オルニチンとは、「遊離アミノ酸」のひとつです。Lアルギニンから生合成されたもので、通常のアミノ酸とは異なります。
主に肝臓内で働き、糖質・たんぱく質・脂質などの代謝や老廃物、アンモニアなどの解毒を行っているのが特徴です。
そのため、二日酔いや疲労回復などの効果があるといわれています。また近年はオルニチンの研究が進み、子供の成長や身長への影響についても注目されています。
でもなぜ、オルニチンが子供の成長や身長に影響するといわれているのでしょうか?
また、不足した場合、どうなるのでしょうか?国立健康・栄養研究所の見解などを含め、効果や成長ホルモンへの影響などについて学びましょう。
※この記事では国立健康・栄養研究所「オルニチン」を参考に書いています。
オルニチンとは?どんな成分?
オルニチンとは、アミノ酸の一つですが、たんぱく質を構成するものではなく、Lアルギニンから生合成される「遊離アミノ酸」になります。
食品では、代表的なのがしじみです。他にも、キハダマグロやヒラメといった魚介類に多く含まれています。
また牛乳やヨーグルトなどの乳製品にもオルニチンが多く含まれているでしょう。なかでもチーズには、100gあたり0.76mg~8.47mgも含まれています。
そんなオルニチンですが、前述したとおり主に肝臓内で重要な役割を果たしているため、循環器・呼吸器・免疫・脳・神経などへの有効性は見られていません。
実際、肝疾患患者25名を対象に試験を行った結果、医療用アミノ酸製剤を摂取させたところ尿素合成が高まり、血漿中アンモニア濃度が抑制されたという結果が出ています。
その他、健康な成人男性を対象に無作為化二重盲検プラセボ比較試験では体重および体脂肪率が減ったという結果も出ました。
オルニチン摂取で子供の身長は伸びるのか?
オルニチンでは、子供の成長や身長への影響もあると説明しました。しかしなぜ、オルニチンで子供の身長が伸びるのでしょうか?
その効果は、「成長ホルモンの分泌」「筋肉合成や脂肪代謝の促進」「運動の疲労を軽減」の3つが挙げられます。
この3つの効果が合わさり、子供の身長へもプラスに働いてくれるのでしょう。ではなぜ、これらの効果を得ることができるのでしょうか?
それぞれの効果について、後ほどもう少し詳しく説明します。「我が子の身長が伸び悩んでいる」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
成長ホルモンの分泌を促進する
子供の成長や身長に影響するオルニチン。1つ目の効果は、「成長ホルモン分泌を促進する」ことです。
成長ホルモンは、子供がスクスク成長するうえで欠かせません。成長ホルモンが分泌されると、骨が形成され、伸びていきます。
身長が伸びるためには「骨の成長」が不可欠ですが、オルニチンはそんな骨の成長もしっかりサポートしてくれるのです。
オルニチンは、主に肝臓内で重要な役割を果たすことはすでにご存知でしょう。
成長ホルモンは、肝臓や骨に働きかけることが大きなポイントになりますから、肝臓内で働くオルニチンが成長や身長を伸ばすのに非常に役立つといわれているのです。
またたんぱく質を合成するため、身長が伸びやすい環境も作ってくれます。
もっとも身長が伸びるのは思春期(10歳~17歳)の頃ですが、オルニチンを摂り続けていれば大人になってからでもプラスに働いてくれるため、20歳を過ぎてからも身長が伸びる場合があります。
筋肉合成や脂肪代謝を促進する
オルニチンには、前述したとおり成長ホルモンを分泌する効果があります。そして成長ホルモンの分泌をサポートする「筋肉合成」の効果もあるため、身長へとしっかり影響してくれるのでしょう。
ただ、オルニチンの成長ホルモンの分泌は微量。そのため、摂取したからといってすべての人が急激に身長が伸びるわけではありません。それでも、しっかりと効果を発揮してくれるのがオルニチンです。
子供の成長には、「健康」も大きなキーワードになります。肝臓の働きがスムーズになるということは、自然と脂肪代謝も促進されます。
肝機能が正常ということは、子供の成長にも大きく影響してきます。疲れにくい体になりますから、清々しい毎日を送ることができるでしょう。
運動による疲労を軽減する
体が疲れやすいのは、「肝機能が低下」しているという理由が考えられます。
肝機能が低下していると疲労を溜めやすくするだけでなく、子供の成長にもネガティブに働くことになるでしょう。
子供にとって、成長ホルモンの正常な分泌は非常に重要になります。それができなくなるということは、しっかり成長できなくなってしまうということです。
それを防ぐのが「オルニチン」ですが、オルニチンは主に肝臓内で働くため、肝機能を正常にし疲れを溜めにくくしてくれます。
そのうえ身長にもプラスに働いてくれるわけですからメリットが大きいといえるでしょう。
ちなみに、オルニチンがアンモニアに反応し、尿素へと変換し体外へと排出します。アンモニアは、運動や代謝によって発生したもので変換した尿素は無毒です。
そして、尿素へ返還されるときにオルニチンが生成されます。このサイクルを「オルニチンサイクル」といい、疲労を軽減し健康的な体を維持できるようになるでしょう。
そして肝機能が高まり子供の成長へと繋がるというわけです。
国立健康・栄養研究所ではオルニチンの有効性は不十分だと判断
子供の成長に欠かせないオルニチンですが、国立健康・栄養研究所によるとオルニチンの有効性は不十分という結果が出ています。
健康食品の素材情報データベースを見てみると、循環器や呼吸器、糖尿病、生殖、脳や神経などの有効性が「調べた文献の中で見当たらない」と表示されています。
ほとんどの項目がこのように表示されていることから、有効性については不十分と判断されます。
消化系・肝臓では、肝疾患患者25名を対象に試験が行われました。25名の患者に、医療用アミノ酸製剤(Lオルニチン、Lアスパラギン酸塩6~9g/日)を8~20年間摂取させたところ、摂取する前に比べ尿素の合成が高まったことが分かりました。
さらに、血漿中アンモニアの濃度も上昇を抑制。
骨・筋肉では、健康な成人男性を対象に試験を実施し、18名の男性には、無作為二重盲検プラセボ比較試験でLオルニチンとLアルギニンの等量混合物をウエイトトレーニングとともに2g/日を5週間の摂取。
22名の男性には、二重盲検プラセボ比較試験でLオルニチンとLアルギニンの等量混合物をウエイトトレーニングと合わせて4g/日(Lオルニチン2g含有)を5日間摂取させました。
オルニチンに副作用はある?注意点について
オルニチンを摂取するうえで気になるのが「副作用」です。どんなに体に良いといわれている栄養素でも、副作用が出てしまうと安心できません。また、摂取するうえでの注意点もきちんと知っておく必要があるでしょう。
そもそも、オルニチンは1日にどれくらい必要か知っていますか?どんな健康食品にも、「1日の摂取目安量」が決まっています。
摂取目安量をオーバーしてしまうと、たとえ副作用の報告がない栄養素でも場合によっては副作用が出てしまう恐れがあるでしょう。
ここでは、オルニチンの副作用について説明しています。子供の成長にオルチニンを検討している方は、副作用や注意点、また1日に必要な量をしっかり学びましょう。
オルニチンの副作用はある?
まず、オルチニンに副作用の報告は出ていません。そもそも、オルニチンは体内で生成される遊離アミノ酸です。
サプリメントや食品などで摂取できる栄養素でもありますが、人間の体内にも存在するためオルニチンを摂ったからといって副作用が起こることはありません。要するに安全性の高い栄養素なのです。
なかでも乳製品は、毎日食べている方も多いのではないでしょうか。もっとも多くオルチニンが含まれているのはしじみですが、その他の食品にもわずかではありますが含まれています。
これらの食品を食べて、危険な副作用が出たという報告も出ていません。このように、安心して摂取できるのがオルニチンです。
ですから、子供にも無理なく食べさせることができるでしょう。ただ、注意しなければいけない点もあります。
それは、オルニチンの摂取量です。外部から摂取する場合は、この「摂取目安量」を守らなければいけません。安全だからと過剰に摂取すると、トラブルの原因になりますので十分注意ください。
10g以上経口摂取すると胃腸の不調が報告されている
オルニチンは基本的に安全な栄養素です。それは前述したとおりで特に副作用は報告されていませんが、外部から摂取する場合は注意が必要になります。それは、「摂取量」です。
オルニチンの1日の摂取量は400mg~1000mg。1日10g以上を摂取した場合、胃痛や下痢といった不調が出ると報告されています。要するに過剰摂取することで副作用が出る場合があるということです。
とはいえ、オルニチンを10g摂取することは決して容易ではありません。たとえオルニチンが豊富に含まれているしじみやキハダマグロでも、10gを摂取するには到底及びません。
ですから、食品で10g以上といった過剰摂取になる心配はありません。ただ、サプリメントで摂った場合、容易に10g以上が摂れてしまいます。
健康のためにと自己判断で目安量以上に摂取するのは危険です。サプリメントでオルニチンの摂取を考えている方は、必ず表示されている目安量を守って摂るようにしてください。それさえ守れば問題はないでしょう。
【補足】オルニチン含むアミノ酸を過剰摂取すると副作用がある
オルニチンそのものには副作用はないものの、外部からオルニチンを摂取する場合は副作用の心配が報告されていることが分かりました。
またオルニチンだけでなく、オルニチンを含むアミノ酸を摂取する場合でも、過剰摂取すると副作用が出る場合があります。
ひと口にオルニチンサプリといってもさまざまです。食品の場合は10gに達することは到底難しいため過剰摂取になる恐れはありませんが、サプリの場合は容易に摂れてしまいます。
ですから、たとえオルニチンの量が少ないサプリでも、過剰摂取は避けなければいけないでしょう。
たとえば、DHCのオルニチンサプリには1280mg含まれています。目安量は、1日5粒です。協和発酵バイオは800mg配合されていますので、1日6粒を目安に摂ります。
オルニチンを効果的に摂取する方法
オルニチンを外部から摂取する場合は、「摂り方」が重要になります。基本的に目安量さえ守ればいつ飲んでも問題ありませんが、より効果を高めるには摂り方を工夫する必要があります。
摂るタイミングはいくつかありますが、おすすめは運動後や就寝前になります。
運動後は吸収率が高く、成分をしっかり届けることができますし疲労を回復させることができます。就寝前は、美肌効果もあり、また成長ホルモンも正常に分泌させることができるでしょう。
特に22時~1時頃までに摂取すると効果的です。
オルニチンを効率よく摂取できる食品一覧
オルニチンというと、サプリメントから摂るイメージが強く、どの食品から摂れるのか知っている方は少ないのではないでしょうか。
できることならサプリメントに頼らなくても食品から摂らせてあげたいと思う、親御さんも多いでしょうからオルニチンを効率よく摂取できる食品を紹介していきたいと思います。
「しじみ」
もっともオルニチンが多く含まれているのが「しじみ」です。オルニチンといえばしじみといっても過言ではないほど、オルニチンの代表的な食品といって良いでしょう。
しじみには、100mgに対し約10~15mgのオルニチンが含まれています。
しじみ以外の食品はオルニチンが微量しか含まれていないといわれていますから、それに比べると非常に多くのオルニチンが含まれていることが分かるでしょう。
また、しじみをマイナス4度で保存し常温に戻すことでよりオルニチンの量が増えるといわれています。
オルニチン以外にも、ビタミンB12が豊富に含まれています。ビタミンB12は鉄の吸収を促し貧血を改善する効果があります。
またビタミンB12には、肝機能を高める効果もあります。オルニチンで肝臓内の働きを高め、ビタミンB12でサポートするというわけです。
しじみは非常に栄養価が高い食品といえるでしょう。子供の成長はもちろんのこと、やはりお酒を飲んだ後やスポーツをした後などにもおすすめです。
「マグロ」
オルニチンは、魚介類に多く含まれています。そのため、マグロにもオルニチンが含まれています。100gに対し、オルニチンの量は約2~7mgです。
しじみに比べると少ないですが、ヒラメやチーズなどに比べると多く、しじみの次にオルニチンの量が多いといわれています。
なかでもキハダマグロには豊富なオルニチンが含まれています。なかなか食べる機会はないかもしれませんが、寿司屋に行ったらぜひマグロを注文してください。
DHA/EPAが含まれているのを知っている方は多いのではないでしょうか。DHAはドコサヘキサエン酸といい、認知症のリスクを下げるといわれています。
EPAはエイコサペンタエン酸。DHAと同じくオメガ3脂肪酸の一種で、血液をサラサラにし血栓を予防する働きがあります。
「ヒラメ」
ヒラメにも、オルニチンが含まれています。ただし、しじみやマグロに比べると少なく100gに対し約0.5~4g程度です。
しかし調理しやすいので食事にも取り入れやすいでしょう。低脂肪高たんぱく質なので脂肪分も少なく、とってもヘルシーですね。
またカリウムも含まれています。カリウムは、体内に溜まった余分な水分を外へ排出しむくみを解消する効果があります。
また高血圧の予防にも役立つでしょう。筋肉の収縮を正常にする効果もあるといわれています。他にも、セレン・ビタミンD・ビタミンEなどの栄養素も含まれています。
セレンは、体内の有害物質を排出する効果がある栄養素です。高い抗酸化作用で老化を防ぐことができるでしょう。
濃縮されたサプリから摂取する場合は過剰摂取に注意
オルニチンをサプリで摂取する場合は、「過剰摂取」に注意しなければいけません。何度か説明していますが、オルニチンは1日の目安量が400mg~1000mg程度で、10g以上摂ると過剰摂取になります。
食品の場合は、含有量が少ないため過剰摂取になる心配はほとんどありませんが、サプリの場合は簡単に摂取できてしまうので注意しなければいけません。
通常、オルニチンを摂ると美肌になるといわれているのに、肌荒れを起こしてしまっては摂取している意味がありません。
ですから、サプリで摂る場合は過剰摂取にだけは十分注意してください。サプリは、商品によって含有量が異なります。
必ず配合量と摂取目安量を確認し毎日正しく飲みましょう。また継続して摂ることも大切です。子供の場合は、サプリより食品で摂取させることを心掛けましょう。
オルニチンサプリを子供が摂取する場合の安全性は確保されていない
子供の成長に欠かせないといわれているオルニチンですが、小児に対する安全性についての十分な情報が見つかっていません。
もちろん食品で摂る場合は問題ありませんが、サプリのような濃縮物は安全性が確保されていないため摂らせないほうが良いでしょう。大人であれば、摂取目安量を守れば特に問題はありません。
子供の場合、成長や身長にはオルチニンだけでなく睡眠や運動、バランスの取れた食事などが重要になります。
サプリより食品で摂ることが求められていますから、安易にサプリで栄養を補わせないようにしてください。近年子供向けのサプリも増えていますが、なるべく食品で摂るようにしましょう。
まとめ
いかがでしたか?オルニチンは二日酔いや疲労回復だけでなく、子供の成長や身長にも影響を与えることが分かりました。
しかし子供に与える場合、サプリより食品の方が安全です。それは、サプリなどの濃縮物は安全性が確保されていないからです。特に小児へのサプリは避けるほうが良いと言えます。
子供でも、高校生のようにある程度大きくなっていればサプリで補うことも可能でしょう。とはいえ、子供にオルチニンを摂取させる場合はサプリより食品のほうが断然安心です。
ただ、食品でオルニチンを摂る場合、説明したとおり1日に必要な目安量を摂取することはできません。
もっともオルニチンが多いといわれているしじみでも100gに対し約10~15mg程度です。1日400mg~1000mgが必要なことを考えると、食品で十分なオルチニンを摂ることは難しいでしょう。
それでも、毎日摂取することでマイナスになることはありません。しじみ以外にも、マグロやヒラメ、チーズ、パンなどにもオルニチンが含まれています。
しじみやマグロ以外の食品に含まれるオルニチンは微量ですが、一切摂らないよりは役に立つでしょう。まずは意識してオルニチンを摂取してください。