子供の健やかな成長は、私たち親の共通の願いです。子供がすくすくと多くなっていくために、栄養豊かな食事を準備したり、睡眠や運動といった健康に役立つ習慣を意識して取り入れたりしていることでしょう。
成長に必要な物質の一つがメラトニンです。メラトニンは脳内で分泌されるホルモンの一種です。もしかしたら一度はこの言葉を聞いたことがあるという人も多いと思います。メラトニンは適正な睡眠をとるのに欠かせない物質だからです。
よく寝る子は育つと言われます。この言葉の通り、良い睡眠習慣は子供の成長に欠かせません。それに加えて身長を伸ばすことと、成長期の到来を遅らせることが関係していることが近年解明されました。
メラトニンとは?どのような働きをもつホルモンなのか?
成長期を遅らせるため、メラトニンをより多く分泌させることで身長が伸びるようになりますが、まずこのことを理解するにあたり、メラトニンについて知っておくことが大切です。メラトニンとはいったいどんな物質なのでしょうか。
メラトニンは、脳の松果体と呼ばれる場所で生成されるホルモンです。メラトニンの原料になるのがアミノ酸の一種であるトリプトファンです。トリプトファンが神経回路に取り込まれると、セロトニンが生産されます。
メラトニンは松果体で分泌されるホルモンであり、アミノ酸のトリプトファンからセロトニンを経由して合成される生理活性アミン誘導体である。
セロトニンが変化することでメラトニンが作り出されるのです。メラトニンが分泌されると、どのような現象が起きるのでしょうか。睡眠は脳や身体を休めるために必要で、この睡眠を促すのがメラトニンの役割です。
あくびをして眠くなる時には、実はこのメラトニンが大量に分泌されています。メラトニンが分泌されると睡眠を促すだけでなく、他の効果もあります。メラトニンは生殖器官の発達を抑える効果があります。
生殖器官の発達は性腺刺激ホルモンが分泌されることと関係があります。メラトニンはこのホルモンの分泌を抑える働きがあります。性腺刺激ホルモンが減少すると、成長ホルモンがさらに多く分泌されるため、身長が伸びるのです。
メラトニンは睡眠に関係するホルモン
メラトニンの効果についてはすでにお話しした通りですが、私たちの睡眠習慣に大きくかかわる物質です。メラトニンが分泌されることで、脳内はリラックスした状態になり、睡眠を誘います。逆にメラトニンが分泌されないと眠りは浅くなります。
メラトニンは子供の身長を伸ばすことと関係があります。メラトニンが分泌されることで、成長期の到来を遅らせ身長を伸ばすことができるようになります。なぜなら成長ホルモンが多く分泌されるため、背がぐんぐん伸びていくからです。
ところでメラトニンと成長ホルモンの関係をもう少し詳しく理解したいと思います。メラトニンが分泌されるためには、朝光を浴びることがどうしても必要です。光を浴びることでメラトニンの分泌が止まります。この過程はとても大切です。
時間ごとに分泌量が違う
朝光を浴びたのち、日が沈み夜を迎えると、今度は一気にメラトニンが放出されます。朝光をしっかり浴びないと、メラトニンは夜になっても分泌されなくなります。夜になってもなかなか眠れないのは、朝に光をしっかり浴びないからなのです。
夜になりメラトニンが分泌されることで眠りにつけるようになります。眠っている間の夜10時から午前2時ころまではメラトニンの分泌に加えて成長ホルモンが分泌されます。これが身長を大きくするもとになるのです。
明け方近くになるとメラトニンの分泌は収まり、今度はコルチゾールが分泌されます。コルチゾールは起床を助けるホルモンです。つまり睡眠中は3つのホルモンが分泌されていて、それぞれが適切に分泌されることで子供は成長していくのです。
メラトニンによる深い睡眠が子供の成長へもたらす効果
メラトニンと子供の身長を伸ばすことにはどんな関係があるのでしょうか。メラトニンが分泌されると性刺激ホルモンの分泌が減少します。これが意味するのは、成長期の到来を遅らせることができるということです。
メラトニンが分泌されることで、適切な睡眠周期が確保されます。睡眠中は深い眠りと浅い眠りの2種類がありますが、この二つのサイクルを適切に保つことで、成長ホルモンの分泌が活発になります。
身長が伸びるのは日中ではなく睡眠中です。寝ているうちに子供の身長はどんどん増えていきます。実はこの間に骨や軟骨、筋肉などを構成する細胞が作り出されているのです。
成長ホルモンによる身体の成長
メラトニンが身長を伸ばすのに必要なホルモンだということは、だんだん理解いただけるようになってきたと思います。成長期を遅らせることで子供の成長を促進させることができます。
ところで、私たちが睡眠をとっている間、体内では細胞が再生されています。細胞は常に入れ替わっていて、細胞が作り出されなくなると、生命活動は停止してしまいます。細胞が生産されるこの過程は寿命を迎えるまで続くものです。
ところで成長ホルモンが分泌されることと、細胞の生産には、どのような関係があるのでしょうか。メラトニンが分泌される睡眠中、脳自体の活動が停止する時間があります。これをレム睡眠と呼び、およそ90分に一回の割合で訪れます。
疲労回復・嫌な記憶を消しストレス解消
メラトニンにはさまざまな効果があります。その一つが適切な睡眠習慣を確立し、脳内を活性化させることです。私たちが睡眠をとっている間、脳は吸収した事柄を整理しています。脳内を整理することで、さらに多くの情報を取り入れることができます。
脳内の情報が整理されると、記憶領域に収められている情報のうち、いらない情報が削除されます。例えば学校で嫌な目に遭ったりした場合、脳内にその情報が書き込まれますが、情報が整理されることでこれらの嫌な記憶が削除されるのです。
脳内の嫌な記憶がいつまでも消えないのは、メラトニンの分泌が減少し、脳を休ませることができていないことが考えられます。ところで睡眠は脳以外に、身体を休める効果もあります。
成長期(思春期)の到来を遅らし成長期間の増加
何度か触れていますが、メラトニンの分泌は脳内を活性化させ、身体を休ませるだけでなく、細胞を作り替えるのに貢献します。この一連の動作は私たちが意識しなくても、自動的に体内で発生しています。
私たちの身体は幾十兆個もの細胞からできています。子供が大人に成長する過程では細胞の数が劇的に増加します。よく成長期に身長が伸びると勘違いする方がいますが、成長期(思春期)は大人の身体へと変化する時期です。
つまり大人の身体への変化が始まると、成長はほぼ止まります。例えば体毛が濃くなったり、声変わりしたり、乳房が大きくなったりするのは成長期と関係しています。この時点で背は伸びなくなっているのです。
【補足】メラトニンの有効性は確認されている
メラトニンの分泌と成長期を遅らせることによる身長の伸びについて話してきましたが、本当にそんなことってあるのだろうか?と思うかもしれません。脳内で起きていることをどうして知ることができるのだろう、と思うのは自然なことです。
メラトニンに関する研究は近年活発に行われています。特に現代社会ではストレスを抱える人が増加しています。生活上のストレスに加えて、環境の変化や、地球規模の変動など私たちの理解をはるかに超えた変化が生じているのです。
このような過程でメラトニンが果たす役割は重要性を増しています。メラトニンに関する医学的な研究により明らかになっているのは、メラトニンが効果的な睡眠を促すのに最適だということです。
メラトニンを阻害する原因
メラトニンは子供の身長を伸ばすのに必要な、成長期を遅らせる効果を発揮しますが、メラトニンの分泌量は安定しているわけではありません。メラトニンは時にさまざまな要因により分泌量が減少することもあります。
メラトニンの分泌が減少すれば、当然ながら子供たちの睡眠に影響ができます。特に最近ではスマートフォンやポータブルゲームデバイスを誰もが所有していますが、これらのデバイスがメラトニンの分泌を阻害することが分かっています。
社会がより便利になるというのは歓迎すべきことですが、人体はその変化になかなかついていくことができません。子供の成長を阻害しかねない要素には特に注意を払いたいものです。
パソコン・スマホ
メラトニンの分泌を阻害し、身長の伸びに欠かせない成長期を遅らせることに影響を与えるのが、パソコンやスマホなどの電子機器です。いったいどんな原因により、メラトニンの分泌が阻害されるのでしょうか。
これらの電子機器には液晶画面が必ずあります。液晶画面それ自体は発光しないため、液晶画面に光を当てて画面を明るくする必要があります。画面を明るくする際に必要になるのが発光体です。発光体とは、蛍光灯などの光を発するものを指します。
ブルーライトを夜浴びると、メラトニンの分泌が止まってしまいます。これは朝日光を浴びてメラトニンの分泌が止まるのと同じです。夜スマホを見るとメラトニンが出なくなってしまうので、睡眠不足に加えて、成長ホルモンの分泌が止まってしまうのです。
メラトニンに副作用はある?
メラトニンの摂取は子供たちの成長期の到来を遅らせる働きがあります。成長期が遅れることで成長ホルモンの分泌量が増加し、身長が伸びるからです。しかしながらメラトニンは万能とは言えません。やはり気になるのが副作用です。
これは後述しますが、基本的に食品からの摂取ではメラトニンによる副作用が発生することはほぼありません。気を付けたいのがサプリメントなどによるメラトニンの摂取です。サプリメントは気軽にメラトニンが取れる一方で、副作用の可能性もあります。
例えば睡眠障害や生殖機能の低下などがあります。極端に取りすぎるとかえって体に悪いので、適切な量を摂取することが大切です。また、粗悪品を摂取することによる薬害の危険もあるので気を付けたいものです。
食事摂取で危険な副作用がでた報告はない
メラトニンの摂取は子供の身長を伸ばすのに有効とされています。メラトニンが体内で作用することで成長期の到来が遅くなり、成長ホルモンの分泌が活発になるからです。では食事摂取についてはどうなのでしょうか。
食事摂取に関する情報を調べてみると、これまでメラトニンを含んだ食品を摂取したことによる健康被害は報告されていません。また何らかの副作用が発生したということもありませんでした。
もちろん食物アレルギーは気を付けなければいけないので、食品を選ぶ際にはアレルギーの有無を調べておく必要がありますが、それがない限りは特に食事摂取による副作用を心配する必要はないでしょう。
メラトニン配合のサプリは日本NG
メラトニンには子供の身長を伸ばす効果があることが分かりました。成長期の到来を遅らせることで成長ホルモンの分泌を促し、結果的に背が伸びていくわけです。メラトニンを子供に与えればすぐに効果が出るのではと期待してしまうでしょう。
もしそうだとしたら、メラトニンのサプリを子供に与えたらいいのでは?と思うものです。それなら簡単にメラトニンが摂取できますから、メラトニンを含んだ食品をわざわざ購入しなくても大丈夫になるので、負担はだいぶ軽くなるはずです。
ところが、サプリでのメラトニン摂取は、実は日本に限って不可能な話です。どうしてなのかというと、メラトニンのサプリは薬事法上日本国内では販売できないことになっているからなのです。
メラトニンサプリを摂取した場合の副作用
先ほどメラトニンサプリは日本では販売されていないことを説明しました。サプリがあれば成長期を遅らせることで子供の身長を伸ばせるかもしれないのに、なんで公式に認められていないのだろう、ともどかしく思えるかもしれません。
メラトニンは食品から摂取する場合は副作用はほとんどないのですが、サプリとなると状況は違ってきます。メラトニンはホルモンの一種であり、ホルモンは状況次第で人体に悪影響を及ぼすことがあるのです。
例えば女性ホルモンについて考えてみると、女性が生涯中に分泌される女性ホルモンの量はごくわずかで、実はティースプーン一杯程度しかありません。一生でこの量ですから、サプリで女性ホルモンを摂取したら、その影響は甚大になります。
効率的に摂取できる食品一覧
メラトニンを効率よく摂取できる食品を紹介していきます。
「スイートコーン」
成長期を遅らせることで身長を伸ばせるホルモンがメラトニンです。実はこのメラトニン、食品にもわずかですが含まれています。食品に含まれるメラトニンの量はサプリのように大量ではありません。つまり人体に害が出ない程度の量が含まれています。
その一つがスイートコーンです。子供たちもスイートコーンが大好きではないでしょうか。スイートコーンはビタミンやタンパク質、食物繊維を豊富に含んでいて、しかも抗酸化作用があるのです。
スイートコーンに含まれるメラトニンの量は0.14 μgです。決して多いとは言えませんが、スイートコーンを食べることで、メラトニンが摂取できるのはとてもうれしいことではありませんか?
「ショウガ」
メラトニンを含む別の食品がショウガです。ショウガは身体を温めるだけでなく、血流を改善する効果もあります。メラトニンも含んでいるので、成長期を遅らせる効果により身長が伸びる可能性が有ります。
ショウガにはショウガオールと呼ばれる栄養素が含まれています。ショウガは漢方薬の一つですが、これはショウガに含まれる抗酸化作用と殺菌作用を応用したものです。風邪にも効くので古くから重宝されてきました。
ショウガにはこのほかにもビタミンE,K,B群、ナイアシンやパンテトン酸、葉酸も含んでいます。栄養素をバランスよく含んでいるので健康維持に最適です。気になるメラトニンの量は100グラム当たり0.06 μgです。
「バナナ」
メラトニンを含む食品はほかにもあります。その一つがバナナです。バナナが好きなお子さんは多いと思います。バナナには繊維質のほかに、タンパク質やビタミンが豊富に含まれています。さらにカリウムなどの栄養素も含有されています。
バナナに含まれるメラトニンの量は100グラム当たり0.05 μgです。ショウガよりも少ないですが、バナナは2,3本食べられると思いますので、メラトニンの摂取量はさらに増えることになります。
メラトニンは成長期を遅らせることで身長を伸ばす効果が期待できます。バナナなら、安価で手に入りますから、お子さんの成長にとても役立つ食品だといえるでしょう。ヨーグルトなどにトッピングしてあげれば大喜びで食べてくれるはずです。
「身長が伸びやすい良い睡眠」を確保する方法
メラトニンと子供の身長の伸びとの関係について説明してきましたが、メラトニンには成長期を遅らせるという画期的な効果があるので、この効果を最大限に発揮させる方法を覚えておきたいものです。
ところでメラトニンの分泌とともに考えたいのが成長ホルモンの分泌です。成長ホルモンは身長を伸ばす効果があるホルモンです。成長ホルモンはどうしたらより多く分泌されるのでしょうか。そのカギを握るのが深い睡眠です。
深い睡眠をとるためには、子供たちが眠りやすい環境を作ることが大切です。例えば夜スマホをいじったり、テレビを見続けたりすると、覚醒してしまい眠くなくなってしまいます。眠る2時間前にはそのような電子機器を触らないようにしてください。
睡眠ホルモンメラトニンを作るたんぱく質
メラトニンは子供の身長を大きくするのに欠かせないホルモンです。手軽に取ることができれば、毎日の献立を考えるのももっと楽になるのにと思うかもしれません。メラトニンを含んだサプリは日本では販売されていないので仕方がないことです。
メラトニンには成長期を遅らせることにより、子供の成長を促進させる効果があることについては十分理解できたと思いますが、肝心なメラトニンを効果的に分泌させるためには、睡眠習慣の改善などが不可欠です。
ですから睡眠、食生活、運動をトータルでサポートしてあげる必要があることが分かります。となると、どうしても食生活を改善するのが最優先ということになってくるでしょう。メラトニンはタンパク質を多く含む食品をとるように心がけることが大切です。
もし食生活で不十分だと感じるなら、子供向けのサプリを活用してみることもできます。もちろんこれはメラトニンを分泌させる素となる栄養素が含まれるサプリのことです。
まとめ
子供がすくすくと大きくなってほしい、親であればだれもがそう思うことでしょう。身長がなかなか伸びなくて困っているという親の方も多いと思います。そこでどうしたらそれが改善できるのかを考えるわけですが、ポイントはメラトニンを摂ることでした。
メラトニンは成長期の到来を遅らせる効果があります。これにより成長ホルモンの分泌が促進され、成長していくわけです。メラトニンは睡眠を促進する効果もあります。ですからメラトニンをどうやって摂取するかが課題になるでしょう。
メラトニンを増やすためには、朝早く起きて日差しを浴びることと、夜できるだけ早めに休むことが関係していました。これをまずは実践してみましょう。それに加えて、タンパク質を多く含むバナナやショウガ、スイートコーンなどをとるようにします。