小学校も高学年に上がると、多くの子どもが成長期を迎えます。成長期といえば、生まれてすぐを除けば人生で最も身長が伸びる時期です。ところが、そんな大切な時期にわが子の身長が思うように伸びないと悩む親御さんはたくさんいます。
小中学生のうちは身長が低くても、大人になるころには人並み以上の身長になる人はたくさんいます。しかし、周りの友達の背がぐんぐん伸びているなか、自分の子どもだけ低いままだと心配になるのももっともです。
何か原因があるのか、病気ではないのか、改善法は?など気になることはいろいろあります。そこで、成長期と身長の伸びについて詳しく見ていきながら、身長が伸びない原因を探っていきましょう。
身長が伸びなくなる時期は何歳?
身長が劇的に伸びる時期は生涯に2回訪れます。1回目は生後すぐから1歳ごろまでです。生まれてすぐの赤ちゃんは身長50センチほどですが、1年後には1.5倍近くの身長に成長します。
3~4歳から成長期が始まるまでの成長率は緩やかで、1年に5~6センチぐらいでしょう。ところが、成長期を迎えると、またすごいペースで身長が伸び始めます。
1年で10センチ以上伸びる子も珍しくありません。このピーク時を成長スパート期とも言いますが、何歳で迎えるかは子どもによって大きな差があり、その時期の違いで身長が伸びなくなる年齢もまったく異なります。
一般的には、男の子で12~13歳、女の子はもう少し早くて10~11歳が身長が伸びるピークです。成長期が終わるまでに20~30センチ伸びる人が多いですが、成長期が終わってしまうとそれ以上はほとんど伸びることがありません。
身長が伸びなくなる原因
成長期を迎えた子どもは、成長スパートが始まるとそれまでよりも急激なペースで身長が伸びていきます。しかし、いつまでも身長が伸び続けるわけではなく、成長期が終わって大人の体が完成するころにはほとんどストップするものです。
ですので、成長期の間にどれだけ身長が伸びるかによって大人になった時の最終身長が決まります。
一般的には、成長期に男の子で25センチ、女の子で22センチほど身長が伸びるとされていますが、さまざまな要因で20センチも伸びない人も少なくありません。
では、成長期に身長が十分に伸びないことにはどんな要因があるのでしょうか。内的要因、外的要因をそれぞれ見ていきましょう。
内的要因
思春期が早い(早熟)
思春期が早い、つまり体の成熟が早いほど、身長の伸びが止まるのも早いです。これは不思議なことではありません。思春期とは大人の体に変化する時期ですので、思春期が早く訪れるほど大人の体が完成するのも早くなります。
大人の体が出来上がって以降、自然に身長が伸びることはほとんどないため、思春期を早く迎えると身長の伸びがストップするのも早くなるのです。
実際、男の子の場合、声変わり以降は身長があまり伸びません。女の子は初潮を迎えて以降、平均6センチほどしか身長が伸びないというデータもあります。
思春期は成長スパート期でもありますが、肉体に性成熟が見られ始めると、身長が伸びなくなる日も近いことを知っておきましょう。日本人に比べて欧米人は身長が高いですが、これも思春期を迎える時期と関係しています。
成長ホルモンの分泌が少ない
標準身長より極端に低い場合を医学的に低身長と定義します。その定義には標準偏差という指標があって、人よりちょっと背が低いというだけでは低身長になりません。
6歳の男の子であれば、平均身長が113.3センチですので、低身長に定義されるのは103.8センチ以下の場合のみであり、100人中2人という低い割合です。
医学的に低身長に分類されるとしても、その9割は両親からの遺伝や体質などが要因で病気ではありません。しかし、その残り1割のなかには、成長ホルモンの分泌が少ない成長ホルモン分泌不全性低身長症という病気が含まれます。
ホルモンの司令塔である脳下垂体から十分な成長ホルモンが分泌されないため、あまり身長が伸びずに極端に低身長になるという病気です。
外的要因
栄養不足(偏食,好き嫌いが多い)
成長期にしっかり身長を伸ばすには、体づくりの材料である栄養素をしっかり摂取することが前提です。
新しい骨を作る材料となるたんぱく質、骨を強くするカルシウムなど身長を伸ばすのに良いとされる栄養素はいくつかありますが、これ以外にもさまざまなビタミンやミネラルを満遍なく摂取することが必要です。
いろんな栄養素をバランスよく摂取することが大切なので、たとえば「牛乳をたくさん飲めば大丈夫」というように特定の栄養素ばかり摂取しても意味はありません。
成長期には非常にたくさんの栄養素が必要なので、たんぱく質やカルシウムなど身長を伸ばすのに良いとされる栄養素だけでなく、好き嫌いなく何でも食べることを重視しましょう。
肥満
好き嫌いなく何でも食べて必要な栄養素をしっかり摂ることが、成長期に身長を伸ばすのに大切ではありますが、だからといって食べ過ぎて肥満になってしまっては逆効果です。むしろ、肥満が身長の伸びをストップさせる原因と言ってもよいでしょう。
肥満の子どもは、ふつうの子より多くの脂肪細胞を持っています。脂肪細胞からはレプチンというホルモンが分泌されるのですが、このホルモンには食欲や代謝を調節する働きがあります。
肥満により体内にレプチンというホルモンが増えると、そうでない子より思春期を迎えるのが早くなり、性的な面でも早く成熟していきます。思春期が早いほど身長の伸びが止まるのも早いことはお伝えした通りです。
太っている子どもは幼いうちこそ平均より身長が高いものですが、思春期を早く迎えてしまうため、中学になるころにはほかの子に追い抜かれることが多いです。
睡眠不足
良質な睡眠は成長期の子どもにとって非常に重要です。睡眠不足は身長が伸びない最大の原因と言ってもよいでしょう。
成長ホルモンは日中にも分泌されますが、睡眠中の夜10時ごろから夜中の2時ごろにかけてが最も活発に分泌される時間帯です。成長ホルモンの作用で、骨の両端にある軟骨組織の細胞が分裂・増殖して新しい骨が作られます。
睡眠が足りないとこの活動が不十分になるため、成長期でも本来伸びるべきほどに身長が伸びないのです。成長期にしっかり身長を伸ばすのであれば、1日10時間は睡眠時間を確保しましょう。
最近の子どもの睡眠時間は減少傾向にあり、実際に10時間以上眠っている子どもはわずか数%しかいません。高学年で最低9時間半、中学生でもできれば9時間以上の睡眠時間を確保することが理想です。
過度なスポーツ&運動
成長期の子どもにとって適度な運動は欠かせません。日中にしっかり体を動かすことで食欲も湧き、夜もぐっすり眠れます。良質な睡眠が成長ホルモンの分泌を活発化することはお伝えした通りです。
しかし、運動のしすぎもよくありません。小学校高学年にもなるとチームに加入して、本格的にスポーツに取り組むようになる子どもも多いですが、過度な運動は子どもの成長にかえって害になります。
身長を伸ばすには、骨に縦の方向への圧力がかかる運動が適しています。しかし、身長を伸ばす目的でやりたくもないバレーボールやバスケットボールに取り組ませることはよくありません。
無理やりやらせてもストレスになるばかりで、ストレスは成長ホルモンの分泌を妨げてしまうのです。また、骨に過度に圧力がかかると逆に伸びにくくなるので、負荷の高過ぎる運動は成長期には避けた方がよいでしょう。
親からの過剰なプレッシャー&ストレス
成長期にしっかり身長を伸ばすには、栄養バランスの取れた食事、良質で十分な睡眠、適度な運動の三拍子が揃っていることが大切です。
最近の子どもは運動不足が多く、それでいて間食が多いため、肥満の傾向があります。また、夜更かしの癖が付いていつも寝不足という子どもも多いです。
親としては、身長を伸ばすだけでなく子どもの健康のためにも子どもの生活習慣をしっかり管理しなければなりません。ただし、子どもの気持ちを無視して、親が過度に干渉するのも問題です。
親からの過剰なプレッシャーは子どもにとって大きなストレスになります。ストレスは子どもの成長にとって悪影響にしかなりません。過度なストレスにより成長ホルモンの分泌が妨げられることは科学的にも証明されています。
子どもの身長が思うように伸びないと親として気になるのは自然なことです。しかし、親があまりにも気にし過ぎると、それがかえって有害な影響を与えることも覚えておきましょう。
身長が伸びない病気(低身長症)の可能性
成長期に身長が十分伸びず、大人になっても身長が低いとしても、それだけで健康的に問題とは言えません。ただ、身長が人より極端に低い場合は、病気など何らかの要因が作用していることもあります。
身長が低いことはコンプレックスになるものの、それだけでは病気とまで考えられることは少ないので、早めに対処すれば改善できたかもしれないことも手遅れになってしまう可能性もあります。
身長の伸びが止まる前に対策を考えることも重要でしょう。
低身長の分類に入るとしても9割方は病気とは関係ありません。
しかし、成長ホルモン分泌不全性低身長症などの病気である場合も1割の可能性に残されていますから、周りの子より明らかに成長が遅い場合はお医者さんを受診することも検討しましょう。
-2SDを大きく下回っていないかチェック
医学的に低身長とされる状態は、SDという単位で表される標準偏差という指標を用いて、-2SDを下回っているかどうかで判定します。-2SDの子どもの身長は、だいたい実年齢より2歳下の子どもたちと同じぐらいの身長です。
ただ、これに当てはまる小学生は100人中2人と少数です。子どもの身長の標準偏差を調べるには、インターネットで公開されている計算式が便利です。複雑な計算も簡単にやってくれます。
それでわが子が低身長に分類されるとわかっても、ただちに病気とは限りません。前述したように低身長と分類されても9割は病気とは関係なく、両親からの遺伝など生まれつきの体質によるものです。
成長ホルモン分泌不全性低身長症などの可能性もなきにしもあらずですので、小児科で精密な検査を受けてみるとよいでしょう。
身長がもう伸びないか調べる方法
身長がぐんと伸びるのは成長期の間に限り、成長期が終わると大人の体が完成して、それ以降は自然に伸びることはほとんどありません。わが子の身長が伸びるかどうかは、まだ成長期かどうかで判断できます。
成長期に子どもの肉体は大きく変化しますが、性器の発達、陰毛の発毛、声変わり、初潮、筋肉や脂肪の付き方が大人のそれに近づくなどの変化が表れると、そろそろ成長期も終盤です。これらの変化が表れると身長の伸びは落ちていきます。
こうした外見の変化でもだいたい予測はつきますが、もっとはっきりと身長の伸びる余地があるかを調べる方法もあります。それについて詳しく見ていきましょう。
骨端線伸びる=身長が伸びる
成長期の子どもの骨には、両端に骨端線という軟骨細胞でできた組織があります。
身長が伸びるとは骨が大きくなることと言ってもよいですが、成長期の骨はこの軟骨組織が増殖することで新しい骨が作られ、それによって骨が大きくなり身長も伸びていくのです。
この骨端線は成長期の子どもだけに確認できる部分です。成長の止まった大人の体には確認できません。
成長期に身長が大きく伸びるのは、骨端線に沿って骨が大きくなるからであり、骨が出来上がった大人には骨端線がなくなるため、もうそれ以上身長が伸びなくなるのです。
ですので、子どもが今後まだ身長が伸びる余地があるかどうかを調べるには、骨端線を確認すればよいのです。たとえ今はほかの子どもより身長が低くても、骨端線が見られるうちは今後大きく伸びる可能性があります。
逆に、まだ年齢が低くても骨端線が見られなくなったら、成長期が終わったということでもう身長の伸びは期待できません。
手首をレントゲンで撮れば骨端線に成長線があるかどうか判明
成長期の子どもには骨の両端に骨端線があり、その成長線によって身長の伸びる余地があるかどうかが判定可能です。骨端線の有無は、レントゲンで骨の写真を見ればすぐにわかります。
ただ、レントゲンで簡単に骨端線が確認できるといっても、レントゲン撮影には医師の許可が必要です。放射線のリスクもあるので、病院に行けば誰でも自由にレントゲン写真を撮ってもらえるわけではありません。
わが子の身長が同年代の子どもより極端に低く、低身長が疑われる場合には、小児科を受診すると精密な検査をしてもらえます。レントゲンによる検査もあるので、そこで確認できるでしょう。
ただ、小児科の対象は15歳までです。15歳以上になると小児科では診てもらえなくなるので、整形外科を受診することになります。
生活習慣の改善は身長に繋がる
成長期に身長が伸びるのは、骨の骨端線に沿って新しい骨が作られていくからです。骨端線の軟骨細胞が増殖して固まると、新しい硬い骨になります。つまり、身長を伸ばすには骨を作る細胞に十分な原料を与えればよいということです。
それには、生活習慣がとても大切です。栄養バランスの取れた食事、十分な質の良い睡眠、適度な運動が成長期の子どもには欠かせません。とりわけ、直接的な骨の原料となる栄養面は重要です。
身長を伸ばす栄養素というとカルシウムが思い浮かびますが、牛乳を大量に飲んでいるだけでは不十分です。カルシウムは骨を強くしますが、直接骨の材料になるのはたんぱく質だからです。
もちろんたんぱく質だけ摂ればよいわけではなく、さまざまな栄養素をバランスよく摂取することが必須になります。そのためには3食しっかりいろんな食品を満遍なく摂ることが肝要です。
心配な方は不足が多い栄養素配合の子供用サプリがおすすめ
成長期の子どもがしっかり身長を伸ばすためには、骨の原料となるたんぱく質を始め、カルシウム、鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンDなどさまざまな栄養素が必要になります。
どれか特定の栄養素だけ大量に摂ればよいというわけではないので、いろんな栄養素が満遍なく摂取できるように食事を考えなければなりません。ただ、必要な栄養素を不足なくすべて摂取するのはなかなか難しいです。
すべての栄養素をしっかり摂取しようとすると食べ過ぎになってしまうこともあります。特にたんぱく質は、肉、チーズ、卵など脂肪分の多い食品に多く含まれているため、食べ過ぎは肥満につながるリスクがあります。
子どもによっては好き嫌いが激しく、親が用意しても出された食事を全部食べてくれないこともあるでしょう。偏食は直すべきですが、無理やり食べさせるわけにもいきません。
子どもの栄養不足が心配なら、成長期の子どもに適したサプリの助けを借りることも検討してみましょう。あくまで食事からの栄養摂取が原則ですが、不足しがちな栄養素を補うのに有効です。
まとめ
子どもは成長期を迎えると、それまでより急激なペースで身長が伸びていきます。ところが、成長期を迎えても同年齢の子どもと比べて、明らかに身長の伸びが悪い子どももいます。低身長という病気の可能性もあるので、いろいろ原因を探ることが大切です。
身長が伸びない原因はいろいろ考えられます。一つは成熟が早過ぎることです。思春期には、性器の発達や初潮など男女ともに大人の体へと変化していきますが、大人の体が完成すると身長の伸びはストップします。
身長を伸ばすには骨の材料となる栄養をしっかり摂取することが大切ですが、そのためには偏食、睡眠不足、運動不足は禁物です。
こうした基本的な生活習慣がしっかりできていないと伸びるものも伸びなくなるので、親がしっかり指導していきましょう。特に栄養面は重要なので、食事からだけでは難しい場合はサプリによる補助も検討してください。
稀に、成長ホルモンの分泌が少ない病気などによる低身長も見られます。平均より極端に身長が低い場合は小児科の受診も検討してみましょう。骨端線という軟骨組織をレントゲンで確認することで、身長の伸びる余地を判断することも可能です。