「身長を伸ばすために牛乳を飲みなさい」と、子供の頃に一度は言われたことがあると思います。昔から、牛乳や煮干などに含まれている『カルシウム』は身長を伸ばすために必要な栄養素だと考えられてきたからです。
しかし、最近では「カルシウムは骨を強くするだけだから伸びない」や「牛乳は飲みすぎると体に悪い」という反対の意見も目立ってきました。
これでは、どちらが正しいのかわかりませんよね。そこで今回は『カルシウム』について解説し、どういう栄養素なのか知っていきましょう。
※JNFは日本ニュートリション協会のことです。
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カルシウムとは
カルシウムとは人体にもっとも多く含まれるミネラルです。ミネラルとは無機質ともいい、カルシウム以外にもマグネシウムやナトリウムなどがあります。
カルシウムを含めたミネラルの必要量は他よりも少なめですが、体内で作ることはできないため食事から摂取する必要があるのです。
カルシウムは体重の1~2% を占め、その 99% は骨及び歯に存在する。残りの約1% は血液や組織液、細胞に含まれ、身体のさまざまな機能を調節するはたらきをしている。
血液に含まれるカルシウム濃度はほとんど一定に保たれています。濃度が低下してくると副甲状腺ホルモンのパラトルモンの分泌量が増加します。
パラトルモンとは骨からカルシウムを分解することによって、血液内のカルシウム濃度を増加させるものです。つまり、一定に保てないと骨がだんだん弱っていきます。
カルシトニンとはカルシウムとリンを骨に付着させることを促進する効果があります。また、尿と一緒にカルシウムとリンの排泄を促進する効果もあります。
骨はカルシウムの「分解」と、カルシウムやリンの「付着」を繰り返している状態です。
カルシウムの働き
カルシウムは上記でも説明をしていますが骨を強化する働きをもっています。身長を伸ばすためには『骨の強化』は欠かせません。
「身長が伸びる」とは「骨が伸びる」ことを意味します。骨が丈夫でなければ伸びることはありません。つまり、身長が伸びないことを意味します。
また、骨を強化することによって「骨粗しょう症」を予防することができます。骨粗しょう症とは骨がもろくなり、骨折をしやすくなる病気です。
その結果、20代前後で「骨粗しょう症予備軍」がたくさん増えてきています。中学校からお弁当になる学校もあるので、早い段階からカルシウム不足になる子供もいます。そのため、予防をしっかりとしましょう。
カルシウムは他にも以下の病気を予防できるといわれています。
- 心血管障害
- 高血圧
- がん
- 腎臓結石
- 体重管理
心血管障害
心血管障害とは心臓や血管に障害が起きることをいいます。心不全や心筋梗塞などの心臓病、動脈硬化や大動脈瘤などの血管障害です。
十分な量のカルシウムを摂取することができれば、これらのリスクを低減できる可能性があると報告されています。
大量のカルシウムがどれほどなのかわかりませんが、国が定める推奨摂取量を超えなければ心配はしなくていいでしょう。
高血圧
高血圧とは血圧が高くなることで、頭痛や耳鳴り、めまい、肩こりなどの症状がでてきます。治療しないままでいると、脳卒中や慢性腎臓病などの合併症を発症させるかもしれません。
いくつかの研究により、カルシウムの推奨摂取量を摂ることができれば、高血圧のリスクを下げることができるといわれています。
実際に大規模な試験が1件行われ、無脂肪および低脂肪の乳製品と野菜と果物を多く摂る食事をとったところ、血圧が低下することがわかりました。
がん
研究から得たデータは少し一貫性に欠けますが、食事またはサプリメントからカルシウムを摂取することによって、結腸直腸がんの予防効果に期待ができるといわれています。
実際に複数の研究では大腸がんのリスクが低減されることを報告されているのです。カルシウムを大量摂取すると前立腺がんの発症リスクの増加と関連していることがわかっています。
しかし、「前立腺がんの結果には一貫性がなく、関連性が弱い」との意見もあります。そのため、あまり心配はしなくてもいいでしょう。
腎臓結石
腎臓結石とは文字通り腎臓に石ができる病気です。主に「カルシウム」で構成されています。カルシウムの中にも種類が何種類かありますが、ほとんどが「シュウ酸カルシウム」です。
腎臓結石になると腰から背中に痛みが生じる、血尿になる、尿がにごる、冷や汗、吐き気などの症状がでてきます。
食事からカルシウムを大量に摂取しても腎臓結石はできることがなく、リスク低減に期待できます。食事から摂取するとシュウ酸塩の吸収が減るので、リスク低減に役立つとのことです。
体重管理
さまざまな研究の結果から「カルシウムの大量摂取」は「低体重」と「時間の経過とともに緩やかな体重の増加」と関連していることがわかりました。
ただ、ほとんどの研究で食品かサプリメントからカルシウムを摂取しても、「体重と脂肪への影響はわずか」だともでています。
牛乳(カルシウム)を飲むと身長は伸びる?
「牛乳を飲むと身長が伸びる」。これは誰もが一度は聞いたことがある言葉だと思います。これは牛乳に含まれる豊富なカルシウムからきた言葉です。
牛乳を飲むと身長は伸びるのか。先に答えをいうと「牛乳だけ飲んでも身長は伸びません」。なぜ、伸びないのか解説していきます。
骨を伸ばす働きをするのは「成長ホルモン」です。成長ホルモンを分泌させるためにはカルシウムではなく「たんぱく質」です。(ちなみに分泌させるには、他にも運動や睡眠もあります。)
たんぱく質は成長ホルモンの分泌を促すだけではなく、骨や筋肉の材料となるなど身長を伸ばすためには欠かすことができません。
また、たんぱく質以外にもビタミンDやマグネシウム、亜鉛なども身長を伸ばすためには必要な栄養素です。
これらをバランスよく摂ることで身長は伸びていきます。カルシウムだけ摂っても駄目ですし、たんぱく質だけを摂っても駄目です。
牛乳にはカルシウム以外にもたんぱく質などが含まれていますが、他のたんぱく質を豊富に含んだ食材よりは少ないです。そのため、牛乳を飲んでも身長は伸びないということになります。
カルシウムの必要摂取量は?
日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要を参考にカルシウムの必要摂取量を見ていきましょう。
男の子 | 女の子 | |
---|---|---|
3歳~7歳 | 600mg | 550mg |
8歳~9歳 | 650mg | 750mg |
10歳~11歳 | 700mg | 750mg |
12歳~14歳 | 1000mg | 800mg |
15歳~17歳 | 800mg | 650mg |
必要摂取量は上記のようになっています。ただ、必要摂取量と言われても普段お子さんがどれだけ摂れているかわかりませんよね。
そこで厚生労働省が発表している平均摂取量を紹介します。平成28年国民健康・栄養調査結果の概要を参考にしています。
男の子 | 女の子 | |
---|---|---|
1歳~6歳 | 421mg | 398mg |
7歳~14歳 | 678mg | 610mg |
15歳~19歳 | 508mg | 426mg |
平均摂取量の年齢は一括りが大きくなっていますが、上記の必要摂取量がほとんど満たせていません。唯一満たせているのは7歳~11歳だけです。12歳~14歳になると1000mg必要なので満たせていません。
この時期だけ満たすことができる理由は「給食」のおかげです。給食は管理栄養士さんが考えて作るため、栄養を満たすことができます。
しかし、中学生あたりから地域によっては給食ではなくなるため、必要摂取量を満たすことが難しくなります。
カルシウムを多く含む食材
文部科学省「食品成分データベース」を参考にカルシウムを多く含む食材を紹介していこうと思います。
肉類
食材 | 含有量 |
---|---|
豚(軟骨) | 100mg |
チキンナゲット | 48mg |
鶏(軟骨) | 47mg |
鶏(つくね) | 33mg |
イナゴの佃煮 | 28mg |
肉類の1位はスズメの1100mgとなっていたのですが、食べる機会が少なすぎるので入れていません。ちなみにスズメは京都のほうで食べられるらしいですよ。
スズメを除けば全体的に肉類に含まれる量は少ないので、カルシウムを目的として食べるのはおすすめできません。
魚類
食材 | 含有量 |
---|---|
干しエビ | 7100mg |
がん漬け(ガニ漬け) | 4000mg |
トビウオ(焼き干し) | 3200mg |
煮干し | 2500mg |
桜えび(素干し) | 2000mg |
買う機会が少ないかもしれませんが、カルシウムが豊富に含まれたものばかりです。ただ、どれも100gも食べるのは大変だと思うので、一品として少しだけ出すのがおすすめです。
野菜類
食材 | 含有量 |
---|---|
トウガラシ | 550mg |
切干し大根 | 500mg |
パセリ | 290mg |
なずな | 290mg |
カブ(漬物) | 280mg |
意外に肉類よりも多く含まれていますが、トウガラシを100g食べるなど考えにくいので、こちらも魚類と同様につけあわせ程度にしておくといいでしょう。
乳類
食材 | 含有量 |
---|---|
ナチュラルチーズ(パルメザン) | 1300mg |
ナチュラルチーズ(エメンタール) | 1200mg |
脱脂粉乳 | 1100mg |
全粉乳 | 890mg |
ナチュラルチーズ(チェダー) | 740mg |
乳類では基本的にチーズに多く含まれていました。エメンタールとはチーズフォンデュに使われることが有名で硬めのチーズになっています。
おやつにチーズを出してあげるなどすれば、良いカルシウム補給になりそうですね。
カルシウムを摂取するうえでの注意点
カルシウムは単体での吸収率が悪く、摂取量が十分だったとしても不足することも考えられます。カルシウムの吸収率をあげるためにはビタミンDと一緒に摂ることです。
また、運動をすることによって骨へとある程度刺激を加えることも大切です。リンやマグネシウムなど身長を伸ばすために欠かせないミネラルは互いに吸収を邪魔しあいます。
そのため、カルシウムを含めたミネラルはバランスよく摂る必要があります。
カルシウムを過剰摂取するとどうなる?
カルシウムの上限量は厚生労働省によると「17歳以下は十分な報告がないので定めません」とのことです。
つまり、17歳以下のデータはないので「ここを超えると危険」という明確な数値はありませんでした。推奨量は発表されているので、その数値を超えるか超えないかぐらいにしておくといいでしょう。
『「統合医療」に係る情報発信等推進事業』カルシウムについてによるとカルシウムを過剰摂取すると以下の症状がでる可能性があります。
- 便秘
- 高カルシウム血症
- 鉄や亜鉛の吸収の妨げ
高カルシウム血症とは、血液内のカルシウム濃度が過度に上昇したことをいいます。
過度に上昇することによって、腎臓機能が低下する「腎機能不全」や「血管、軟組織が石灰化」、尿のカルシウム濃度が高まり「腎臓結石の形成」などが起きてしまうのです。
これら軟組織にカルシウムが沈着していき石灰化します。石灰化すると軟らかいはずの組織が固くなっていき、さまざまな障害(慢性腎不全など)を起こしてしまうかもしれません。
アレルギーの心配はある?
カルシウムを摂取するとなったら牛乳などの乳製品ですが、乳製品にはアレルギーになる心配があります。
アレルギーは年齢が低いときに発症しやすく、大人になるにつれてリスクが減っていきます。
中学2年生になると牛乳は4位になりますが、それでも高めです。乳製品はカルシウムを豊富に含んでいますが、アレルギーになる可能性もあります。
乳製品が食べられない、飲めない子だとカルシウムの摂取が難しくなります。そこで、身長サプリを飲んでみてはいかがでしょうか。
(参考:厚生労働省「第4章食物アレルギー」)
まとめ
骨の強度とカルシウム量は30歳までにピークを迎えるようにしないといけません。しかし、カルシウムの摂取量を満たせているのは給食を食べている年齢の子供だけで、他の年齢の子供はまったく足りていませんでした。
カルシウムが足りないまま成長していくと、身長が伸びづらいだけではなく転んだときに骨折をしたり、怪我しやすくなってしまいます。
病気や怪我のない健康な体を作るには、カルシウムは欠かせません。お弁当になった子供や、夏休みや土日など学校のない日の食事の栄養バランスを見直してあげてください。
そうすれば、健康的な体で成長していくはずです。