜尿症(おねしょ)の原因
日本夜尿症学会「夜尿症診療ガイドライン2016」によると、夜尿症の原因は以下の6つが考えられるのです。
- 夜間多尿
- 排尿筋が活発に動いている
- 目が覚めにくい
- 発達の遅れ
- 遺伝
- 別の病気
それぞれについて解説していきます。
夜間多尿
睡眠中は「抗利尿ホルモン(ADH)」が分泌されています。抗利尿ホルモンとは、文字通り利尿を抑える働きがあるのです。
睡眠中に抗利尿ホルモンが分泌されることによって腎臓の水の再吸収が増加し、利尿を抑えることによって、おねしょはしなくなります。
しかし、このホルモンの分泌量が低下していると利尿作用が抑えられなくなり、おねしょをしてしまうのです。
排尿筋が活発に動いている
尿を溜める膀胱は「排尿筋(平滑筋)」と呼ばれる筋肉でできています。「おしっこを我慢する」というのはこの筋肉ではなく、尿道にある「外尿道括約筋」を意識的に働かして我慢をします。
排尿筋は意識的に働かすことができず、自分の意思とは関係なく働くものです。しかし、この排尿筋の活動が抑制できず、睡眠中に縮まる頻度が増加することによっておねしょが起こってしまうのです。
目が覚めにくい
年を取ると夜間に目が覚めてトイレに行く人が多くなりますが、これは「眠りが浅い」ために起こります。
原因は睡眠の必要量が減少したり、睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌量が低下などさまざまです。
その眠りが深いことは身体の成長のうえで大切で正常なことです。ただ、睡眠の深さから尿意を感じても目が覚めないこともあるのです。
その結果、睡眠中の尿量の減少と膀胱(ぼうこう)に溜められる量が増加しないのではないかと考えられています。この原因はまだ解明はされていないので、「かもしれない」ぐらいに思っておくといいでしょう。
発達の遅れ
尿を溜めておく膀胱(ぼうこう)は成長とともに発達していきます。年齢を重ねると夜にトイレに行かなくても平気になります(4歳~5歳ごろ)。
しかし、中には膀胱の機能が未発達で溜められる量が少ないままの子供もいます。
遺伝
両親または、どちらかの親が夜尿症だった場合、子供にも遺伝するといわれています。遺伝はネットで調べてみると「身長や体格は20%~30%しか遺伝しない」と書かれていますがまったくの嘘です。
ABO式の血液型は全て遺伝ですから「遺伝率」は100%。
身長や体重等の体格は遺伝性が高く90~80%ぐらい残りの10~20%が環境の影響。
性格的なものや男と女の違いは遺伝子が50%、友人や社会的な環境の影響が50%。
実際の身長や体格の遺伝率は「約80%」だといわれています。
そのため、親が夜尿症だった場合、子供も夜尿症になることが多いです。実際に夜尿症の半数以上は親も夜尿症のようです。
別の病気
「おねしょの原因が病気だった」という頻度はあまりありませんが、膀胱(ぼうこう)や腎臓に病気があり、おねしょをしてしまうことも考えられます。有名な病気だと糖尿病が挙げられます。
膀胱や腎臓以外にも、てんかん、睡眠時無呼吸症候群などもおねしょの原因となることがあるので注意してください。
夜尿症(おねしょ)をすると身長の伸びなくなる?
まず、おねしょをしても身長の伸びに影響はありません。しかし、おねしょを改善するために夜中に起こしたり、夜中に目が覚めてトイレに行ってしまう子供は身長に悪影響を及ぼす可能性があります。
子供にとって睡眠とは頭をリフレッシュする以外にも、身長を伸ばすために必要な「成長ホルモンの分泌」と「骨を休める」という役割ももっているのです。
これらによって、子供の身長が伸びていきます。しかし、おねしょによって途中で目が覚めてしまうと成長ホルモンの分泌は止まってしまうのです。
尿の量を抑える「抗利尿ホルモン」の分泌を止めてしまうと、余計におねしょが悪化する可能性もあります。
夜尿症(おねしょ)の治し方
おねしょの治し方ですが、まず「焦らない・怒らない・起こさない」の3つが大切です。焦ったり、怒ったりすると子供に余計なプレッシャーがかかり、治らなくなります。
子供も治したいと思っているはずですから、おねしょは長期間かけて治すもの、おねしょをしても怒らない、おねしょをしなかった日は褒めてあげることが大切です。
次に「起こさない」ですが、成長のためにも起こさないことは大切ですが、それ以外にも排尿機構を発達させるためにも起こさないことが大切です。
これらのことをふまえて専門医セミナー2016「夜尿症」を参考に以下の生活習慣を改善してみましょう。
- 早寝・早起き・決まった時間に食事
- 飲む水の量を制限
- 塩分・たんぱく質・牛乳・カフェインの過剰摂取は避ける
- 寝る前にトイレを済ませる
- 睡眠中、身体が冷えないようにする
早寝・早起き・決まった時間に食事
早寝・早起き・決まった時間に食事をすることで生活リズムが整っていきます。なかでも「早く寝ること」が大切で、早く寝ることで抗利尿ホルモンの分泌を促すことができます。
飲む水の量を制限
日中は夏場だと熱中症のことも考えられるので十分に水分を摂取するようにしましょう。それから夕方は制限するようにします。
夕食は寝る前2時間~3時間前までに済ませて、その後は飲食しないようにしましょう。どうしても喉が渇くのであればコップ1杯(200ml)までです。寝る前に飲むのだけはやめておきましょう。
塩分・たんぱく質・牛乳・カフェインの過剰摂取は避ける
塩分やたんぱく質、牛乳に含まれるカルシウム、カフェインは尿の量を増加させる働きがあります。”過剰”摂取はやめましょう。
注意してほしいのが、たんぱく質やカルシウムは成長のためには欠かすことのできない栄養素です。むやみに摂取量を減らすのではなく、摂り過ぎた分だけ減らすようにしましょう。
寝る前にトイレを済ませる
おそらく、みなさんもやっていると思いますが、寝る前にトイレを済ませて寝ましょう。一度、膀胱(ぼうこう)の中に溜まった尿を出しておくことが大切です。
睡眠中身体が冷えないようにする
身体が冷えてしまうと尿を作る腎臓の働きが活発化します。その結果、尿はたくさん作られてしまいます。
さらに冷えてしまうと交感神経が活発化し膀胱(ぼうこう)を収縮させ、尿を溜めることができず、トイレに行きたくなってしまうのです。
そのため、睡眠中も身体が冷えないように夕食後、すぐにお風呂に入り湯船に浸かって、すぐに就寝するといいでしょう。
病院での夜尿症(おねしょ)の治療
夜尿症の定義は「5歳以降で、1ヶ月に1回以上のおねしょが3ヶ月以上続く場合」とされている。多くは6歳までに治るので治療の対象は「6歳から」となっています。
治療の流れとしては以下になります。
- 初回受診(尿検査)
- 生活改善+日誌記録(2週間~1ヶ月)
- 生活改善継続または治療開始
- 治療の効果がなければ、専門医に相談
2番目の生活改善は上記で説明したようなことをやります。それに加えて、おねしょの頻度や量、時間などの記録を日誌につけます。
3番目では生活改善でよい傾向が見られた場合、そのまま継続となります。改善がなければ、治療開始です。
治療は薬物療法(漢方薬や点鼻薬など)か、アラーム療法と呼ばれる睡眠中の排尿に気づかせトイレに行くか、我慢をするかできるようになる治療です。どちらかを選択して治療が始められます。
宿泊行事に向けての夜尿症(おねしょ)対策
学校での宿泊行事は1年生、2年生の低学年でも行う学校は増えてきました。それに伴っておねしょのことを気にして参加することに迷う子供も増えてきています。
親としては宿泊行事にできるかぎり参加してほしいものですよね。そこで対策方法を紹介していきます。
もし、宿泊行事まで時間があるなら、一度病院に行って相談し生活改善から始めてみましょう。宿泊行事まで時間がない場合は、まずできるかぎり生活を改善してみることが大切です。
宿泊行事当日の対策方法
- 夕食時と夕食後はできるだけ水分を摂らないようにする
- 就寝前にトイレを済ませるようにする
- 濡れやシミが目立ちにくい分厚くて濃い色のパジャマを着させる
もし、上記の対策だけで不安であれば担任の先生に事情を説明し、「夜12時ごろにそっとトイレに連れていってもらえないか」、「体調が悪いという理由で先生の部屋に寝させてもらえないか」などの相談をしてみましょう。
まとめ
子供のおねしょは早く治してあげたいものですが、時間をかけて治す必要があります。夜中にトイレに連れて行けば、たしかにおねしょをする可能性が減るかもしれません。
おねしょをすると子供も恥ずかしいでしょうし、プライドを守ってあげたい気持ちもわかりますが、今後の成長とおねしょを改善するためにも「なるべく起こさないようにする」ことが大切です。
「焦らない・怒らない・起こさない」この3つを守って、生活習慣を改善してあげましょう。おねしょをしなかった日は褒めてあげることも忘れないであげてください。