「もう5cm身長が高ければ…」と身長にコンプレックスを抱く方は多いです。大人になっても身長のことで悩む方なら、お子さんの身長についても気になるでしょう。
自分が低身長だと子どもも身長が低くて当たり前と思ってしまっている方もいるかもしれません。しかし、子どもの場合は成長期に適切なケアをすることで、身長を促進させることが可能なのです。その一つの方法がストレッチです。
子どもは成長期を迎えますが、その際に身長の伸びを邪魔する要素をなくすことで、より身長の伸びを促進させることができます。体の成長に伴ういわゆる成長痛の予防にもなるので、正しいストレッチの方法を学びましょう。
ストレッチで背が伸びる3つの理由
一般的に身長は遺伝で決まると思われていますが、実はそんなことはありません。
遺伝の身長に与える影響は25~30%にしか過ぎず、たとえ両親ともに低身長でも、残りの70%ほどの外的要因を整えてあげれば、子どもの身長は両親以上に伸びる可能性があるのです。
その外的要因を整える一つの方法がストレッチです。ストレッチは一日のパフォーマンスを高めるのに効果がありますが、覚えておいてほしいのが、ストレッチが直接骨を成長させることにはつながらないという点です。
1.身長の伸びを邪魔する筋肉をほぐせるから
身長が伸びるということは、言い換えると骨が成長するということです。ただ、骨が成長するといっても、骨がそのままの形で大きくなるわけではありません。
骨の両端にある骨端線という軟骨組織が成長ホルモンにより増殖することで骨が成長し、結果として身長が伸びるという仕組みになっています。
成長期の子どもが急激に身長が伸びるのは、成長ホルモンがたくさん分泌されるため、骨端線の組織もどんどん増殖するからです。
そこで、ストレッチで骨端線が伸びるのを邪魔する筋肉をほぐしてあげれば、邪魔するものがなくなって骨端線が正常に伸び、その結果、身長もぐんぐん伸びるということになるのです。
2.姿勢の歪みがとれるから
骨端線が伸びるのを邪魔する凝り固まった筋肉をほぐしてあげれば、身長が効率よく伸びていきます。ところが、骨端線が閉鎖して骨の成長がストップした大人でも、ストレッチをすることで身長が伸びたように感じることがあります。
その理由が、ストレッチにより姿勢の歪みが取れることです。
こうした体に歪みのある状態では、本来の身長よりも低くなってしまうことに注意してください。背筋がピンと伸びた時と比べて、猫背の状態だと身長が低くなるのは当然です。
ストレッチで体の歪みを取ると、身長が大人でも伸びる可能性があります。ただし、正確に言うとこれは身長が本来の高さに戻っただけで、ストレッチが骨を成長させるのとは違います。
ストレッチを続けさえすれば、大人でもどんどん身長が伸びるわけではありません。
3.適度な運動刺激が身長促進に効果的
ストレッチで身長が伸びるもう一つの理由が、運動による刺激によって身長の伸びが促進されることです。ストレッチで体を動かすと、骨も刺激されて細胞分裂が促されます。
そのため、成長期の子どもが身長を伸ばすのに、適度な運動が大切と言われるのです。
このように、運動刺激は、骨への刺激と成長ホルモンの分泌促進により、身長を伸ばすのに大切な役目を果たします。
運動刺激が身長を伸ばすのに効果的だということは、ストレッチ以外の運動も取り入れると、より効果が高まるということです。
運動前にストレッチをすることには、ケガの予防などの効能もありますが、こうした理由で筋肉と骨に刺激を与えて身長を伸ばすのにも効果的だからです。
背を伸ばすストレッチはいつが効果的?
ストレッチといえば、運動をする前の整理運動としてのイメージが強いでしょう。確かに運動の前にストレッチをすることは、筋肉を柔軟にしてケガを予防するとともに、運動自体の効果を高めるのにもよいことです。
背を伸ばす観点から見ても、運動の前のストレッチには良いところがあります。ストレッチによって筋肉に緩やかに刺激を与えると、筋肉の可動性が高まって、背が伸びる要因である骨端線の伸びを邪魔しません。
運動の前以外にも、ストレッチで背を伸ばす効果を高めるタイミングは何回かあります。たとえば、入浴後の血行が良くなった状態の時は、ストレッチで骨の周りの筋肉を柔らかくすると、背が伸びやすくなるでしょう。
体を整えるなら朝のストレッチ
運動の前と入浴後以外にも、ストレッチで背を伸ばす効果を高めるタイミングがいくつかあります。朝起きてすぐ行うストレッチもそうです。
朝一番のストレッチは、その日一日のパフォーマンスを向上させるのにも最適です。起きてすぐにストレッチで全身の筋肉を伸ばすことは、心身がともに活性化されて、体の代謝力を上げるのにも役立ちます。
体の偏りや歪みが緩和されるということは、筋肉のバランスが均衡になるということですから、背を伸ばすのを邪魔する要因を取り除くことにもなります。
体のバランスが不均衡であることは、背を伸ばす妨げでしかありませんから、朝のストレッチはパフォーマンスを向上させるだけでなく、背を伸ばすのにも良いのです。
運動後のストレッチ
運動の前にストレッチを行うことは、筋肉を柔らかくしてケガの予防になるとともに、背を伸ばすのにも役立つと述べましたが、運動後のストレッチも同じく背を伸ばすために大切です。
運動後の体は疲れた状態ですが、疲れた状態で寝てしまうと、背を伸ばすのに重要な成長ホルモンが疲労の回復に使われてしまいます。これでは背を伸ばすどころではなくなってしまいます。
また、背を伸ばすのに重要なホルモンは成長ホルモンだけではありません。甲状腺ホルモンもその一つで、これも成長ホルモンと同じく寝ている間にたくさん分泌されます。
甲状腺ホルモンは新陳代謝を活発にする働きがありますが、背を伸ばすのにはこの新陳代謝が欠かせません。新陳代謝で骨の成長が促進され、背が伸びやすくなります。
寝る前のストレッチ効果
一日生活すると体には疲れが溜まり、筋肉にも同じように疲労物質が溜まります。筋肉は人間がどんな活動をする時でも常に働いているため、まったく運動しなかったという日でもかなり疲れているのです。
たとえ一日中テレビを見ていただけでも、同じ姿勢で長時間いることは筋肉を硬くしてしまいます。
一日の終わりにストレッチをすることで、日中の活動により凝り固まった筋肉を緩めて血行を良くし、溜まった疲労物質を外に出してあげるのです。
また、質の良い睡眠も背を伸ばすのに非常に重要です。質の良い睡眠が取れている時ほど成長ホルモンが活発に分泌されるため、背を伸ばすにはぐっすり眠れるようにストレッチで体をほぐしてあげましょう。
ぐっすり眠っている時には体内の深部温度が下がっています。体内が熱いと眠るどころではありませんから、ストレッチで意識的に体内の温度を下げることが大切なのです。
仰向けに寝転んで、頭の上で両手を組んで息を吸いながら前進を思い切り伸ばします。伸びた状態で10秒ほどキープし、今度は息を吐きながら元の状態に戻していきます。これを5セットほど繰り返すだけでOKです。
ストレッチの効果を高めるポイント
ストレッチの効果を高めるには、まず毎日続けることが何より重要です。ストレッチでその瞬間だけ筋肉が柔らかくなっても、毎日続けないとすぐに硬くなってしまいます。
筋肉がふたたび硬くなる前に、ストレッチで柔らかくしてあげることが大切です。
それから食事と入浴の時間にも気を付けましょう。寝る前のストレッチは睡眠の質を高めて背を伸ばすのに有効ですが、それには体の状態を万全にしておかなければなりません。
入浴も、寝る直前では体温が高まるため、背を効果的に伸ばすのに邪魔になってしまいます。なるべく就寝の1時間前までには入浴を終わらせておきましょう。
入浴後のストレッチにはたっぷり時間を取った方がぐっすり眠れますから、その意味でも入浴の時間には気を付けてください。
入浴とストレッチで心身をリラックスさせたら、あとはベッドに入って目を閉じるだけにしましょう。子どもがスマホを見たがるようなら、朝起きてから見るように指導してください。
朝ならスマホで脳が覚醒するので、寝起きをすっきりさせるのにもよいです。
背を伸ばす部位別ストレッチ7選
ストレッチは、一日の活動で無意識のうちに凝り固まった筋肉を柔らかくし、歪んだ体を整えて姿勢を正しくします。正しい姿勢でいると内臓の機能もちゃんと働くため、食事の栄養を背を伸ばすのに使うのにも大切です。
そこで、背を伸ばすのに効果的なストレッチを部位別に紹介します。
凝り固まった筋肉を伸ばして柔らかくし、体の歪みを整えることに重点を置いたストレッチで、どれも難しいものではないのでお子さんでも簡単にできるでしょう。
背伸び(肩甲骨ストレッチ)
背伸びをすると体がすっきりしますが、背を伸ばすためにも大きな効果が期待できます。現代人は大人も子どももパソコンやスマホのせいで猫背の姿勢になりがちですが、猫背の姿勢を続けていると背骨が湾曲してしまいます。
これでは背が伸びません。また、肩こりや腰痛につながることもあるので、背伸びで曲がった姿勢をしっかり伸ばしてあげましょう。
背が伸びないばかりか太りやすくまでなってしまうので、背伸びのストレッチを習慣にして、猫背にならないように日常から気を付けてください。
やり方は簡単で、両手を組んで真上に腕を伸ばすだけです。肩甲骨を中心に寄せる感じでやるのがコツで、筋肉がほぐれ、血液やリンパの流れも活性されて体の巡りが良くなります。
胸のストレッチ
猫背の原因のほとんどは胸の筋肉が緊張して硬くなっていることです。胸の筋肉が硬くなると首と肩が前に引っ張られるため、背中が丸まってしまいます。
背中が丸まったままでは体のあちこちに痛みも出てきますから、背を伸ばすだけでなく、体を健康に保つためにも猫背の解消は大切です。
背を伸ばすための胸のストレッチにはいろいろありますが、お子さんでもできる簡単な方法を紹介します。まず、真っすぐ立った状態で両手を後ろに回しお尻のところで組みます。
次に、後ろで組んだ手を上に上げていきます。上に上げることを意識するより、両手を体から遠ざけるイメージで伸ばすとよいですね。
こうすると、胸の筋肉が体の外側に引っ張られてストレッチ効果が得られます。この状態のまま30秒キープです。
胸のストレッチを続けていると、猫背の解消ばかりか、肋骨が開いて呼吸が楽になります。楽に呼吸ができると体疲れた時にもしっかり酸素を取り込めて、素早い回復が可能です。
首のストレッチ
頭が前方に傾いてしまう姿勢をストレートネックと言います。ストレートネックは体のあらゆる部分に負担をかける姿勢ですが、首の筋肉には特に負担がかかっているため、必要な筋肉が衰えて首が短くなってしまうこともあるのです。
ストレートネックでは、胸鎖乳突筋という首をまっすぐにして頭を支える筋肉が衰えてしまいます。必要な胸鎖乳突筋は衰えるのに、首が前傾しているせいで余計な負担になり、それをカバーするために首の周りに硬い筋肉が付くのです。
まず、頭の後ろで両手を組んで首の後ろに手の平を当てます。手で触れている部分がストレッチで伸びることを意識しましょう。この状態で手に力を入れると顎を引いた状態になります。その姿勢で20秒キープです。
次に、右手を左耳の上の辺りの側頭部に持っていき、力を入れながら頭を右側に倒してください。肩に耳が付くイメージで伸ばしていきます。
前もも・裏もものストレッチ
太ももには大きくて硬くなりやすい筋肉があります。ももの筋肉が硬くなったままでは、頭や首、背中までに影響して背を伸ばすのを妨げます。ですので、ももの前側・裏側ともにしっかりストレッチして筋肉をほぐしてあげましょう。
前もものストレッチは、まず正座の状態で後ろ側にゆっくり体を倒していきます。バタンといきなり倒れてしまうのではなく、腕で体を支えながらゆっくり倒していくのがコツです。
背中が床に付くまで倒して、床に付けた状態で30秒ほどキープしてください。床に背中を付けるのが難しい方は、枕やクッションなどを背中に挟んでサポートしてみましょう。
裏もものストレッチは、まず両足をまっすぐ伸ばした状態で座ります。背中もまっすぐ伸ばして、直角の姿勢から徐々に太ももをお腹に近づけてください。
太ももがお腹にピッタリ付かなくても大丈夫です。裏ももとふくらはぎや背中がしっかり伸びている状態で、30秒ほどキープします。
股関節の筋肉のストレッチ
身長と股関節は一見関係がなさそうですが、実は背を伸ばすのに股関節のストレッチは有効です。つい怠ってしまいがちな箇所なので意識してストレッチを行いましょう。
股関節にはリンパ管が集中しています。リンパは体の末端組織からの老廃物を回収してくれる大切な存在です。股関節は下半身を流れる水分や血液をコントロールする場所ですので、ここを柔軟にしておくことがとても大切なのです。
固まったまま放っておくと、歪みが体全体にまで及んで背を伸ばす妨げとなってしまいます。そのため、ストレッチで股関節を柔らかくしておくことは、背を伸ばすうえで非常に重要なのです。
股関節のストレッチは、まず立った状態で両ひざを付けます。そのまま右足だけを踏み出して、ひざの角度が直角になるまで前に踏み出していきましょう。
その状態で右ひざの上に両手を置き、息を吐きながら前方に体を傾けていきます。上半身の重心を下に向けることで、股関節を伸ばしていく意識です。
背中のストレッチ
背中のストレッチは背を伸ばすのにとても有効です。背中の骨と骨の間は詰まりやすいため、余計な圧力がかかった状態で放っておくと、その隙間でクッションの役目を果たしている軟骨が潰れてしまいます。
背中のストレッチをするには、まず四つん這いになります。両足の幅は股関節の幅で、股関節と膝が両方とも直角になるように状態を保ってください。
両手の位置は肩の真下です。その状態でおへそを覗き込むような感じで背中を丸めます。背中の真ん中が最も高くなるようにイメージしてください。
次に、おへそが最も低くなるイメージで背中を反らせていきます。その際、背骨の1個1個が動くのを意識するとよいでしょう。息を吸いながら反らせていき、いっぱいに吸い込むまで目いっぱい反らします。
以上を1セットとして、毎日3~5セット繰り返すとよいでしょう。
バランスボールを使ったストレッチ(全面・背面)
以上見てきた方法は自分の体だけを使うストレッチですが、道具を用いたストレッチも背を伸ばすのに効果があります。自力ではストレッチしにくいところも、道具を使えばしっかり伸ばせるでしょう。
ストレッチの道具でおすすめなのがバランスボールです。体の前面・背面ともに全体をストレッチするのに便利な道具ですから、お持ちでなくてもこの際手に入れておくことをおすすめします。
まず、バランスボールに腰掛けます。ボールの真ん中ではなく、ずり落ちない程度に前側に腰掛けるようにしてください。
その状態から、ボールに沿わせる感じで後ろ向きに倒れていき、ボールの上で仰向けになります。体がしっかり安定する位置を探してください。
体が安定したら両足をまっすぐ伸ばしていきましょう。体重を完全にボールに預けて、ボールの上で寝そべる感じです。その状態で30秒ほどキープします。
ストレッチは毎日やればやるほど効果があり
背が伸びるストレッチをいろいろ紹介してきましたが、大切なのは毎日続けることです。人間の体は今ある状態を保とうとして変化を嫌います。そのため、週に2~3回程度のストレッチでは効果が表れにくいのです。
ストレッチを続けても、それで背が伸びている実感が得られにくいかもしれませんが、正しい方法で続けていれば必ず良い影響を及ぼします。
自分のやっているストレッチが正しいかどうかを判断するには、気持ちいい程度の強さかどうかを確かめてください。痛いほど強くやっても逆効果です。
また、ストレッチにかける時間も意識してください。あまり短時間では効果は出ません。1回のストレッチで15~30秒以上はキープしましょう。これらのことに気を付けて毎日続ければ、ゆっくりでも変化は表れます。
まとめ
ストレッチは子どもの背を伸ばすのに有効です。成長の止まった大人がストレッチだけで背が高くなることはありませんが、成長期の子どもなら十分にチャンスはあります。
背を伸ばすには、硬くなった筋肉を柔らかくし、体の歪みを解消して、ホルモンがしっかり作用するようにすることが大切です。
ストレッチの効果を最大限に発揮するには、ストレッチを行うタイミングも重要です。
朝起きてすぐ、運動の前後、入浴後、就寝前と、ストレッチで体のパフォーマンスを向上させるとともに、体の疲れを取る効果が期待できます。
これらの部位のストレッチは毎日やりましょう。人間の体はそうすぐには変化しないので、必ず毎日正しい方法で行うことを意識してください。
姿勢が悪いと背が伸びにくいだけでなく、体のあらゆるところに悪影響を及ぼします。ストレッチで凝り固まった筋肉をほぐして、健康で背の伸びやすい姿勢を保つように改善していきましょう。