脂質と聞くと”肥満の原因”などのイメージをする人は多いでしょう。ダイエットでも最初に気にするのが脂肪分だと思います。
しかし、実は脂質は5大栄養素の一つとして数えられ、子供の成長には欠かすことのできない栄養素だと知っていましたか。
そこで今回は脂質の重要性についてと、子供の成長に脂質はどこまで必要なのか徹底解説していきます。ぜひ、参考にしてください。
脂質とは?
脂質とは5大栄養素の一つとして数えられ、私たち人間の体づくりと健康維持には欠かすことのできない大切な栄養素です。
脂質はサラダ油やごま油などの常温だと液体の「油」や、バターやマーガリン、肉の脂身などの常温で固体の「脂」に含まれています。ちなみにこれらをまとめて呼んだのが油脂です。
食事から摂取した脂質は主に小腸で吸収し、エネルギー源として利用されていきます。糖質も脂質と同様に小腸で吸収され、エネルギー源として利用されますが違いがあります。
糖質に比べて脂質のほうが大きなエネルギー源になるのです。糖質は1gあたり4kcalに対して脂質は1gあたり9kcalと倍以上違います。
ここだけ聞くと脂質のほうが優れているように思うかもしれませんが、糖質には吸収力が優れているというメリットがあります。
脂質は吸収に時間がかかる分エネルギー源として大きく確保することができます。糖質は吸収が早いのですが、脂質に比べるとエネルギー源を確保できません。
スポーツをした直後や休憩の際にはすぐにエネルギーを吸収できるハチミツレモンなどの糖質がよく、晩御飯には肉の脂身などの大きくエネルギーを蓄えられる脂質がよいでしょう。
脂質の働きとは?
脂質の働きについて解説する前に、脂質といっても単純に1つだけではなく大きく分けると「単純脂質・複合脂質・誘導脂質」の3種類があります。
単純脂質について
単純脂質は名前の通り非常にシンプルで、グリセリンと呼ばれるアルコールの1種と結合したものです。単純脂質の中にはトリアシルグリセロールがあります。
食品に最も多く含まれるのはトリアシルグリセロールで、私たちが摂取している脂質の多くを占めているのです。
主に脳や体を動かすためのエネルギー源として利用され、一部は蓄えられていきます。
複合脂質について
複合脂質は単純脂質にリン酸や糖を含んだ脂質で、細胞膜を構成する成分として体内で利用されます。
細胞膜とは外から来る病原体から体を守ったり、体内で発生した老廃物を排出するなどの役割があります。細胞膜の働きが悪くなると病気になりやすく、なかなか治らなくなってしまいますので注意してください。
誘導脂質について
誘導脂質は単純脂質や複合脂質から少し変化をさせた脂質のことをいいます。誘導脂質はみなさんも聞いたことのある、以下の3つです。
- 脂肪酸
- コレステロール
- 脂溶性ビタミン
脂肪酸
脂肪酸の中には体内で生成することができず食事から摂取しないといけない、健康維持に不可欠な「必須脂肪酸」や、大量に摂取すると動脈硬化を引き起こす「トランス脂肪酸」などがあります。
脂肪酸の種類によって働きは変わってくるのですが、オメガ6脂肪酸だと炎症やアレルギー反応の抑制に期待できます。
コレステロール
コレステロールは食べることによって大きく影響があるようにも思えますが、実は体内に存在している70~85%ほどは体内で作られたものです。残り15~30%が食事からということになります。
健康診断などでよく聞くせいかあまりいいイメージのないコレステロールですが、実は細胞膜やホルモン、小腸で吸収するときに必要な胆汁酸を作るなど重要な役割をもっているのです。
脂溶性ビタミン
脂で溶けて吸収されるビタミンA・D・E・Kを吸収するために使われます。脂溶性ビタミンは脂に溶けやすい性質で吸収しやすいメリットがあります。
ただ、水溶性のビタミンとは違い、摂取してからも体内で当分は残っているので大量に摂取すると過剰摂取になるデメリットがあるので気をつけてください。
子供の成長に脂質は必要?
先に結論からいうと子供の成長に脂質は必要だといえます。脂質の働きをまとめると以下になります。
- エネルギー源
- 細胞膜の構成成分
- ホルモンの材料
- 脂溶性ビタミンの吸収促進
どれも、子供の成長にあまり関係のないようにも思えますが、実はどれも大切です。体の成長のエネルギー源として働いたり、成長を促進する脂溶性ビタミンAの吸収を促進させるなど大切です。
脂質の推奨摂取量はどれぐらい?平均摂取量は?
脂質の重要性について説明してきましたが、実際に今どれだけ摂取できているのか、どれだけ必要なのかわかりませんよね。
そこで、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」と「平成28年国民健康・栄養調査結果の概要」を参考に推奨摂取量と平均摂取量を紹介していきます。
脂質の推奨摂取量
脂質の推奨摂取量は男女ともに必要カロリーの「20%~30%」になるように摂取することを推奨しています。
成長期の12歳~14歳だと1日に必要なカロリーは2600kcalになります。そのうちの20%~30%が脂質になるように摂取するのが望ましいということになるのです。
2600kcalの20%~30%は「520~780kcal」になります。脂質は1gあたり9kcalのエネルギーを持っているので、まずは2600kcalをグラム(g)に変換します。計算式は以下です。
- 9kcal=1g
- 2600kcal÷9=約289g
- 約289gの20%~30%=約57g~86g
つまり、成長期のお子さんだと「57g~86g」が1日の必要摂取量ということになります。
必要摂取量を超えて摂取し続けると過剰摂取になってしまう恐れがあります。過剰摂取してしまうと成長を妨げてしまう可能性もあるので注意してください。
脂質の平均摂取量
脂質の平均摂取量はどれくらいなのか、男女計・年齢別で確認してみましょう。
年齢 | 平均摂取量 |
---|---|
7歳~14歳 | 63.9g |
15歳~19歳 | 69.0g |
先ほどの12歳~14歳の推奨摂取量を考えると、どちらも推奨摂取量を満たすことはできているでしょう。
ただ、これはあくまで”平均”の摂取量です。お肉や油物ばかり食べているお子さんは過剰摂取している可能性もありますし、野菜が中心のお子さんなら不足しているかもしれません。
普段、栄養バランスを気にせず料理を作っている方は少し気にしたほうがいいかもしれません。完璧な栄養バランスではなくとも野菜とお肉のバランスなどを考えてあげましょう。
脂質を不足するとどうなる?
子供の成長には欠かすことのできない脂質を不足するとさまざまな症状があらわれます。脂質は子供だけではなく大人も必須の栄養素なので、ぜひ不足したときの症状を確認してください。
- 不足したときの症状は以下になります
- エネルギーを確保できず疲れやすくなる
- 脂溶性ビタミンを十分に吸収できず、調子が悪くなる
- 成長の障害となる
- 皮膚炎を発症する
脂質を不足してしまうとエネルギー源がなくなり、脂溶性ビタミンが吸収できず体の調子を悪くしてしまいます。
その結果、元気がなくなっていき運動や食事の量が減っていくことも考えられます。運動や食事は身長を伸ばすにあたって、とても重要なことです。
食事に関しては食事量が減っていくと、ますます脂質を摂取することが難しくなっていき体の成長が遅れていくこともありえます。
普段野菜を中心に食べている子は他の栄養素を満たせているかもしれませんが、脂質を不足しているかもしれません。
脂質の過剰摂取には注意!
脂質を過剰摂取すると脂質異常症や動脈硬化などの症状があらわれる可能性がありますが、成長期の子供にもっとも気をつけてほしいのは「肥満」です。
成長期に太ってしまうと予定よりも早く成長期が終わってしまいます。また、成長期前に肥満になるのもいけません。
成長期前に肥満になってしまうと成長期を早く迎えて、早く終わってしまいます。その結果、伸び率も悪くなってしまいます。
子供の身長を伸ばしてあげたいなら、できるだけ成長期を遅らせることで伸び率は上がっていきます。そのため遅らせることが大切です。
身長は1年に1cmほどしか伸びないのですが、成長期前は2cmずつ伸びていきます。つまり成長期をゆっくりにすればそれだけ身長の伸びに期待ができます。
肥満といっても平均よりも少しだけ太っている程度なら問題はありません。身長が伸びることによって標準の体重になるぐらいなら気にしないでいいでしょう。
脂質を摂り過ぎない、不足しないためにはどうすればいい?
基本的に食事内容のバランスが整ってさえいれば、過剰摂取になることも不足することもありません。脂質を上手に摂取するには以下のことを意識するといいでしょう。
- 牛肉や豚肉に含まれる脂質よりもオリーブオイル、青魚の脂質を摂取する
- 野菜やきのこなどのコレステロールの吸収を抑える食物繊維を一緒に摂る
- 「1日3食」しっかりと食べる。夜遅くに食べない
- バターやマーガリンなどの乳製品、マヨネーズなどの動物性食品は食べすぎないようにする
これらを意識しておけば脂質の過剰摂取、不足になることはないでしょう。もし、面倒だと思うのであれば「主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物」この5つを意識するといいでしょう。
牛乳・乳製品に関してはお子さんが小学生なら学校の給食で牛乳を飲んでいると思うので、他の4つだけだけ大丈夫です。
- 主食はご飯やパン、麺
- 副菜は野菜やきのこ、芋、海藻
- 主菜は肉や魚、大豆、卵
- 牛乳・乳製品
- 果物
ぜひ、上記を参考に料理を作ってあげてください。
まとめ
脂質はどのような栄養素なのか、子供の成長には必要なのか解説しました。
太るなど、あまりよいイメージのない脂質ですが、子供の成長に関係しているとても大切な栄養素です。
脂質を摂ることによって、エネルギー源となり子供も活発に運動をしたり、勉強に集中することができます。
ただ、脂質は他の栄養素と違って摂取するバランスがとても難しくなっています。不足をしても過剰摂取になっても子供の成長を阻害するかもしれません。
脂質のことを意識すると他の栄養バランスのことなども考えないといけなくなるので、脂質を摂ることも大事ですが、全体の栄養バランスを考えるといいでしょう。
そうすれば、脂質も他の栄養素も過剰摂取、不足することもなくなるはずです。とても大変かもしれませんが、子供の成長期は一度しか来ません。
その一度の成長期のためにお子さんの栄養バランスを考えてあげてください。
(参考サイト:農林水産省「脂質」)
(参考サイト:消費者庁食品表示課「脂質と脂肪酸のはなし」)