成長期は子どもが肉体的にも精神的にも大きく成長する大切な時期です。親としては子どもにすくすく育ってほしいですが、心配なのが「うちの子はよその子より身長が低いかも」ということではないでしょうか。
今どき外見で人を判断することなどあってはならないことですが、低身長は男性にとっていまだにコンプレックスの大きな原因ですし、女性にしても平均的な身長は欲しいという人が大半です。
親としても子どもにはせめて標準的な身長に育ってほしいと思うのは自然なことですが、その身長が伸びる大切な時期である成長期とはそもそもどんな時期なのでしょうか。
子どもの体にどんな変化が起こり、どうすれば身長が伸びやすいのかを知るために、基本的な知識を学んでおきましょう。
成長期(第二次性徴)ってなに?思春期と違うの?第一次性徴期は?
成長期、思春期、第二次性徴期など呼び方はさまざまですが、基本的には同じです。子どもの体から大人の体に変化するための大切な時期であり、身長や体重が急速に増えて、男の子は男性らしい、女の子は女性らしい体つきに変わっていきます。
第二次性徴というのは、文字通り性の特徴がはっきり表れる第二の時期ということですが、第二があるということは第一があるということです。
第一次性徴とは、男の子であれば陰嚢や陰茎、女の子であれば卵巣や子宮など男女の性器の違いが表れることを言います。
4歳ごろまでには、生まれたばかりの時と比べて身長が2倍近くまで育ちますが、それ以降は成長のスピードがやや緩やかになっていきます。それがまた急激に成長し始めるのが、いわゆる成長期、または思春期や第二次性徴期と呼ばれる時期です。
第二次性徴期には、身長だけでなく性器を始め体全体が大人の体に変化していき、自律神経や運動神経などの神経系や精神的な面でも大人のそれになっていきます。肉体的にも精神的にも大人になった段階が思春期の終了です。
成長期っていつからいつまで?
成長期は小学校高学年ごろから始まるのが一般的ですが、男女差もあれば個人差も大きいため、一概にいつからいつまでと言うことはできません。大人の体つきへの変化の兆しが見えたら成長期が始まったと捉えてよいでしょう。
女の子の方が早く成長期を迎える傾向にあり、平均で10歳ごろ、早ければ8~9歳には変化が表れます。男の子は女の子より1年ほど遅れて成長期が始まることが多く、だいたい11歳ごろが平均です。
2年ぐらいは個人差があるので、男の子でも早い子なら9歳ごろに始まることもあります。スタートの時期が違うので、成長期の終わりも人によってバラバラですが、その期間はおよそ5年という点で共通しています。
たとえば、11歳で成長期が始まった子なら、16歳ごろには大人の体が完成するということです。
成長期の発達について
成長期には男女とも身長がぐんと伸びますが、体の変化はそれだけにとどまりません。
第二次性徴期とも言うぐらいですので、男女ともに性器を始めとして大きく変化し、男の子は大人の男性のようにがっしりとした体つきになり、女の子は胸が膨らみ始め、全体的に丸みを帯びた大人の女性らしい体つきになっていきます。
成長期が続いている間は身長の伸びは止まりませんが、大人の体つきへの変化が表れるころから徐々に伸びが緩やかになっていき、大人の体が完成するころには完全にストップします。
身体的発達(男子)
何歳から身体的発達が見られるかは個人差がありますが、成長期の男子の身体的発達にはだいたい決まった順序があります。まず、大人の体へと大きく発達を遂げるのがペニス、睾丸、精巣などの生殖器です。
ペニスや睾丸が大きくなるにつれ、陰毛の発毛も始まります。最初は産毛のような薄い毛ですが、徐々に硬く縮れた大人の陰毛に近づいていきます。陰毛が生えると他の部分の体毛も濃くなっていき、髭や腋毛なども徐々に見られるようになります。
最初の射精である精通を経験するのが一般的ですが、精通の年齢には個人差があり、陰毛が生える前に起こる場合もあれば18歳ごろと遅い場合もあります。それ以降、異性への性的な関心も大いに高まるのが特徴です。
その後は、喉仏が出てきて声変わりで声が低くなるとともに、全体的に筋肉が付いてきて大人の男性っぽいがっしりした体つきに変化していきます。
身体的発達(女子)
成長期の女の子の身体的変化は、男の子より早く8~9歳ごろから始まる子もいます。性ホルモンの分泌が始まり、赤ちゃんを産める体に発達する準備が始まったということです。
身体的発達としては、胸の膨らみが体の変化としては最初に目に付きます。胸が膨らんでくると、それ以外にも徐々に脂肪が付いて丸みを帯びた体つきに変化していきます。骨盤が大きく発達してお尻が大きくなるのもその特徴の一つです。
くびれができて大人の女性のようなスタイルに近づいてきます。それと前後して、男の子と同じように陰毛が生え始めます。陰毛が産毛から硬い縮れ毛へと変化するころには、腋毛の発毛も見られ、他の部位の毛も濃くなっていきます。
大人の女性の体つきへの変化が初潮を迎えるサインですが、体が大きくなっても来ない場合もありますし、体に変化が表れる前に来ることもあります。
成長期に身長が大きく伸びるメカニズム
成長期は身長が伸びるピークの時期ですが、成長期を通してずっと同じペースで身長が伸び続けるわけではありません。成長期は約5年間続きますが、そのなかでも体の変化と呼応するように、急激に伸びる時期と緩やかに伸びる時期とに分かれます。
成長期の間に、男の子は平均25センチ、女の子は平均22センチも身長が伸びますが、この伸び幅はだいたい決まっているため、成長期の始まる時期によって最終的な身長にも大きな差が出ます。
では、どうすれば最終的な身長が高くなるのか、そのメカニズムから見ていきましょう。
成長に関わる成長ホルモン分泌の仕組み
成長期に身長が大きく伸びるのは、成長ホルモンの分泌が活発になるからです。成長ホルモンとは、脳の中央付近にある脳下垂体という直径1センチほどの器官から分泌されます。
脳下垂体からは種の保存や生命維持に欠かせないいくつかのホルモンが分泌されていますが、成長ホルモンもそのうちの一つで、成長期には身長を伸ばすのに作用し、成人してからは骨や筋肉などを強くするのに作用します。
身長が伸びるとは、簡単に言えば骨が大きくなることですが、骨はそのままの形で大きくなるのではありません。骨の端っこに軟骨組織が形成されて、それが層のように積み重なっていくことで徐々に伸びていくのです。
成長ホルモンには軟骨を形成する働きがあるため、成長ホルモンの分泌が足りないと十分に身長が伸びず、大人の体が完成しても低身長になってしまいます。
また、成長ホルモンは脂肪を分解するのにも必要で、成長ホルモンの分泌が足りないと脂肪が分解できずに肥満になってしまいます。逆に、肥満だと成長ホルモンが分泌されにくいため、肥満の子どもは身長が伸びにくいのです。
成長ホルモンの分泌が最も活発になるのは睡眠時です。子どもの身長を伸ばすには良質な睡眠をたっぷり取ることが欠かせません。
骨端線が伸びる=身長が伸びる
身長が伸びるとは骨が大きくなることであり、具体的には骨の軟骨組織が形成されることで大きくなっていくと前述しました。さらに具体的に言えば、骨の両端、関節付近にある骨端線という部分が伸びることで骨は大きく伸びていきます。
成長期の子どもをレントゲン撮影すると骨と骨の間に黒い線が見えますが、これが骨端線です。骨端線は骨芽細胞という新しい骨を作る働きのある細胞と、破骨細胞という古い骨を分解・吸収する働きのある細胞が働いています。
骨芽細胞が活発に働くのが成長期であり、層を成すように増殖していく軟骨組織を硬い骨に固めていきます。そのため、骨端線に沿うように骨が伸びていくのです。
軟骨組織が硬い骨に完全に変化すると成長期は終わりを告げます。軟骨層がないため骨端線も確認できなくなります。つまり、骨端線が確認できるうちだけが身長が伸びる時期ということです。
成長スパート期こそ骨端線が最も伸びる時期
思春期には成長スパート期と呼ばれる期間がありますが、それは骨端線が最もよく伸びるために、身長が急激に伸びる時期だからです。この時期にはたった1年で10センチほども身長が伸びます。
思春期は約5年続きますが、5年間ずっと10センチずつ身長が伸びていくわけではないことからも、成長スパート期が思春期の限られた時期でしかないことがわかるでしょう。
思春期には性ホルモンの働きによって男女とも大人の体つきに変化していきますが、この性ホルモンには骨端線を伸ばす骨芽細胞の働きを抑える作用があります。
そのため、外見が大人の体へと変化するにつれ、徐々に骨端線が伸びなくなり、身長の伸びが緩やかになっていくのです。大人の体が完成すると骨端線もなくなるので、それ以降は身長が伸びなくなってしまいます。
思春期の到来を遅らせれば身長が伸びる可能性は高い
思春期がいつ到来するかによって、最終的にどのぐらいの身長になるかが決まります。というのも、思春期を迎えるのが早い子どもほど、身長の伸びも早く止まってしまうからです。
女の子の場合では、初潮を迎えた年齢が1歳違うだけで、大人になった時の身長が10センチ以上違うというデータもあります。前項で触れた、思春期に分泌が活発になる性ホルモンに骨を固める作用があることが関係しています。
思春期の身長の伸び幅はだいたい決まっているので、まだ年齢の若い低身長の段階で思春期が始まると、伸びが止まった時の身長もあまり高くなりません。
逆に、中学生などある程度身長が伸びた段階から思春期が始まれば、そこからさらに20センチ以上も身長が伸びて高身長になりやすいわけです。
身長が止まるサイン・証拠はあるの?
思春期が終わるとそれ以上身長は伸びないことを見てきました。身長の伸びが止まるということは、骨の軟骨組織が固まって大人の骨が完成したということです。つまり、思春期の終わりは大人の体ができあがったことを意味します。
骨の両端の関節付近にある骨端線に沿って骨は伸びていくと説明しましたが、骨端線が確認できるのは思春期のうちだけです。
思春期が終わって体が完成した大人には骨端線が見つかりません。ということは、この骨端線の有無が、身長の伸びに余地があるかどうかのサインであることが推測できます。それについて詳しく見ていきましょう。
骨端線が閉じる=身長は伸びない
骨端線が確認できる状態を「骨端線が開いている」と言い、確認できなくなった状態を「骨端線が閉じている」と言いますが、骨端線が閉じると骨が固まったということですので、それ以上身長は伸びません。
子どもの身長が今以上に伸びるかどうかは、骨端線を確認すればわかるということです。骨端線が開いているか閉じているかは、成長期が続いているかどうかが一つの目安になります。
高校生でもまだ成長期なら、今より身長が伸びる可能性があるということです。逆に、成長期が終わって骨端線が閉じてしまったのなら、それがまだ中学に入ったばかりでも、今より身長が大きく伸びることは期待できません。
「大人でも身長を伸ばす方法」などいろいろ宣伝されていますが、姿勢矯正により見た目の身長が高くなることはあっても、骨の成長はもうないということです。
レントゲンで手首の骨端線を確認すればわかる
成長期は骨端線が開いている状態であり、その開いている部分に新しい骨が固まって作られていきます。ということは、レントゲン写真で確認すれば、骨端線が開いているか閉じているかがわかるということです。
骨端線を確認したい場合は、自力では無理なので、小児科や整形外科を受診するしかありません。手首の手根骨をレントゲン撮影すれば簡単に確認できます。
ただし、病院だからといって不用意にレントゲン撮影はしてくれません。
成長期に注意すべきこと
成長期にどれだけ身長が伸びるかで、大人になった時の最終的な身長が決まることがわかりました。骨端線が閉じる、つまり、骨が固まり大人の骨格が完成すると、それ以降は大きく身長が伸びることはあり得ません。
「身長○センチアップ!」など怪しげな広告はいろいろありますが、成長期が終わってから急激に身長が伸びることはあり得ないことを覚えておきましょう。
ということは、子どもの身長を伸ばしたいなら、成長期にいかに伸ばせるかが大切だということになります。そこで、成長期にスムーズに身長を伸ばしていけるように注意すべきことを見ていきましょう。
思春期早発症
思春期は、一般的に男の子で11~12歳ごろ、女の子で9~10歳ごろから始まります。身長の伸びが早くに訪れますが、伸びがストップするのも早いため、低身長になる恐れがあります。思春期早発症の目安を男女別に見ておきましょう。
男の子の場合、9歳未満で陰茎や陰嚢が明らかに発達した場合、10歳未満で陰毛が生えてきた場合、11歳未満で髭や腋毛の発毛や声変わりが起こる場合などです。
女の子は、7歳半未満で胸が膨らむ場合、8歳未満で陰毛や腋毛が生えたり、小陰唇に色素が沈着する場合、もしくは10歳半未満で初潮を迎えた場合などが思春期早発症の可能性があります。
腫瘍など器質的異常が原因なら、その治療が必要です。原因不明の特発性の場合は、低身長を予防するための薬を月1回注射します。
生活習慣の改善が重要!特に食生活の改善が身長に与える影響は大きい
身長が伸びるとは骨端線という軟骨組織が増殖して新しい骨を作っていくことだと、ここまで何度も説明してきました。つまり、成長期にしっかり身長を伸ばすには、骨を作る軟骨の細胞の原料になる栄養素をしっかり摂る必要があるのです。
身長が伸びる栄養素というとカルシウムというイメージが強いですが、より重要なのはたんぱく質です。たんぱく質が骨の軟骨組織の原料になります。カルシウムはその軟骨組織を固めて強い骨を作るために必要です。
カルシウムの摂取のために牛乳ばかり大量に飲んでも身長が伸びるとは限りません。それより、良質なたんぱく質を中心に栄養バランスの取れた食事を心がけることが大切です。
心配な方は不足が多い栄養素配合の子供用サプリがおすすめ
成長期に身長を伸ばすには、たんぱく質を始め、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などの栄養素を十分に摂取する必要があります。
ただ、たんぱく質を多く含む食品は肉、卵やチーズなど脂肪分の多いものばかりなので、あまりたんぱく質ばかり摂取していると肥満になってしまう恐れがあります。
また、たんぱく質ばかり重視すると、カルシウムや亜鉛などの栄養素を十分に取れないことも考えられるでしょう。
すべての栄養素を計算して毎回バランスの取れた食事を用意するのが理想ではありますが、こう考えると現実的になかなか難しいのではないでしょうか。
食事だけでは栄養素の不足が心配という場合は、成長期の子どもに適したサプリメントの利用も検討してみましょう。食べ過ぎを防ぎつつ、不足しがちな栄養素を補給できる点でサプリはおすすめです。
ただし、サプリだけ摂っていれば大丈夫というわけではありません。基本は食事であり、サプリはそれをサポートする役目と考えてください。
まとめ
成長期とは、思春期や第二次性徴期とも呼ばれる子どもが大きく成長を遂げる時期です。成長期の始まる時期には男女差や個人差が大きいため一概に何歳とは言えませんが、男の子で11~12歳、女の子で9~10歳が目安になります。
成長期は、男女とも体つきが大人のそれへと変化していくのが特徴です。男女とも性器が発達し、男の子は髭が生えたり筋肉が付いてきたりして大人の男性らしい体つきになります。
女の子は乳房の発達など丸みを帯びた体つきに変化し、初潮を迎えます。こうした性成熟以外の成長期の特徴が、男女とも急激に身長が伸びることです。
成長期には、骨の軟骨組織が増殖して新しい骨を作っていくことで身長が高くなります。その軟骨組織を骨端線といって、これがあることが成長期のサインです。
成長期が終わると骨端線はなくなり、以降、自然に身長が伸びることはありません。
成長期にしっかり身長を伸ばすには、たんぱく質やカルシウムなど食事から必要な栄養素をしっかり摂取することが大切です。栄養不足にならないようにサプリの助けを借りつつ、食生活の改善を図りましょう。