子供の成長豆知識

成長ホルモン分泌不全低身長症とは?原因と症状・治療法【まとめ】

頭に手を置いて落ち込む子供

子供の成長は親がもっとも気にすることですよね。健康に成長してほしいと願わない親はいないはずです。そんな親御さんには知っておいてほしい病気があります。それが「成長ホルモン分泌不全低身長症」です。

この病気は子供の背の伸び率が分かっていないと気づきにくい病気です。そのため、周りの子供と比べたときに初めてその異変に気づく方も少なくありません。

成長ホルモン分泌不全低身長症は早期発見、早期治療を始めれば予後も良くなる可能性がおおいにあります。この病気自体を親御さんが知っておくことで、子供の成長の異変や低身長症に気づき、対応ができるようになります。

そこで成長ホルモン分泌不全低身長症の原因や症状、そして治療方法などを詳しく解説します。

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成長ホルモン分泌不全低身長症とは?

成長ホルモン分泌不全低身長症とは別名「下垂体制小人症」と呼ばれ、脳の下垂体というところから成長ホルモンが十分に分泌されず、成長率が下がり低身長になる病気です。

この病気は、子供100人の内2~3人が低身長という定義にあてはまり、その2~3人のうちの5%以下が成長ホルモン分泌不全低身長症になります。

小児慢性特定疾病情報センター」によると6歳~17歳の男の子1万人あたり2.14人、女の子は0.71人と男の子のほうが多く見られるようです。

成長ホルモンは身長を伸ばすためだけのものと思われがちですが、脂肪の分解やタンパク質の消化と吸収の役割もあるのです。

成長ホルモンが不足したままだと、大人になって様々な症状を発症する可能性があります。

  • メタボリックシンドローム
  • 心臓の機能低下
  • 筋肉量・骨量の低下
  • 疲れやすい
  • 無気力
  • 皮膚の乾燥・手足の冷え

NHK「今日の健康」を参考にわかりやすく表にまとめてみました。

小児 成人
成長ホルモン不足 低身長症 成長ホルモン分泌不全症
成長ホルモン過剰 巨人症 先端巨大症

成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)の原因は?

成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)は2つに分類されます。

  1. 特発性
  2. 器質性(続発性)※遺伝性も含む

原因としては大きく「続発性(器質性)」と「特発性」分類されます。そのうち続発性(器質性)は全体の約10%に満たない確率で、残りの大部分は特発性です。うち、1~2%程度が遺伝性だと言われています。

器質性(続発性)について

器質性(続発性)で発症する原因は、下垂体やその付近にできる腫瘍、事故などによる頭部への物理的な外傷、そして遺伝子の異常や奇形などの先天的なものまで含まれます。他にも出産時の骨盤位分娩や仮死、黄疸遷延などの出産期異常が挙げられます。

大部分を占める特発性は原因不明のため、原因は特定できていません。つまり、成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)になる約90%は原因が特定できていません。

器質性(続発性)は他の病気や物理的な外傷によって引き起こされるのが原因です。それを器質的疾患といいます。器質的疾患とは内臓や神経、筋肉などの体の組織にできる病気になります。

遺伝性は器質性(続発性)に含まれます。「小児慢性特定疾病情報センター」によると遺伝子異常によって起こる症状ですが、特発性に比べて発症することが少なく、きわめて稀だと言われています。

親から子供に遺伝するの?

成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)は遺伝子異常による遺伝性も認められています。よって「親から子供に遺伝しない」とは言い切れません。しかしながら、遺伝による発症はきわめて稀だと言われています。

親の身長が子供に遺伝するという研究発表はありますが、具体的にどの程度影響しているのかはわかっていません。

親の身長が低くても子供は健やかに育ち、身長が標準に達する場合もあります。反対に、親が標準の身長であっても子供の身長が低い場合もあります。

まずは遺伝を気にするよりも、子供の食生活や睡眠、運動など成長と直接関係のある生活習慣を気にしてあげましょう。

成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)の症状は?

成長ホルモン分泌不全低身長症によって引き起こされる症状は以下になります。

  • 成長率低下による低身長骨年齢が遅れる(骨の成熟度)
  • 低血糖による集中力、記憶力の低下
  • ストレス増加によるイライラ
  • 思春期が遅れる

原因が不明な特発性も、他の病気が引き金となって現れる器質性(続発性)の場合も、これらの症状が現れます。

他にもホルモン分泌障害を併発している場合は「声変わりをしない」「生理がこない」などの症状も現れるようです。

どのような検査と診断が行われる?

まずは、病院で他の病気にはなっていないか、生まれたときの状況などの問診が行われます。

次に身体測定を行い、わが子の身長と体重が同い年の標準身長と体重からどのくらい違うのか判断します。このときに標準と-2SD(標準偏差)以下だった場合は低身長だと判断されます。

SDとは「Standard Deviation」の略で、標準値からどの程度離れているかという幅を示す標準偏差のことです。

この問診はあくまで”判断”ですので、低身長だと判断されてもこの段階ではまだ本格的な治療には移りません。

この問診から明らかに成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)だと疑われる場合は、ホルモン分泌刺激試験を行い精密検査をします。

その目的は成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)とよく似ている「SGA性低身長症」を見分けるためです。

SGA性低身長症とは?原因と症状の判断基準、治療法や費用【まとめ】

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ホルモン分泌刺激試験の検査項目は以下6つになります。

  • インスリン負荷試験
  • アルギニン負荷試験
  • クロニジン負荷試験
  • L-DOPA負荷試験
  • グルカゴン負荷試験
  • GHRP-2負荷試験

これら6つの試験のうち、最低でも1つ以上を行います。

ホルモン分泌刺激試験の検査項目は各機関によって規定が違います。「小児慢性特定疾病情報センター」では2項目以上を実施と書かれていますが、「公益財団法人成長科学協会」では1項目以上と書かれていました。確定した情報がないので各医療機関によって検査項目の増減があるかと思われます。

この試験を行い、ホルモン分泌が低反応だった場合は成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)だと診断されます。

治療方法は?薬の副作用の心配はある?

成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)だと診断が確定されると治療が始まります。

治療法は内服薬やスプレーなどでは効果が得られないので「成長ホルモン製剤」を使用して皮下注射を行います。毎日、あるいは週6で注射を打たないといけないため、自宅での注射治療も認められています。

注射器はペン型が主流で毎日就寝前に皮下注射が行われます。注射する場所については担当のお医者さんから指示があります。

注射する場所は腕やお腹などさまざまですが、一般的にはおしり、太もも、おなか、腕などに注射します。同じ場所に注射するとしこりができることもあるので、1日おきに場所を変えましょう。

毎日の注射が嫌いなお子さんへ

お子さんの多くは注射が嫌いです。質問サイトの知恵袋には自宅での注射に苦労されている親御さんの書き込みがたくさんあります。できれば薬などの内服薬で治療できればいいですよね。

でも、現代の医学では注射で投与する以外の投与方法での有効性は認められていません。(参照:日本内分泌学会「成長ホルモンの適正使用に関する見解」より)

注射は痛いので誰も好んで打ちたくありません。それは大人も同じです。

でも注射自体もだんだん改良され、細くなっているので、痛さも軽減されています。あとは子供から注射に対する恐怖感を取り除いてあげるだけです。

どれだけ子供が納得しても痛いのは変わりません。それなら痛いという気持ちを一緒に受けとめてあげてください。

小学校高学年あたりになると子供は自分で注射できるようになります。それまで親が頑張って注射の使用方法を繰り返し見せてあげれば、子供は抵抗なく自分で注射できるようになります。

注射を打つのは子供です。親は諦めずに見守ってあげましょう。

成長ホルモン治療による副作用はあるの?

成長ホルモン治療は足りていないホルモンを補うための治療なので、理論上は安全な治療です。副作用は私たちの体に存在しない成分を入れて、それが体に合わないときに発症します。

成長ホルモン自体は私たち人間の体内にもともと存在しているものなので、それを新たに体に入れても副作用が起きる可能性は少ないです。

ただし、強い副作用が出ることはありませんが、薬の治療なので体質によっては軽度の副作用がでる場合もあります。もし、以下の症状が現れたときは担当の医師に相談をしてください。

頭痛や吐き気

治療を始めたばかりの子供が頭痛や吐き気に襲われることがあります。原因はわかっていませんが、注射のストレスなどと考えられています。

でもこれは一時的なものなので安心してください。もし、頭痛が長引く場合は別の病気も考えられるのですぐに医師に相談しましょう。

骨や関節の痛み

治療効果が高く、身長増加による成長痛だと考えられます。しかし股関節の痛みが強い場合は注意が必要です。

糖尿病

成長ホルモンには血糖を高める効果があるので、きわめてまれですが糖尿病になる子供もいます。

白血病

以前までは成長ホルモンの治療によって白血病の発症率も高くなるといわれていましたが。現在では心配ないという結論になっているので安心です。

治療費はどのくらい?保険は適用される?

成長ホルモン剤を使った治療はとても高額です。だいたい年間約100万円~700万円ぐらいの費用がかかると言われています。これを何十年も続けていくなんて現実的ではありません。そこで、国や各自自体は助成制度を設けています。

成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)と診断されたときに主に利用する制度は以下の2つです。

  • 乳幼児医療費助成制度
  • 小児慢性特定疾病医療費助成制度

乳幼児医療助成制度は子供を出産したときから利用できる助成制度です。すでに利用されている方も多いと思いますが、お持ちの乳幼児医療費受給者証は成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)も対象になります。

この乳幼児医療助成制度は各自自体によって受給できる年齢は変わりますが、これを利用すれば医療費を全額助成してもらえる場合もあります。

ちなみに、乳幼児医療助成制度の対象年齢は東京23区だと中学3年生までが多いです。なかには高校3年生まで適用される地域もあります。これは各自自体によってかなり差があるので、実際に問い合わせて確認してみてください。

助成内容も「一部負担」「全額負担」など、対象年齢同様に幅広く、早い段階で助成制度が終了してしまう場合があります。

そこで、乳幼児医療助成制度と併用して積極的に利用したい制度があります。それが「小児慢性特定疾病医療費助成制度」です。

小児慢性特定疾病医療費助成制度は「厚生労働省」が規定している要件を満たすことによって利用することができます。

小児慢性特定疾病医療費助成制度は、世帯の生計中心者(収入がある方)の所得によって医療費の自己負担上限額が決まります。

小児慢性特定疾病の医療費助成に係る自己負担上限額」を確認すると、年収にもよりますが最大で15,000円以上は支払わなくてよくなります。

実施主体は都道府県、指定都市、中枢市などの各自自体です。

小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象年齢は18歳未満が通常で、引き続き治療が必要だと判断された場合は20歳未満にまで引き上げることが可能です。

乳幼児医療費助成制度と小児慢性特定疾病医療費助成制度のどちらを利用すべき?

乳幼児医療費助成制度と小児慢性特定疾病医療費助成制度のどちらを利用すれば負担が軽くなるのかを説明します。

まず、乳幼児医療費助成制度は出産したときから利用できる制度なので、成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)だけの使用に限りません。

病院に連れていき風邪や怪我などで医療費がかかった場合も適用されます。

乳幼児医療費助成制度の場合は、各自自体によって対象年齢や負担額もかなり幅があります。

もし、医療費が全額戻ってくるのであれば積極的に乳幼児医療費助成制度を利用するのが一番でしょう。

広島大学病院小児科外来」では、乳幼児医療費受給者証の対象中は申請しないことも推奨しています。

しかし、助成内容が自治体によって変わるため、一概にこの方法が最適かどうかわかりません。

一方、小児慢性特定疾病医療費助成制度は最大で上限が15,000円です。

乳幼児医療費助成制度の一部負担金がこの15,000円を超す場合や、対象年齢を越えた場合は小児慢性特定疾病医療費助成制度の利用すべきです。

小児慢性特定疾病医療費助成制度は入院中の食事に対する助成もあります。

どちらの制度もうまく活用して負担を軽減する!

結論としては、乳幼児医療費助成制度と小児慢性特定疾病医療費助成制度のどちらも申請をしておいて、両方の助成制度をうまく活用するが負担を軽減する方法なのではないかと思われます。

乳幼児医療費助成制度と小児慢性特定疾病医療費助成制度の優先順位

東京都福祉保健局」によると乳幼児医療費助成制度と小児慢性特定疾病医療費助成制度では、小児慢性特定疾病医療費助成制度が優先適用されるそうです。たとえば、小児慢性特定疾病医療費助成制度を利用して10,000円支払った場合、あとから乳幼児医療費助成制度で無料になるとわかっても10,000円を請求することはできません。しかし、その逆は適用されます。

実際の支払の場で、どちらの制度を使えば助成制度をうまく活用できるのかを熟知している方はほとんどいません。

ですので、小児慢性特定疾病医療費助成で認定されたときにもらえる「小児慢性特定疾病医療受給者証」と、すでにお持ちの「乳幼児医療証」のどちらも提示しましょう。

先ほども説明しましたが、先にどちらかを提示した場合、負担額が多くなる可能性もあるので注意してください。「迷ったら2つとも提示する」これを忘れずにしましょう。

大人になったら治療は全て自己負担?

小児慢性特定疾病医療費助成制度を利用したとしても、最大で利用できる年齢は20歳までです。それ以降は自己負担になります。それまでの流れを簡単に説明すると、

  1. 乳幼児医療費受給者証(最大で高校3年生まで※各市町村による)
  2. 小児慢性特定疾患を申請する(小学校卒業まで)
  3. 小児慢性特定疾患を継続申請(20歳未満が対象)
  4. 自己負担(20歳以上)

各自自体によって流れは変わりますが、「4.自己負担(20歳以上)」はどの自治体でも変わりません。では20歳以上はどれだけ負担額が増えても助成を受けられないのか。

実は負担額が多くなりすぎるときに利用できる制度があります。それが「高額療養費制度」です。これなら同月内に検査などが集中して自己負担(3割)が一定の金額を超えた分はすべて免除されます。

負担額は年収によって差があります。(※年収による区分の違いは「全国保険協会」を確認してください)

例えば、年収約370万円~約770万円の方はどれだけ高額な医療費になっても上限約9万円以上で済みます。つまり、治療費が100万円になろうが500万円になろうが「9万円」しか負担しなくて大丈夫です。

以前は高額療養費制度も一度窓口で支払ってから、数ヶ月後に返金してもらえる制度でしたが、厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」によると今は認定証をもらえば窓口で上限額を超える分は支払わなくて済みます。

これも事前に申請が必要なので、不安がある方は必ず利用しましょう。

まとめ

成長ホルモン分泌不全低身長症(下垂体性小人症)は命に関わる重大な病気ではありません。

なかには治療を行わない選択をする親も少なからずいらっしゃいます。もちろんそれも選択肢の一つだと思います。高額な医療費だけに払えず、治療ができないという方もいるでしょう。

しかし、身長が低いことによって子供は周りとの劣等感を抱き、自信を失くすという研究結果も出ています。それを見てはじめて親が「治療しておけばよかった・・・」と後悔する方も少なくないようです。

成長期が過ぎると骨の成長がとまり、身長が伸びなくなります。その時期に気付いて、成長ホルモン治療をはじめてもほとんど効果はありません。できるだけ早い段階から始めて、骨の成長が止まるまで継続するのが有効的です。

これによって成長期(思春期)が終わるころには標準身長まで回復するケースも多く見られています。

確かに治療には費用がかかりますが、国の助成制度をうまく利用すれば負担もかなり軽減することができます。

まずは子供が治療を積極的に行えるように親がこの病気について詳しくなること。そして、積極的にこの病気に向き合うこと。それが子供の明るい将来に繋がる第一歩ではないでしょうか。

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