子供の成長には適度な運動が必要です。運動は全身の血行を高めるので、単純に健康に良いですし、子供の肥満予防にもなります。また成長ホルモンが分泌されることで、身長や体格を大きくするのにも役立つでしょう。
筋トレは子供にも有効な運動方法です。自重トレーニングなら器具や場所をとることもないので、自宅や学校で手軽にできます。しかし、筋トレの知識がないとどんなトレーニングをすればいいかわからないかもしれません。
成長期途中の子供が筋トレを行うと身長に悪影響を及ぼすという説がありますが、科学的根拠はないので、そこまで気にする必要はありません。
子供におすすめ筋トレ方法5選
子供におすすめの筋トレ方法は腕立て伏せや腹筋、スクワットなど、全部で5つあります。これらは非常にポピュラーな筋トレ方法なので、高い運動効果が期待できますし、子供でも実践しやすいです。
保護者の方も学生時代などで経験したことがあるでしょう。最初は少ない回数しかできないかもしれませんが、何度か続けていれば徐々に回数を増やしていくことができます。そうなれば子供のモチベーションも高まるはずです。
腕立て伏せ
腕立て伏せはプッシュアップとも呼称される筋トレ方法です。主に鍛えられる部位は胸の筋肉ですが、全身を支えることから、様々な部位が副次的に鍛えられます。
やり方は両手を肩幅より広くとり、床につかせます。足のつま先はそろえて床につかせ、両手と足が3点になるようにしましょう。頭から足先までをまっすぐ維持したまま、肘を曲げ、胸の位置を下げます。
ある程度まで下げたら今度は肘を伸ばしていき、胸の位置を上げます。これを繰り返せばOKです。
膝をつけると上半身にかかる負荷が下がり、運動に慣れていない子供でも簡単にできるようになります。膝をつける腕立て伏せに慣れてきたら、本来の腕立て伏せにチャレンジしてみるといいでしょう。
どれくらいの回数行えばいいかというと、1セットにつき10回前後が理想です。ただし、余裕があるのに10回前後でやめては意味がないので、余裕があるかぎり続けてください。
セット数は最低3セットです。やる気があれば、4セット、5セットと増やしていきましょう。普通の腕立て伏せでは物足りなくなってきたら、足を土台に乗せるなどして負荷を上げるといいでしょう。
腹筋
腹筋は上体起こしともいう筋トレ方法です。その名の通り、上体を起こすことで腹筋が鍛えられるもので、学校の体育や部活動の練習などにも取り入れられています。
やり方は仰向けに寝て、下半身を動かさずに上半身を起こすだけです。膝は立てるのが一般的ですが、伸ばして行っても構いません。
手は後頭部に置いてもいいですし、胸の前で交差させてもいいですが、後頭部に置いた方が首を支えられるので、負荷が腹筋にいきやすいです。
上半身を起こす時は背骨を丸めるようにしてください。背骨を伸ばしたまま起き上がろうとすると腰に負担がかかります。おへそのあたりに頭を持っていくことをイメージするといいでしょう。
最近はクランチという腹筋を鍛える筋トレ方法が注目されています。これは足を床から離して、股関節と膝関節を90度にして上体を起こすというものです。普通の上体起こしが合わなかったらこちらも試してみてください。
スクワット
スクワットは大腿部からお尻にかけての部位を鍛えられる筋トレ方法です。この部位には全身の7割程度の筋肉が存在しており、ここを鍛えることで筋肉量を効率よく増やすことができます。
筋肉量が増えると、基礎代謝が向上するので、ダイエットでもおすすめされることが多いです。やり方は足を肩幅以上に開き、お尻を落とすだけです。この時、背中はまっすぐ伸ばしておくことが重要です。
スクワットは簡単にいえば立ってしゃがむだけの運動なので、自重トレーニングの中でも省スペースでできます。また床に寝る必要がないことから、外でも気軽にできます。
手は頭に置いてもいいですし、胸の前で交差させてもいいです。このように固定させることで、腕がぶらぶらして邪魔になるのを防ぎます。
スクワットは無理なフォームでやると膝に負担がかかるので、うまく膝に負担がかからないように調整する必要があります。一般的には膝はつま先よりも前に出さないようにした方がいいと言われていますが、必ずしもこのやり方にならう必要はありません。
背筋
背筋は背中の下部を鍛えられる筋トレ方法です。背筋は腹筋の逆側にある筋肉ですが、それだけに腹筋と同じくらい鍛えていた方がバランスがとれて理想的です。また背筋を鍛えると背筋を伸ばしやすくなり、姿勢が良くなります。
やり方は上体起こしの逆の要領で、床にうつぶせになり、下半身を動かさずに上半身を起こすだけです。足を他人に押さえてもらうと下半身をがっちり固定できるので、やりやすくなります。
正式には背筋はバックエクステンションと言います。バックエクステンションは基本的に背中の下部しか鍛えられないので、なるべく背中の上部を鍛えられる筋トレも他に行った方がいいです。
ただし、背中の上部は器具を使わなければ鍛えるのが難しいので、気軽にはできないかもしれません。
近くに鉄棒がある公園があれば、そこで懸垂するのがおすすめです。懸垂は背中の外側の筋肉を使う運動で、バックエクステンションでは鍛えられないところが鍛えられます。
ストレッチ
筋トレ方法ではありませんが、ストレッチは子供にとって重要な運動です。身体が硬いと可動域が狭くなり、筋トレの効果を半減させてしまうので、習慣的にストレッチをしてほぐす必要があります。
ストレッチは朝・昼・夜の3回行うのが理想ですが、さすがに毎日学校のある日も含めてこれを行うのは困難です。
そのため、毎日お風呂上りに1回行うことを意識するといいでしょう。というのも、お風呂上りは筋肉や関節がある程度ほぐれていてストレッチがしやすいからです。もちろん1日3回できるならそれに越したことはありません。
ストレッチのやり方は幅広くあります。たとえば、足を伸ばして手を足先に向かって伸ばしたり、足を広げて座って上体を倒したり、膝を曲げて仰向けになったりといった方法があります。
それぞれ伸ばせる部位が異なるので、ほぐしたい部位を伸ばせるストレッチを選ぶといいでしょう。ストレッチは20秒程度行うのが基本です。これ以下の時間だとすぐにまた筋肉や関節が硬くなってしまいます。
痛みを感じるほど伸ばす必要はなく、気持ちいいと思うくらいでOKです。それくらいのストレッチでも続けていれば可動域が広がっていきます。
子供の体幹トレーニングもおすすめ
体幹トレーニングはサッカー選手である長友佑都選手が行っているトレーニングとして有名です。こちらも筋トレ方法の1つであり、子供におすすめできる運動となっています。
子供のうちから体幹トレーニングを行っておくと、身体づくりに役立ちます。身体の土台ができるので、運動能力が高くなり、どのようなスポーツでも機敏に動けるようになるのです。
また体勢を崩した時に転ばないようにバランスを取ったり、何か物が飛んできた時によけたりするなど、危機回避能力の向上も期待できます。
また体幹トレーニングは子供の姿勢を良くするのにも有効です。姿勢が良くなると見た目が格好良くなる上に、内臓へ負担がかかりにくくなります。
体幹トレーニングとは?子供がする意味は?
体幹トレーニングは肩や胴体、背中、太ももにあるインナーマッスルを鍛えるトレーニング方法を指します。インナーマッスルというのは身体の奥にある表面から見えない部分にある筋肉のことです。
体幹トレーニングは様々なスポーツ選手、トレーナーが実践しています。たとえば、長友選手はプロスポーツ選手としては小柄ですが、世界的な活躍を見せています。
それには体幹トレーニングで鍛えられたインナーマッスルが、サッカーに必要なフィジカルの安定感を生んでいることが関わっているとされているのです。
またスポーツをするわけではなくても、体幹トレーニングは子供の健康な発育に良い影響を与え、集中力を高めるのにも役立つので、どんな子供にもメリットがあります。
子供でも簡単にできる体幹トレーニング
子供におすすめの体幹トレーニングは「ダイアゴナル」です。これは子供でも簡単に、しかも楽しく実践できる方法となります。やり方は手足を伸ばして四つん這いになり、片側の手とその逆側の足をゆっくり上げていくだけです。
手足を上げたらすぐに下ろすのではなく、できるだけそのままの状態を維持します。最初はほとんど一瞬しかできませんが、インナーマッスルが鍛えられてくると、維持できる時間がだんだん増えます。
「ダイアゴナル」は見た目が面白いポーズになるため、小学生くらいの子供なら興味を引きやすいはずです。家族一緒に行えば自然に生活に取り入れられるので、保護者の方も健康のために実践するといいでしょう。
ただし、「ダイアゴナル」をはじめとする体幹トレーニングを行う際には注意点もあります。まずいきなり身体に負荷をかけると怪我の恐れがあるので、準備運動やストレッチを行う必要があります。
それから無理のない力・フォームで行うこと、呼吸を意識しながら行うことなども重要なポイントです。
子供の筋トレは何歳からはじめればいい?
現代の子供は昔と比べると運動能力が下がり気味ですが、その原因には運動不足だけでなく、「低年齢における過度な運動」も関わっています。
たとえば、サッカーや野球などのメジャースポーツでは低年齢のうちから本格的に取り組む子供が一定数います。また練習内容も高度であり、時間も長く行いやすいです。
しかし、まだ身体が未熟な頃に過度な運動をすると、特有の障害・疾病を招くことがわかっています。
サッカーなら膝に痛みや腫れが生じるオスグッド病、野球なら関節の障害、バレーボールなら腰椎分離症のリスクがあります。子供の筋トレは何歳から始めてもOK(乳幼児を除く)ですが、量と質は調整が必須です。
子供が筋トレする上での注意点
子供の健康や成長促進を考えれば、子供に筋トレをさせるメリットに疑いの余地はありませんが、「筋トレは子供には危険なもの」というイメージを持っている大人は多くいます。
もちろん過度な運動は特有の障害・疾病を招くので、リスク自体は存在するものの、いくつかの注意点を守っていれば筋トレの「危険性」はほぼ完全に取り除くことが可能です。
たとえば、「骨にかかる負荷を減らすこと」、「子供の発達レベルに合わせること」、「栄養摂取に気をつけること」などの注意点があげられます。もし子供に比較的ハードなトレーニングを行わせる予定なら、これらは特に意識しておきたいポイントです。
骨にかかる負荷を減らす
成長途中の子供はまだ骨の形成も未熟であり、大きな負担に耐えることができません。特に骨の末端に位置する軟骨は傷つきやすく、筋トレの仕方によってはダメージを与えてしまいます。
また軟骨部分は成長期の間に縦に伸び、骨に置き換わって身長を伸ばす役割を持っています。軟骨にダメージが行くことでこのメカニズムが正常に働かなかった場合、骨格形成に障害が起こる可能性があるでしょう。
骨格形成を終えた成人でもオーバートレーニングになることはあるだけに、子供にはなおさら気をつかう必要があります。
ではどのようにして骨への負荷を減らせばいいかというと、ジャンプを繰り返すような運動を避けることがあげられます。
たとえば、昔はうさぎ飛びは下半身を鍛える代表的なトレーニングでしたが、今は膝関節への負担が危険視されているのです。当然子供にとっても適した運動とはいえないので、このような運動をさせてはいけません。
基本は自重トレーニングがおすすめです。自重トレーニングは重りを使わずに体重の重さで鍛える筋トレ方法であり、重りを使う荷重トレーニングよりも骨への負荷が少なくなります。
子供の発達レベルに合わせて行う
子供は年齢によって発達の仕方が異なります。たとえば、小学六年生と中学三年生では身体の大きさが全然違いますし、こなせるトレーニングのレベルも変わります。そのため、小学六年生の時と中学三年生の時の筋トレ内容が同じでは不自然です。
また子供の個人差も考慮する必要があります。極端な話、中学生の子供によっては小学生くらいの体格であることもありえます。そういった子供に中学生レベルのトレーニングをさせるのは負担が大きいので、避けなければなりません。
自重トレーニングは自分の体重が負荷になるので、体重の重い=発達している子供ほど負荷が高まり、自然に子供の発達レベルに調整されます。ただし、肥満がちな子供は別です。
肥満の子供は脂肪の分、体重のわりに骨格や筋肉が未熟なので、自重トレーニングでも負荷が大きすぎる可能性があります。
そのため、まずは脂肪を落とすか、自重トレーニング中でも負荷の小さいもの(膝立ち腕立て伏せなど)を実践するのがいいでしょう。
また水泳は骨や関節への負担が非常に少ない運動方法なので、どのような発達レベル、体型の子供にも最適です。
栄養摂取に気をつける
運動を行うとそのぶん栄養素を消費します。特に成長期の子供は何もしなくても多くの栄養素を必要とするため、相応の栄養を摂取しなければいけません。
栄養をろくに摂らないまま運動すると身体に力が入りませんし、貧血や怪我の原因にもなります。また成長に必要な栄養素を消費することで、極端に痩せたり、成長阻害を招いたりするリスクもあるでしょう。
運動前に摂取しておきたいのは主食です。いわゆる白米やパン、麺などの炭水化物で、これらからは身体を動かすためのエネルギー源が摂れます。
直前の食事から時間が経っている場合は手軽に食べられるおにぎりやバナナなどでエネルギーを補給するといいでしょう。
思春期の子供は自分の体型が気になってダイエットをしたがることがあります。その際、近年は糖質(炭水化物に含まれる糖分)制限によるダイエットが盛んなので、炭水化物を食べたがらないこともあるでしょう。
しかし、炭水化物を極端に抜くと体調悪化を招くので、よくありません。もちろん炭水化物だけを摂っていればいいというわけではなく、肉や野菜、果物、乳製品など、様々な食品からバランスよく栄養素を摂取することが大切です。
そのためには保護者の方が意識して毎日の献立を考えること、子供が好き嫌いや偏食を克服することなど、家族みんなの努力が必要となります。
何歳から筋トレをする必要がある?
現代は昔と比べると生活環境が大きく違います。そしてその環境の変化は子供が運動する機会を少なくさせているのが現状です。
たとえば、ゲームや漫画などの身体を動かさない娯楽の普及、公園や空き地の減少、交通機関の発達などが子供の運動機会を奪っています。このことは成人にも言えることです。
そこで日本では成人向けに健康のための運動基準や指針が定められており、国民が生活に運動をとり入れることを推進しています。
運動能力が低い子供が増加したことで、全体の能力平均は落ちてきています。そのため、学校の体力テストで平均以上の成績をとれなくなった歳から筋トレを始めるのも一つの目安です。
また現代の子供は遊びとしての運動・スポーツをあまり経験していないことも問題視されています。遊びとしての運動・スポーツは身体を動かすことだけでなく、他者とのコミュニケーションという意味でも役立つので、社会性を養う良い機会になります。
なかなか自発的に子供が運動しないという場合は運動部の部活動を行わせる方法が有効です。部活動なら自然に運動できますし、他の部員とコミュケーションをとることもできます。
運動をしたあとには栄養補給が欠かせない
運動後は体に蓄積していたエネルギーが空になっている上に、筋肉の細胞も傷ついている状態です。また血中の栄養濃度が低く、汗と一緒にミネラル分も流れ出ています。このように疲労した体は栄養補給でケアしなければいけません。
栄養補給を怠ると疲労した筋肉がつりやすくなったり、翌日になっても疲れが取れなかったりします。なるべく摂りたい栄養はたんぱく質です。たんぱく質は全身の細胞の元になるので、傷ついた筋肉の細胞も修復してくれます。
修復された筋肉は以前よりも強くなるため、筋肉をつける栄養素としても重要です。たんぱく質が摂れる食品は肉や魚、大豆製品、乳製品などです。
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質の2種類があり、たとえば大豆製品は植物由来なので、植物性たんぱく質が含まれています。
どちらでもたんぱく質には変わりありませんが、大豆には女性ホルモンとして働く成分が含まれているため、(特に男子の場合)こればかりを食べるのはNGです。
成長途中の栄養素は多い!過不足が心配な方は子供用サプリを活用
本来は食事から栄養素を摂るべきなのですが、成長期の子供は種類・量ともに非常に多くの栄養が必要なため、食事では摂りきれないこともあります。もし栄養バランスに過不足が起こることが心配であれば、子供用サプリを役立てるのがおすすめです。
子供用サプリには普通の食事では子供がなかなか摂取できない栄養素が多量に含まれているので、普段の栄養不足を簡単に補うことができます。
たとえば、普段の食事で小魚や乳製品があまり摂れていなければ、カルシウムの入ったサプリを飲ませることで、カルシウム不足が解決できるのです。
栄養素の最適なバランスは厚生労働省が公表しているので、子供用サプリを買う時はそちらを参考にしてください。基本的に12~14歳が必要栄養量のピークで、それ以降はだんだん下がっていきます。
まとめ
子供におすすめの筋トレ方法は自重トレーニングなら腕立て伏せ、腹筋、スクワット、背筋の4つです。それぞれ自宅や学校などで器具を使わずに行うことができます。
またストレッチも取り入れると筋肉や関節がほぐれるので、筋トレの効果向上や怪我防止に役立ちます。それから体幹トレーニングもおすすめです。
体幹トレーニングは運動能力向上やバランス感覚を養うのに向く、インナーマッスルを鍛えるトレーニング方法です。
「筋トレは何歳から」と具体的に決まっているわけではありませんが、年齢に合わせて運動量や質を調整する必要があります。もちろん乳幼児が筋トレを行うわけにはいかないので、ある程度身体ができてから筋トレを行うことを目安にしてください。
子供が筋トレを行う場合は骨・関節への負荷を減らすこと、子供の発達に合わせること、栄養摂取を怠らないことを意識しましょう。
特に運動しただけ栄養は摂らなければいけないので、食事からしっかり摂りつつ、足りないぶんは子供用サプリで補うようにするといいでしょう。