子供の身長が周りの子と比較して小さいことで悩んでいる親は多いと思います。もしかしたら周りの子供よりも低いのは病気の一つ「軟骨異栄養症」かもしれません。
この病気は発生頻度が低いため、あまり聞き覚えはないと思いますが、いざというときと子供の今後の成長のことを考えると知っておくといいでしょう。
軟骨異栄養症とは?いつわかる?
軟骨異栄養症とは「軟骨低形成症」と「軟骨無形成症」のことを一括した呼び方だったのですが、現在では軟骨無形成症だけを指しています。軟骨低形成症は独立した疾患として認識されています。
この病気は生まれつきの骨の難病です。子供の身長は骨が伸びることによって成長していきます。しかし、この病気を発症すると骨の両端にある軟骨の細胞に異常が起こります。
異常が起こることによって骨が伸びにくくなり、胴体や頭に比べて手足が短くなってしまうのです。
特発性(原因不明)の低身長や他の骨関係の疾患(クル病)と症状が類似することがあり、診断が困難になることもります。(参照:難病情報センター「軟骨異栄養症[軟骨低形成症][平成24年度]」)
いつわかる?どこかに特徴はある?
軟骨低形成症は、生まれたときは手足が短いことが分かりづらく、乳児期(生後1年前後)を過ぎてから手足の短さが目立ち始めます。
頭や顔に特徴はありませんが、脚部がO脚への変形や、立ち上がったときに腰の部分が前のめり反っている腰部前弯などの特徴があります。
軟骨異栄養症は、低形成症とは反対に生まれてすぐに分かることが多く、頭や顔立ち、指に特徴が現れる傾向があります。
こちらも低形成症と同じようにO脚への変化や腰部前弯などの特徴があります。
(参照:軟骨無形成症と骨疾患低身長の会つくしんぼ「軟骨無形成症ってなあに?」)
軟骨異栄養症の原因とは?遺伝する?
軟骨異栄養症はFGFR3と呼ばれる遺伝子の突然変異によって発症します。しかし、軟骨低形成症の一部はFGFR3に異常がないのに発症しているものも存在することが分かっています。その原因についてはまだ判明していません。
この病気の遺伝形式が常染色体優性遺伝のため、両親のどちらかが軟骨異栄養症だった場合2分の1の確率で子供に遺伝します。両親どちらとも軟骨異栄養症だった場合は4分の3の確率で子供に遺伝します。
出生頻度はどれくらい?
軟骨異栄養症の明確な出生頻度は不明で埼玉県の「軟骨異栄養症とは?」によると2万人に1人だといわれています。この割合は骨関係の疾患では頻度は高いほうに入ります。
軟骨低形成症の中でも症状が軽い場合は未診断のものも多数存在すると推測されています。その未診断も含めると1万人に1人ともいわれています。
どのような症状が現れる?合併症はある?
軟骨異栄養症の症状や合併症をまとめていきます。
軟骨異栄養症の代表的な症状は骨が成長しないことによる低身長です。胴体や頭と比較して手足が短く、成人の男性でも平均身長は130cm、女性の平均で120cmまでしか成長しません。
また、特徴でも少し書いていますが軟骨異栄養症の場合は立ち上がったときにお尻を突き出したような姿勢になる腰部前弯や、前頭部の突出、鼻根部(目と目の間の鼻が出始める部分)が平たくなる症状があります。
乳幼児は体が柔らかく、無理に1人座りや、立たせたりすることで骨の変形を引き起こしてしまう恐れがあるので注意してください。
ちなみに運動や知的機能などを制御する中枢神経や末梢神経害に障害がでることによって運動機能の低下はありますが、知能障害になる可能性は低いので安心してください。
(参照:軟骨無形成症患者・家族の会つくしの会「軟骨無形成症について」)
合併症はある?
軟骨異栄養症は大後頭孔(延髄や脊髄など通っている首の付け根辺り)が狭くなることによって乳幼児期(生後から小学校入学前の未就学児)は水頭症や中枢性の睡眠時無呼吸症候群なども発症する可能性があります。
上あごの低形成と鼻咽頭(鼻と口が繋がっている付近)が狭くなることによって、中耳炎や難聴にもなることもありえます。
また、年齢を重ねるごとに腰痛やO脚、X脚へ変形、背骨の変形なども起きる可能性があります。他にも違和感なく、肩や肘の骨がずれてしまう亜脱臼を起こすかもしれません。
亜脱臼を起こすと骨がずれるため、患部周辺が動かしにくくなり、無理に動かすと痛みが強くなります。
どのような検査をする?診断は?
軟骨異栄養症はX線検査によって特徴的変化はないか見た結果で判断されます。軟骨異栄養症に比べて、比較的症状の軽い軟骨低形成症は見ただけでは診断が困難な場合もあります。
小児慢性特定疾病情報センターの「軟骨低形成症」を参考に書いていきます。
どのような治療が行われる?
軟骨異栄養症は完治するという意味での本質的な治療法はありません。身長を伸ばすために成長ホルモン治療か、骨の延長手術が行われます。
成長ホルモン治療とは?
成長ホルモン治療は軟骨異栄養症に比べて、症状の軽い低形成症のほうが治療効果は高くなっています。
成長ホルモン治療は3歳からスタートします。治療内容は自宅で、成長ホルモン製剤0.175mg/㎏を皮下注射します。
これを週に5~7回にわけてほぼ毎日投与を行います。(体重1kgに対して0.175mgなので、子供の体重が20kgだと3.5mgを5回~7回に分けて投与します)
この成長ホルモンの投与量は多いのか少ないのか度々議論が交わされています。世界的には少ない量の部類に入りますが、過剰摂取すると頭痛や発汗過多、糖尿病、高血圧などの病気になる可能性があります。
そのため、子供の身長を伸ばしてあげたいがために成長ホルモンの投与量を増やすのは危険なんでやめておきましょう。
骨の延長手術とは?
骨の延長手術とは手術でまず骨折状態にします。次に骨折した骨は自然治癒によって繋がろうとするので創外固定器というギプスを付けて、その力を利用します。それによって骨を伸ばすことができる手術です。
この手術は10歳~16歳の思春期に行われるのが一般的です。しかし、この手術を行うと約1年はギプスをつけたままになり、膝や足首など行動が制限されます。
またリハビリも行われるのですが、日常生活が送れるように自力で頑張らないといけません。
この手術はギプスをつけることによって、感染症や合併症などの心配もありますし、約1年はギプスをつけたままになります。
治療費はどれくらいかかる?
軟骨異栄養症は難病に認定された小児慢性特定疾病なので医療費の助成を受けることができます。ちなみに軟骨低形成症も難病に認定されているので受けることができます。
この制度は子供の慢性疾患のうち、特定の疾患については治療する期間が長く、医療費も高額になります。そのため、子供の健全育成のもと医療費の負担を軽減するために、自己負担の一部が助成されます。
対象年齢は18歳未満の児童ですが、小児慢性特定疾病情報センターの「小児慢性特定疾病の医療費助成について」によると、対象者として条件を満たし引き続き治療が必要だと判断された場合、20歳未満まで対象に引き上げることができるようです。
詳しくはかかりつけの医療機関かお住まいの市町村へ問い合わせてみてください。
また他にも育成医療を受けることもできます。育成医療とは体に障害がある、または将来障害を残す可能性のある疾患をもった子供が手術などの治療によって障害が軽減され、日常生活が容易に送れるようになる場合のみ、医療費の一部を負担してもらえます。(参照:厚生労働省「自立支援医療(育成医療)の概要」)
障害者手帳を貰って負担を軽減する
手足が短いことによって日常生活が不便という理由だけでは正直申請を受けることが難しいと思います。筋力の低下による運動機能の低下や、水頭症などの合併症があると受けることができる可能性があります。
手続きは指定医師に受診し、申請書を記入してもらい、各都道府県で認定を受けます。指定医師の検索は大阪だと「大阪府身体障害者手帳指定医師検索システム」というページがあり、市町村、障害分野、診療科目名などから細かく探すことができます。
もし、自分の住んでいる都道府県に検索する場所がなければ、スクエルの「身体障害者福祉法指定医の配置されている医療機関」から調べてみてください。
低身長症の子供をサポートする方法
軟骨異栄養症をはじめとした低身長症の子供のサポートをしてあげましょう。主にどのようなことをするのかというと以下になります。
椅子や机
子供の体に合った椅子や机を選んであげましょう。運動機能が低下していたり、合わないものを使用するとつまづいて転げてしまったり、背骨の変形を招く恐れがあります。そのため、子供に合った椅子や机を選んであげましょう。
トイレと電気のスイッチ
家族で共有している場所には台を置いて背伸びをしなくても届くようにしてあげましょう。また、センサー式の電気やウォシュレットを付けてあげるのもいいと思います。
ドア
筋力が低下している場合はドアに挟まる可能性もあるので、簡単に開閉することができるドアにすると安全です。
衣類
着替えのときに亜脱臼を起こす可能性があるので、なるべくシンプルで子供自身も脱いだり、着たりするのが楽な服にしてあげましょう。
カバン
子供が低学年のうちは体への負担を少しでも軽減するために肩からかけるカバンや軽量化されたランドセルを選んであげましょう。
最後に、患者と親の会として「軟骨無形成症の会つくしんぼ」という会があります。この病気は非常に珍しく、相談できる相手も少ないと思うので、気になる方は参加してみてましょう。また、会員同士で交流以外にも勉強や情報交換も行えます。
まとめ
ここまでいかがだったでしょうか。軟骨異栄養症について分かって頂けたかと思います。この病気を知ったことで結婚している方や妊活中の方、今現在妊娠している方は不安に感じると思います。
しかし、そのようなことは気にする必要はありません。「子供が将来いじめにあったらどうしよう」「子供が自分に自信持てなくなったらどうしよう」など想うこともあると思いますが、ちゃんと治療を行えば子供の身長は伸びます。
もちろん、治療は大変で簡単ではありません。しかし、親が大変だからといって治療を諦めると子供も同じように諦めてしまいます。
でも親が頑張っていたら子供もそれに応えようと必死に頑張ってくれるはずです。そうすれば親子で大変な治療も乗り越えることができると思います。
もし、子供が軟骨異栄養症だったとしても、子供だけが頑張るのではなく、二人三脚のように寄り添いあいながら親子で頑張っていくことが大事です。
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