ターナー症候群とは染色体の異常によって起こる病気で、これは女性なら誰にでも引き起こる可能性があります。
症状は低身長以外にも人によって違ってきます。症状を知っておけば、治療と対策もスムーズに行くはずです。
そのため、今回はターナー症候群について原因や症状、治療法、検査方法について解説していきたいと思います。
ターナー症候群とは?
ターナー症候群とは染色体の完全欠損や部分的な欠損などの染色体異常が起こることによって、現れる女性だけの疾患です。
ターナー症候群以外にも「性腺形成不全」や「性腺機能不全」といった名称の呼び方をされるときもあります。
さまざまな身体的特徴や症状をターナー症候群の女性は持っています。しかし、ほとんどの人が治療をしっかりと行い、工夫しながら健康な生活を送っているのです。
どのような特徴があるの?
ターナー症候群の特徴は症状であり、ターナー症候群を示すものでもあります。ターナー症候群の報告者であるヘンリー・ターナーさんは以下の3つが特徴だと挙げています。
下記の特徴は「小児慢性特定疾病センター」と「婦人科疾患の診断・治療・管理」を参考にしています。
- 低身長
- 翼状頸(よくじょうけい)
- 外反肘(がいはんちゅう)
低身長
ターナー症候群の女性は治療を行わなければ、平均最終身長は通常の女性よりも約20cm低い状態で止まります。
通常の女性の平均身長(20歳以上)は154cmですので、ターナー症候群の女性は134cm前後の身長となってしまうのです。
翼状頸(よくじょうけい)
翼状頸とは、横の首の皮膚が過剰にたるむことをいいます。人によっては耳の真下辺りから、肩にかけて三角形の皮膚が張っている場合もあります。
外反肘(がいはんちゅう)
通常、肘関節を伸ばした際に正面から見てみると10度前後、外側に「く」の字に曲がるものです。
しかし、外反肘の場合だと10度以上に曲がります。放置したまま、成人すると人によっては小指に痺れや麻痺が生じることもあります。
何が原因で発症するの?
通常の女性は2つの染色体(46.XX)を持っているのですが、ターナー症候群の定義によるとターナー症候群はX染色体の数が一つ少ない(45.X)になっているのです。
通常の女性は(46.XX)(46.XX)(46.XX)と、ターナー症候群なら(45.X)(45.X)(45.X)と同じものが続いていくのですが、なかには(45.X)(47.XXX)(46.XX)とバラバラの染色体でターナー症候群になることもあります。
これがモザイク型です。
ターナー症候群は染色体異常による欠損によって起こることは判明していますが、残念なことに具体的な原因は分かっていません。
難病情報センターによれば原因だと現段階で考えられているのが「受精し、細胞分裂が行われる過程での染色体異常」「X染色体の一部または全体の増減によって、遺伝子発現量の低下」の2つが原因だと考えられています。
発生頻度は?予防法はある?
ターナー症候群の発生頻度は「ターナー症候群の定義」によると、女の子1000人から1500人に1人発生するといわれています。
98%の赤ちゃんは出産できず、自然流産となってしまうことがほとんどです。そのため、ほとんどが自然流産となり、出産ができるのは奇跡ともいえます。
発生頻度が割りと高いターナー症候群ですが、母親が健康であっても一定の割合で発生するといわれています。そのため、残念ですが「こうすれば予防ができる」「あれをすれば予防ができる」といった予防法はありません。
症状はどれぐらいあるの?
ターナー症候群の症状は以下になります。症状は「ターナー症候群の定義」と「Turner 症候群」を参考にしています。
- 低身長
- 翼状頸(よくじょうけい)
- 外反肘(がいはんちゅう)
- 口角が下がっている
- 後ろ髪の生え際が低い
- 大動脈狭窄(だいどうみゃくきょうさくしゅ)
- 幅広い胸
- 性腺機能低下または第二次性徴がこない(乳房が発達しない、はじめての月経が来ないなど)
- 爪の形成不全
- 手足のリンパ性浮腫
ターナー症候群は上記症状がすべて出るわけではありません。
人によっては低身長、外反肘、爪の形成不全の3つの症状がでる。別の人では低身長、翼状頸、手足のリンパ性浮腫の3つがでるなど、人によって症状は違ってきます。
ただ、ターナー症候群は、ほぼ100%の確率で「低身長」の症状が見られます。次に多いのが性腺機能低下・原発無月経です。
どのような検査が行われる?
小学校入学時に身長が100cmに満たしていない女の子はターナー症候群かどうか判断するために「染色体検査」が行われます。染色体検査とは先天異常が疑われるときに行われるものです。
これから紹介する検査については「染色体遺伝子検査の分かりやすい説明ガイドライン」と「染色体遺伝子検査の分かりやすい説明ガイドライン2」を参考にしています。
さらに詳しく分けると以下の6つに分かれます
- 多発奇形、発達遅滞、成長障害があり染色体異常が疑われるとき
- 染色体異常を持っている人はいないか
- 生殖障害の原因
- 出生前診断
- 周産期の管理
- 流産・死産の原因
染色体検査とは?
染色体検査とは遺伝子検査と違い、多くの遺伝子情報を持った染色体に異常はないか調べるために行うものです。
検査方法は以下の6つがあります。
- 末梢血
- 羊水細胞
- 流産・死産絨毛
- 骨髄血
- リンパ節
- 腫瘍組織
ターナー症候群の検査は上記6つのうち「末梢血」です。検査は静脈の血を少しだけ採取し、末梢血の中にあるリンパ球を分析します。
細胞分裂に異常がないか調べるために、専用の培養液で72時間培養して分析が行われます。
どうやって治療するの?
ターナー症候群は先天的な病気による染色体異常のため、治療を行うことによって完治はできません。ただ、治療を続けていれば最初は他の子供よりも小さめではありますが、症状は改善され身長も他の子供たちと変わりなく伸びていくので安心してください。
ターナー症候群による低身長の治療は成長ホルモンの投与が行われます。成長ホルモンの投与方法は自宅で注射を打っておこないます。
子供に注射を刺すのは気が引けるかと思いますが、最近の注射は鉛筆型になっており、痛みはしますがチクッとする程度なので大丈夫です。
成長ホルモン投与の治療によって「12歳~15歳まで」に「身長が140㎝に達した」タイミングで、少量のエストロゲン(女性ホルモン)治療が開始されます。
ターナー症候群は骨年齢の成長速度がゆっくりなため、骨の量の低下を防ぐためにエストロゲン治療を行うのです。そうすることによって骨折などしにくい体になっていきます。
また、骨を丈夫にすることによって身長に対しても効果が出始め、エストロゲン治療を12歳前後の段階で始めると、成人身長は147.8cm±4.7cmになったと報告されています。
ターナー症候群におけるエストロゲン補充療法ガイドラインによるとエストロゲン治療はエストロゲン製剤(エストラジオール)という薬を「筋肉注射」「皮膚に貼り付け」「経口投与」の3つのうち、どれかで行います。日本小児内分泌学会では以下の手順を推奨しています。
1)エストラジオール貼付剤(エストラーナテープ0.72mg/枚)
1/8枚 2日ごとに貼り替え 6か月間~12か月
1/4 枚 2日ごとに貼り替え 6か月間~12か月
1/2 枚 2日ごとに貼り替え 6か月間~12か月
1枚 2日ごとに貼り替え 6か月間
2)結合型エストロゲン(プレマリン 0.625mg/錠)
1/10 錠 1日 1回経口 6か月間~12か月
1/4 錠 1日 1回経口 6か月間~12か月
1/2 錠 1日 1回経口 6か月間~12か月
1錠 1日 1回経口 6か月間
皮膚への貼り付けで行う”貼付剤“は通常、下腹部かお尻に貼ります。
もし、子供がターナー症候群だった場合、いつも治療に我慢していることに対してご褒美でもあげてください。ほんの少しでもストレスを感じているかもしれませんので。
治療による副作用はないの?
上記で推奨されている結合型エストロゲンとエストラジオール貼付剤には副作用があるか心配ですよね。また、体が小さい女の子だから余計に心配だと思います。
そこで副作用があるかどうか調べてきました。残念なことに難病ともいえる治療なので仕方ないともいえますが、副作用はでる可能性があるみたいです。主な副作用は以下になります。
- 頭痛、めまい
- 吐き気や腹痛
- 乳房が張る、痛み、不快感
- 子宮から出血
- 発疹、蕁麻疹(じんましん)
- 貼った、または塗った部位が赤くなる、かゆくなるなどの皮膚炎を起こす
絶対に注意してほしい副作用
めったに起きることはありませんが「血栓症」という重大な副作用を起こす可能性もあります。
上記の症状が現れたらすぐに投与、貼り付けなら剥がして中止してください。その後すぐに医師に診てもらいましょう。次の日とかではなく、命に関わるかもしれないのでなるべく早く診てもらってください。
まとめ
ターナー症候群は命に関わる病気ではありませんが、低身長や女性ホルモンの不足といった症状があるなど難病ともいえる病気です。
染色体の異常によって起こる病気のため、誰にでも起こる可能性はあります。そのため、しっかりと知識はつけておいたほうがいいでしょう。
また、お子さんがターナー症候群だった場合、どのような病気なのかわかりやすく伝えてあげましょう。
ターナー症候群の胎児は約98%が自然流産してしまいます。そのような、大変な状況の中から生まれてきたということは忘れないであげてください。ある意味選ばれてきた女の子ともいえるのですから。
【その他の低身長症一覧】 | |
---|---|
病名 | 詳細 |
成長ホルモン分泌不全低身長症 | 詳しくはこちら |
軟骨異栄養症 | 詳しくはこちら |
慢性腎臓病 | 詳しくはこちら |
SGA性低身長症 | 詳しくはこちら |
先天性甲状腺機能低下症(クレチン症) | 詳しくはこちら |