日本人の身長はここ100年で15cmも伸びたと言います。栄養状態や公衆衛生が劇的に改善したためでしょう。
ところが、現在でも身長にコンプレックスを持つ人は多いです。大人の男性の平均身長は約171cmですが、女性はパートナーに175cmを希望する人が多く、男性自身も背が高い方が良いことと考える傾向にあります。
そのため、たとえ自分たちの背が低くても、子どもは平均より高い身長に育ってほしいと希望する男女が多いのです。体重に関してもコンプレックスを抱く人は多数います。
自分の身長に対してコンプレックスを抱いてる方が多い
昔に比べると日本人の身長はとても伸びていますが、年代にかかわらず自分の身長をコンプレックスに感じている方は男性を中心に多いです。
ある大学で男女計110人にアンケートを取ったところ、男性の平均身長は173cm、女性は159cmでした。国民平均と比べると、男女とも自分の身長を低いと思っている方が3人に2人の割合でいました。
これは親の世代でもそうです。特に母親の方が子どもの身長に敏感になります。身長が低いとコンプレックスの原因になり、将来の職業の選択や結婚にも影響を与えると考える方が多いのです。
当の子どもはそれほど劣等感には感じていないのですが、成長するにつれて身長を気にするようになる方が多いことが分かります。
男性で160cm以下は劣等感をもつ方が多い
ある低身長の心理に関する研究論文によると、低身長の子どもを持つ父親のうち、自分が170cm以上ある方はほとんどが自分の身長に満足していることがわかっています。
一方で、160cm台の父親は5割以上の方が「もっと背が高くなりたかった」と思っており、160cm未満となるとほとんどの方が自分の背の低さに劣等感を抱いています。
女性の場合、160cm以上を高身長、150cm未満を低身長とみなしますが、150cm台と150cm未満の母親が背の低さに劣等感を抱いている割合が高いのは理解できます
しかし、160cm以上ある一般的には高身長とみなされる方々も「もっと背が高かったらよかった」と自身の身長に満足していない結果となっています。
低身長の子ども自身も背が低いことを不利に感じる割合は高くなっていますが、それが劣等感につながる割合は大人より低いです。大人の方が、身長が優越感や劣等感につながると考える割合が高いことがわかっています。
体重改善を希望する男性は20代から増加・女性は10代後半から増加
平成17年の「国民健康・栄養調査」によると、成人男性のうち内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)が疑われる方が約2割、メタボ予備軍と考えられる方がさらに2割いるとのことです。
さらに、男性は50代以上になると2人に1人が、メタボ予備軍、もしくはメタボリックシンドロームが強く疑われることがわかっています。
この結果からもわかるように、女性の方が早い年齢から自身の体重を改善したいと強く意識するようになります。
体重改善を希望する割合が最も高い年代は男女ともに40代ですが、それを希望する割合が増えるのは男性で20代、女性で10代後半からです。
女性は10代後半から、男性も20代には自身の体重を改善したいと考える方が増加しますが、実際、改善が必要なほど太っている方はそのうちの半数もいません。体重改善を希望する方の約7割はBMIで正常な範囲の体重です。
厚生労働省は健康日本21で適正体重を目標に掲げる
健康な社会環境を作るために、厚生労働省は「健康日本21」で国民の生活の質を向上させることを目標に掲げています。
生活の質向上には良好な食生活の実現が必要ですが、そのための目標として、生活習慣病や健康状態と関連の深い国民の体重を適正にすることを設定しました。
適正体重とはBMIの値が18.5以上25未満の場合ですが、平成22年の国民健康・栄養調査によると、15歳以上でこの範囲に入っている人は66.7%とちょうど全体の3分の2でした。
過去と比べると、女性の適正体重者の割合は横ばいですが、男性は減少傾向にあります。20~60代の男性に肥満が増加していることが原因です。
肥満が増加すると、健康状態を悪化させる人が増加し、その結果、国民の生活の質まで低下して社会環境が悪化してしまいます。それを防ぐために、厚生労働省は国民に適正体重となるように改善を指導しているのです。
身体状況調査からわかる大人の平均身長と体重
20歳以上の大人の平均身長と体重を男女別で確認していきましょう。平均身長と体重は厚生労働省の「身体状況調査」を参考にしています。
大人の平均身長一覧表
まずは平均身長を確認してみましょう。
男性の平均身長
20歳 | 173.2cm |
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21歳 | 170.7cm |
22歳 | 170.7cm |
23歳 | 172.9cm |
24歳 | 171.3cm |
25歳 | 170.9cm |
26歳~29歳 | 171.7cm |
30歳~39歳 | 172.0cm |
女性の平均身長
20歳 | 156.4cm |
---|---|
21歳 | 156.6cm |
22歳 | 158.1cm |
23歳 | 156.1cm |
24歳 | 159.5cm |
25歳 | 160.4cm |
26歳~29歳 | 159.0cm |
30歳~39歳 | 158.2cm |
大人の平均体重一覧表
大人の平均体重を確認してみましょう。
男性の平均体重
20歳 | 64.6kg |
---|---|
21歳 | 68.5kg |
22歳 | 66.1kg |
23歳 | 71.3kg |
24歳 | 64.1kg |
25歳 | 61.1kg |
26歳~29歳 | 70.3kg |
30歳~39歳 | 71.2kg |
女性の平均体重
20歳 | 50.0kg |
---|---|
21歳 | 50.2kg |
22歳 | 51.0kg |
23歳 | 52.5kg |
24歳 | 51.5kg |
25歳 | 53.1kg |
26歳~29歳 | 53.1kg |
30歳~39歳 | 52.0kg |
大人でも身長は伸びるのか?
子どもの時もそうですが、大人になってからでも多くの方が身長に悩んでいます。特に男性の場合に顕著で、平均的な身長以下の方は、社会に出てからも数々の場面で身長が低いことをコンプレックスに感じやすいです。
平均より身長が低いからといって、生活に支障が出るような困ることはほとんどありません。しかし、心理的なことで悩んでいる方が多いのは確かで、「大人になってからでも身長を伸ばす方法はないか」とさまざまな方法にトライする人も多いです。
身長は遺伝的な要因で決まる部分もありますが、その影響は約80%程度だと言われています。つまり、遺伝的要因以外の20%ほどは後天的な要因です。しかし、努力次第では大人でも身長を伸ばすことは可能だと考えられるでしょう。
骨端線が閉鎖した後に身長は伸びない
身長を伸ばすには骨が成長する必要がありますが、それには骨端線と呼ばれる骨の両端にある軟骨の増殖が関係しています。骨端線は成長線とも呼ばれますが、線ではなくれっきとした軟骨です。
身長が伸びるとは骨が成長することと書きましたが、正確には骨自体がそのまま大きくなるわけではなく、骨端線の細胞が活動することで、軟骨部分が骨に変化して骨が成長するという仕組みです。
この2つの細胞は互いに破壊と再生を繰り返しますが、成長期には骨芽細胞の方が活発なため、破壊するより早いスピードで新しい骨を作ります。その結果、身長が伸びるのです。
ただし、骨端線はいつまでもあるものではなく、大人になると閉鎖してしまいます。骨端線が閉鎖するとそれ以上骨が作られなくなるため、身長の伸びも止まってしまうのです。
骨端線とは?どうやって調べる?
骨と骨を繋ぐ軟骨部分を骨端線と言いますが、体の中にあるものなので自分では確認できません。骨端線があるうちは大人でも身長が伸びるチャンスがあるとはいうものの、自力で骨端線があるかどうかはわからないのです。
自力では確認不可能ですが、体内の様子がわかるレントゲン写真なら確認可能です。気になる方は専門機関で撮影してもらいましょう。子どもなら小児科ですが、15歳以上の方は整形外科になります。
宇宙に行けば身長が伸びる?
宇宙飛行士の金井宣茂さんがツイッターで、宇宙に行ってから身体計測をしたところ身長が9cmも伸びていたと発言したことで話題になりました。実際は9cmではなく2cmの間違いだったようですが、宇宙に行くと身長が伸びることは事実です。
宇宙に行くと身長が伸びる仕組みをJAXAが解説してくれています。それによると、宇宙では脊髄の椎間板が重力から解放されるため、椎間板一つ一つが1mmずつほど伸びるそうです。
椎間板とは軟骨であり、柔らかいのが特徴です。硬い骨と骨の間に挟まった軟骨がクッションの役目を果たすため、人間の体はバネのように弾力のある動きが可能になります。
無重力の宇宙空間に行くと重力に適応する必要がなくなるため、椎間板もクッションの役目をしなくてよくなります。その結果、重力から解放された椎間板が伸びることで、身長が伸びるという仕組みです。
身長を手術で伸ばす方法
身長が自然に伸びるのは一般的に成長期までで、男性なら18歳前後、女性は16歳前後で身長の伸びがストップします。ある程度の年齢になると身長が伸びなくなるのは、骨の両端にある骨端線という軟骨の集合体がなくなってしまうからです。
骨端線が閉鎖すると自然に身長が伸びることはありません。栄養、運動、睡眠にどんなに気を配っても無駄です。それでも何とかして身長を伸ばしたいという方は大人にもたくさんいます。
身長を伸ばす手術は、成長障害や先天的な骨の異常など適用されるケースは少ないですが、日本でも実際に行われています。その手術法について紹介しましょう。
身長を伸ばす整形手術「イリザロフ法」とは?
イリザロフ法は、骨折が治る際のメカニズムを利用した身長を伸ばす手術です。骨折した骨には、治る時に骨と骨の間に柔らかい「仮骨」が作られます。仮骨がくっついて骨となることで骨折が治癒する、という具合です。
イリザロフ法はこの仕組みを利用して、一度骨を人工的に切断します。目指す長さまで骨同士を引き離して固定すると、その間に仮骨が作られ、やがて骨となって固定します。
この結果、身長が伸びるとともに、事故や先天的な奇形で曲がった骨でもまっすぐになるのです。なお、仮骨が作られる際には正しい方向に骨を伸ばすために、適切な張力をかける装具を用いて患部を固定します。
まず、手術後に感染症や合併症にかかるリスクが高いです。また、人工的に骨を切断するため、切断部分の皮膚に目立つ傷跡が残る可能性があります。
それに、手術後もずっと激痛があります。さらには、数カ月から年単位で専用の装具を装着する必要があるので、日常生活にも不便が生じるでしょう。
そんなイリザロフ法ですが、保険適用外の手術ですので、入院や通院の費用も含めると合計1000万円以上はかかるでしょう。
国内で可能な身長を伸ばす骨延長手術「ISKD法」とは?
ISKD法とは、基本的にはイリザロフ法と同じ考えの手術です。骨を人工的に切断した後に器具を装着して骨を伸ばしていきます。
ほとんどアメリカでしか行われていない手術ですが、国内でも数か所の病院で行われています。ISKD法では、身長を5~8cm伸ばすことが可能と言われています。
ISKD法のイリザロフ法と違うところは、骨を切断した後にはめる装具が磁石の力で遠隔操作ができるところです。体の外側に装具を固定しないため、手術後、通常の生活に戻るまでイリザロフ法ほど時間がかかりません。
そんなISKD法のデメリットは、日本国内で手術を受けられる病院がほとんどない点です。手術を受けるには渡米する必要があると考えてください。
また、たとえ渡米したとしても誰でも手術を受けられるわけではありません。厳しい審査に通過して、ようやく手術を受けられるというものです。
費用については、アメリカのことなのではっきりわかりません。ただ、イリザロフ法と同じぐらいかかるのは確実でしょう。
世界と日本人の平均身長の比較
世界の中でも日本人は自分たちはかなり小柄な方だと思っています。実際、アメリカやヨーロッパに行って「なんて背の高い人たちだろう」と驚いたことのある方も多いはずです。
もちろん日本人にもずば抜けて背が高い人もいますが、日本や中国、朝鮮など東アジアの人たちは世界的に見て小柄という印象です。では、世界の平均身長はいったいどのぐらいなのでしょうか。
アジアより欧米の人の方が平均身長が高いと予想できますが、国別で身長ナンバーワンはどこになるのでしょうか。日本人は本当に世界的に見て身長が低いのかを見てみましょう。
世界と比較すると日本人の平均身長は低い?
平均身長の測定方法には世界的な統一基準がありません。国ごとに独自の基準で測定して発表するため、単純に比較できるものではありませんが、それでもおおよそのことはわかります。
国が発表する平均身長をそのまま信用すると、平均身長の世界一はオランダです。男性が183.8cm、女性が170.7cmです。
日本人男性とオランダ人女性の平均身長がほぼ同じですから、ヨーロッパの人たちと比べると、日本人は身長が低いと感じられるのも仕方ありません。
しかし、世界に200ほどある国の中で第45位ですから、実際は日本人の身長が平均より低いわけではありません。
東南アジア全体では男性の平均身長が162cm、女性が151cmですから、アジアの中では日本人は身長の高い国民と言えるでしょう。
諸外国に比べてカルシウムの摂取量が少ない
日本人の平均身長が欧米の人たちより低い理由は、人種的なことも多少は関係しているかもしれませんが、それよりも食生活です。特にカルシウムの摂取量が日本人は少なく、慢性的なカルシウム不足とも言われています。
厚生労働省の発表する児童のカルシウムの1日の推奨摂取量によると、10~11歳の男女は700mgずつ、12~14歳では男子1000mg・女子800mg、15~17歳では男子800mg・女子650mgとされています。
一方、アメリカでは、児童の年齢にかかわらず男女とも1日に1300mg摂取することが推奨されています。1日のカルシウム摂取量にこれだけ差があれば、アメリカ人より日本人の身長が低いのも納得でしょう。
ヨーロッパ諸国も日本人よりたくさんのカルシウムを摂取しています。日本人に比べてヨーロッパの人は乳製品をよく食べるからです。
日本人が身長を伸ばしたいなら、今よりもっと意識的にカルシウムを摂取する必要があるでしょう。
小人化している国もある
日本人の身長は過去100年の間に劇的に伸びました。15cm以上伸びたという調べもあるぐらいです。日本以外にも、時代とともに身長が伸びた国はたくさんあります。欧米だけでなくアジアの人たちもどんどん身長が伸びているのです。
ところが、世界の流れと逆らって、数十年前より国民の平均身長が低くなっている国もあります。その代表が北朝鮮です。北朝鮮も韓国も同じ朝鮮民族ですが、この2つの国の平均身長には大きな差が生まれています。
最近の北朝鮮には小学校高学年程度の身長の大人が増えているというほどです。北朝鮮が小人化している最大の理由は、慢性的な食糧不足でしょう。栄養状態が悪いまま世代が2代、3代と続けば体格が小さくなるのも仕方ありません。
両親の身長は子供に遺伝するのか?
「もう少し身長が高かったら」と背の高さに悩む方はたくさんいます。特に男性は背の高いことが一つのステータスのように扱われるため、身長が低い人の悩みは深刻です。
「うちは両親ともに背が低いから仕方ない」とあきらめている方もいるでしょう。また、自分が低身長の親御さんなら、「うちの子も背が低いままかも…」と不安に思われているのではないでしょうか。
そもそも計算で自動的に割り出せるものなら、身長が全然違う兄弟がいることの説明がつきません。
同じ両親から生まれて同じ生活環境で育ったのにもかかわらず、最終的な身長に大きな差があるのは、遺伝以外にもさまざまな要因が働くことの証拠です。
遺伝が全てではない
遺伝的要因による身長への影響は約80%ほどと言われています。ほとんどが遺伝に栄養ということは、両親ともに低身長でも、子どもも低身長のままとあきらめる必要はないのです。
思春期の子どもには身長が急激に伸びる時期があります。この時期を成長スパート期といって、開始時期には個人差があるものの、男子は13歳、女子は11歳ごろにそのピークを迎えます。
両親よりも子どもの身長を大きく伸ばしたいのであれば、子どもの成長スパート期を見逃さないことが大切です。身長と体重の記録をこまめに付けて、変化を見逃さないようにしましょう。
子供は栄養摂取を心がけて
身長には成長ホルモンの働きが大きく影響しますが、そのためには摂取する栄養を重視しなければなりません。特に3歳児までの乳幼児には、ホルモンの影響よりも摂取する栄養によって身長が伸びていきます。
身長を伸ばすための栄養摂取ですが、バランスよく満遍なく摂取することが基本です。炭水化物とそれ以外の栄養が1対1ぐらいの割合になるように意識してください。
成長ホルモンの分泌を促す栄養素にアルギニンがあります。豚肉や鶏肉に多く含まれる栄養素です。また、前述のカルシウムはもちろん、たんぱく質やマグネシウムなどもバランスよく摂ってください。
もし、お子さんが偏食などのために食事だけからでは十分な摂取が難しい場合は、サプリでサポートすることも考えてみましょう。子どもの成長をサポートする成分をしっかり配合した身長サプリも市販されています。
まとめ
日本人の平均身長はここ100年で劇的に伸びました。しかし、今でも身長にコンプレックスを抱いている方は大勢います。低身長の両親ほど、子どもの身長がどれだけ伸びるのかを心配しているのです。
身長が伸びる仕組みは、一般的には骨が成長することと考えられていますが、正確には骨の両端にある骨端線という軟骨集合体が成長することです。
身長を決定するのは遺伝以外の要因が大きいです。親が低身長でも、子どもがしっかり栄養を摂取し成長ホルモンを分泌できれば、親以上の高身長になる可能性はあります。成長期の子どもの栄養摂取を心がけ、必要に応じてサプリのサポートも借りましょう。