α-GPC(グリセリルホスホリルコリン)という名前だけでは、何のことかさっぱりという方がほとんどだと思いますが、実は、この成分には子どもの身長を伸ばすのに効果的な作用があると言われています。
名前の響きから「化学的な成分じゃないの?」と思われるかもしれませんが、人間の体内に普遍的に存在する成分です。海外では以前から注目の栄養素として医薬品やサプリメントにも使用されてきました。
そこで、そんなα-GPC(グリセリルホスホリルコリン)の身長を伸ばす効果や、それ以外にどんな効果・効能が認められるのか、また、副作用の有無などについて詳しく見ていきましょう。
α-GPC(グリセリルホスホリルコリン)とは?どんな成分?
α-GPC(グリセリルホスホリルコリン)とは、正式にはL-α-グリセリルホスホリルコリンといって、大豆の含有成分を加水分解すると得ることのできる成分です。
2006年に、厚生労働省により食品成分として認可、2009年に正式認可が発表されて以降、サプリメントの配合成分として注目が集まっています。
動物実験では早くからさまざまな生理機能が認められており、人間にもアルツハイマー型認知症の脳機能改善薬としての可能性が探求されています。
また、成長期の子どもを持つ方に注目してほしいα-GPC(グリセリルホスホリルコリン)の働きとして、低下しがちな成長ホルモンの分泌を促進させる作用があります。
学習能力や認知機能の向上の効果も期待されており、欧米ではすでに成長サポートの栄養素として市販のサプリメント等で広く普及しています。
α-GPCは母乳や大豆にも含まれる安全な成分
α-GPCは、赤ちゃんの飲む母乳にも含まれる成分です。生まれてすぐから、われわれは誰もがα-GPCを摂取して育ってきました。つまり、体に安全な成分だということです。
もちろん成長期の子どもが摂取しても安全です。そのうえ、身長を伸ばすサポート、学習能力や運動能力の向上、健康の維持など重要な作用をする成分ですので、子どもには積極的に摂取させるべき成分と言えるでしょう。
推奨される1日の摂取量ははっきりしていないのですが、食品に含まれるα-GPCだけでは不十分なことは確かです。
大豆食品だけで補おうと思ったらカロリーオーバーにもなりかねませんので、サプリなどで無理なく摂取するのがよいでしょう。
コリンを補給するのに役立つ成分
α-GPCはコリンを補給するのに役立つ成分です。とはいうものの、コリンとは何なのかを説明するべきでしょう。コリンとはビタミンによく似た働きをする栄養素で、体内で生成できない必須栄養素に分類されます。
体内に入るとアセチルコリンという神経伝達物質に変化します。細胞膜や脳機能の構成・補修に必須の栄養素であり、記憶力、判断力、学習能力の向上に効果が認められています。
私たちのからだを構成している60兆個の細胞。その一つ一つにはリン脂質が含まれており、このリン脂質の重要な成分がコリン。記憶・学習に深く関わる神経伝達物質です。コリンを多く摂った結果、学習能力が25%もアップしたという実験もあります。
成長期の子どもにとって、コリンの摂取は体作りだけでなく脳の働きを高めるためにも欠かせないということです。そのため、市販される赤ちゃんのミルクにも配合されています。
コリンの推奨摂取量は子どもの年齢が上がるにつれ増加します。1~8歳で200~250mg、9~13歳で375mg、14歳以上で500mgです。
コリンは大豆、レバー、卵などの食品にも含まれていますが、これだけの量を食品から摂取するのは栄養バランスから考えても難しいです。コリンを効率よく摂取するためにも、α-GPCを意識して摂取することが大切でしょう。
コリンとはどんな栄養素
コリンとは水溶性ビタミン様物質です。その働きによってビタミンB群に似た物質とされています。
コリンという名前の由来はギリシア語の胆汁(chole)から来ていますが、豚の胆汁からこの物質が抗脂肪肝因子として単離されたことが理由です。
食品の中に含まれるコリンは、スフィンゴミエリンやホスファチジルコリンという形で存在しています。体内ではアミノ酸であるメチオニンやセリンなどから生成されて、生体膜の構成成分や神経伝達物質のアセチルコリンの前駆物質として作用します。
レシチンもアセチルコリンも血管に作用する物質です。レシチンが細胞膜を作って、血管内や肝臓に脂肪やコレステロールが溜まるのを防ぎ、アセチルコリンが血管を拡張します。
そのため、これらを作るコリンには、高血圧、動脈硬化、脂肪肝などの予防効果があると期待されています。医薬品や滋養強壮剤に使用されるのもこうした理由です。
コリンと成長の関係性
コリンは子どもの成長に欠かせない物質です。生まれてきた赤ちゃんが飲む母乳にもα-GPCという形で存在します。
コリンは脳機能に作用して記憶力や判断力の向上に役立つのですが、α-GPCには、こうしたコリンの働きのほか成長ホルモンの分泌を促す働きを持っています。生まれてきた赤ちゃんがすくすく育つのもα-GPCのおかげです。
大人になると成長ホルモンの分泌がだんだん減ってしまうのですが、成長ホルモンが足りないとやる気や体力の不足につながります。つまり、コリンことα-GPCは、大人も子どももあらゆる年代にとって必要なものなのです。
コリンは大豆、レバー、卵などにも含まれていますが、食品から十分な量を摂取するにはカロリーやコレステロールなど過剰になってしまう恐れがあります。
その点、α-GPCの形であれば少量でコリンを効率的に摂取できるのです。
α-GPCは子供の成長にどう?
なので、危険なものではないと思われますが、成長期の子どもを持つ身としては、果たして本当に子どもの成長に効果があるのか、という点が気になるでしょう。
最近はさまざまな子どもの成長サポートサプリが出ています。それらのサプリの主要成分も本当にさまざまです。その多くの成長成分のなかで、α-GPCならではの効果や効能にはどんなものがあるのでしょうか。
ただ、成長期の子どもが十分な量を摂取するには、サプリメントに頼るのが一般的です。しかし、サプリメントには過剰摂取などのリスクもあるため、α-GPCの安全性や副作用についても知っておくべきでしょう。
その辺も踏まえてα-GPCの効果について見ていきます。
記憶力や学習能力の向上
α-GPCは記憶力、判断力、学習能力といった脳機能への良い作用も期待されています。α-GPCが脳機能に良い影響をもたらすのは、コリンの作用によるものです。
コリンは、体内に摂取されると神経伝達物質であるアセチルコリンに変換されますが、この物質は血管を拡張させて血流をアップさせる働きがあります。
脳の働きが活性化すると、認知、記憶、判断などの能力も活性化します。よって、α-GPCは記憶力や学習能力の向上に有効と言えるのです。
なお、アセチルコリンは年齢とともに分泌が減少していきます。老齢になってアルツハイマー型認知症を発症するのも、アセチルコリンの分泌が減少することが一つの原因です。
そのため、アセチルコリンの前駆物質であるコリン、言い換えればα-GPCは、成長期の子どもだけでなく大人になってからも脳機能を維持するのに必須と言えます。
成長ホルモンの分泌を促進する効果で身長促進
α-GPCには、成長ホルモンの分泌を促進して成長期の子どもの身長を伸ばす働きがあります。
身長を伸ばすのに大切な栄養素といえば、カルシウムやマグネシウムなど骨の形成に必須の栄養素がありますが、それだけでは不十分です。子どもの身長が正常に伸びていくには、成長ホルモンの分泌量がカギになります。
成長ホルモンには、筋肉などの代謝を促進するとともに、骨の両端にある軟骨集合体である骨端線に働きかける作用があります。
思春期を過ぎると、成長ホルモンが分泌されても身長は伸びません。というのも、身長が伸びるのは先ほど触れた骨端線が伸びることなのですが、骨端線は思春期が終わるとなくなってしまうからです。
つまり、骨端線があるうちにしっかり成長ホルモンを分泌させて、骨を成長させることが身長を伸ばすのに大切なのです。
成長ホルモンとは?
成長ホルモンとは、脳下垂体という脳の底面にある場所で作られるホルモンで、192個のアミノ酸が1本の鎖のように並んでできるポリペプチドというたんぱく質でもあります。
骨の成長板に働きかけて骨を縦方向に伸ばします。たんぱく質ですから、成長ホルモンを経口摂取しても胃で分解されるので効果はありません。
成長ホルモンの分泌にはリズムがあり、日中より夜間の睡眠中に増加します。生きている限り分泌されて、筋肉や脂肪組織など体の各組織に働きかけ代謝を調整します。
小児期の成長に成長ホルモンは不可欠ですが、成人以降も健康状態を維持するのに重要な働きを担う存在です。
子どものころに成長ホルモンの分泌が低下すると成長障害になりますし、成人でも筋肉が減少したり肥満になったり、また、悪玉コレステロールの増加や骨密度の減少など体に深刻な影響が出てしまいます。
かといって、成長ホルモンの分泌量が多すぎても障害が起こります。思春期前なら巨人症、成人なら末端肥大症などがその症状です。子どもでも大人でも、成長ホルモンの量はバランスが大切です。
α-GPC同様に成長ホルモンに働きかける成分にアルギニンがある
成長ホルモンの分泌を増やす成分にはアルギニンもあります。アミノ酸の一種のアルギニンには、成長ホルモンの分泌を増やすほか、体の免疫力をアップさせる作用もあります。
また、血管を広げて血流をアップさせる作用や、コラーゲンを生成する作用もあります。そのため、子どもの成長には欠かせませんが、子どもは体内でアルギニンを十分に生成できないため積極的に摂取すべき栄養素です。
アルギニンは成長ホルモンの分泌を促進する働きを持つので、子どもの成長のためにも不足しないように摂取する必要があるのですが、過剰に摂取するのも危険です。
巨人症の原因にもなりますし、場合によっては死に至ることもあります。サプリメントで摂取する時は、お医者さんの指導を仰いだ方がよいでしょう。
α-GPCの副作用や危険性は?
α-GPCは成長ホルモンの分泌を促進するため、成長期の子どもにはとても良さそうです。ただ、気になるのが副作用の存在でしょう。
α-GPCを成分とするサプリメントはいくつもありますが、いくら良い効果があるとしても副作用の心配があるものを子どもの口に入れることはできません。
α-GPCは厚生労働省が食品成分として認可しているぐらいですので、基本的には安全なはずですが、もしもということもあるので、子どもに摂取させる前に安全性には細心の注意を払いたいものです。
そこで、α-GPCの有効性と安全性、副作用による健康被害の有無などについて見ていきましょう。
α-GPCの有効性は不十分
α-GPCには、子どもの成長にさまざまな効果があると言われていることを紹介してきましたが、α-GPCのヒトに対する有効性には十分なデータがないものもあります。
一般的にα-GPCは、脳機能に作用して記憶力、認知力、判断力など学習能力につながる能力をアップさせる効果があると言われていますが、国立健康・栄養研究所「α-GPC」によると、これらについて信頼できるデータは見当たらないのです。
ただ、「調べた文献のなかにはデータが見当たらなかった」というものですので、まったく効果がないとも言い切れないでしょう。
なお、現在のところ、α-GPCの有効性として科学的なデータが出ているものには、アルツハイマー型認知症患者に対する実験での認知機能評価の改善があります。
経口で適切に摂取する分にはおそらく安全
国立健康・栄養研究所が公表している健康食品の有効性や安全性に関する情報において、α-GPCの摂取についての安全性情報も公開されています。
それによると、経口で適切に摂取する限り、おそらく安全とされています。19歳未満の女性は1日3000mgまで、19歳以上なら3500mgまでは副作用は見られないだろうということです。
気になる子どもが摂取した場合ですが、これも経口で適切に摂取する分にはおそらく安全とされています。しかし、子どもの場合、過剰摂取には大人以上に気を付けるようにとも言われています。
過剰摂取には危険性があるということですが、適切な量の経口摂取であれば乳幼児の栄養補助にも有効とされています。サプリで摂取する時は用法用量を守ることが大切です。
α-GPCは普段食べている食品にも含まれている
成長ホルモンの分泌を促すなど、子どもの成長にさまざまな良い効果をもたらすと言われるα-GPCですが、上で見てきたように、過剰摂取では健康被害が起こるかもしれない心配もあるようです。
過剰摂取を長期間続けない限り、α-GPCは安全だと言ってよいと考えられます。というのも、そもそも母乳にも含まれる成分ですので、子どもの体には基本的に良い影響をもたらすものだからです。
それに、α-GPCは普段われわれが口にする食品にも含まれています。
α-GPCを含む食品を紹介
α-GPCを含む食品の例をいくつか挙げてみましょう。特に多いのは牛レバーで100g中77.93mgのα-GPCが検出されます。また、ショウガも多く、100g中33.25mgとのことです。
バナナにも100g中5.6mgのα-GPCが検出されたとのことです。
このように、一般的な食品にもα-GPCは含まれています。食品に含まれるα-GPCで過剰摂取となることはまず考えられません。
国立健康・栄養研究所のデータによると、幼児が牛レバーを1kg食べたところで過剰摂取にはならないわけですから、過剰摂取を心配するより、むしろいかに不足せず摂取するかを心配すべきでしょう。
子供にα-GPC配合サプリどう?
α-GPCについて、その有効性には科学的なデータが不十分だとか、過剰摂取によるリスクがあるとか、マイナス面をいくつか見てきましたが、基本的には子どもが摂取しても安全と言えるでしょう。
赤ちゃんが初めて口にする母乳に含まれる成分ですから、成長をサポートすることはあっても健康に悪影響を与えるなど考えられないからです。
ただ、サプリメントの場合、ちょっとした不注意で母乳や食品では考えられないほど過剰に摂取してしまう恐れもあります。そこで、子どもにα-GPC配合サプリを与えてよいものかを考えてみましょう。
過剰摂取しないことを守れば成長に期待できるサプリ
α-GPCは母乳や大豆などの食品にも含まれ、体内にも普遍的に存在する成分です。ですから、それほど安全性について不安に思う必要はないでしょう。
安全だからこそ厚生労働省も食品成分として認可したわけですし、子どもの成長に良い影響をもたらす成分としてしっかり摂取していけばよいと思います。
ただし、過剰摂取には注意しなければなりません。食品から過剰摂取になるほどα-GPCを摂取することはまずあり得ませんが、うっかり目を離した隙に子どもがサプリメントを大量に飲んでしまった、となっては大変です。
まとめ
α-GPC(グリセリルホスホリルコリン)とは、大豆に含まれる成分を加水分解して得られる成分です。母乳や大豆などの食品にも含まれています。
現在は厚生労働省によって食品成分に認可され、サプリメントなどの成分としての利用も進んできました。
体内で合成できない必須栄養素の一つにコリンという成分がありますが、α-GPCはコリンを補うのに最適な成分です。
α-GPCは成長のサポートに期待できる
コリンは認知能力や記憶力など脳機能の向上に効果があるとされる成分で、成長ホルモンの分泌を促す作用もあるため、成長期の子どもの体作りにも欠かせません。身長を伸ばすサポートとしての役目も期待できるでしょう。
α-GPCの有効性には科学的なデータが不十分ともされますが、まだヒトに対する有効性を記した文献がないだけで、今後はそのメカニズムが十分なデータとともに解明されていくと考えられます。
ただし、α-GPC配合の子どもの成長サポートサプリは各メーカーからいろいろ出ていますが、サプリは必ず用法用量に従って摂取してください。
それさえ守れば、安心して子どもに与えてよいものと言えるでしょう。